鳳凰の船

鳳凰の船

小説・文芸
704円 (税込)

3pt

4.7

明治初期の函館。洋船造りの名匠と謳われたものの、いまや仏壇師としてひっそり暮らす続豊治。だが若き船大工との邂逅により、再び奮い立つ/表題作。初代北海道庁長官・岩村通俊、イギリス人貿易商・ブラキストンなど、北海道開拓期に名を刻んだ者たちの逡巡や悔恨、決意を叙情豊かに描きあげた五編。第7回歴史時代作家クラブ賞受賞作。

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鳳凰の船 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

     『楡の墓』で、すっかりこの作家のファンになってしまった。何よりも美しく正しい文章による正統派の小説作品であること。読んでいて心地よい日本語なのである。言葉とはかくも素敵なものなのか。改めてそう思わせてくれる作家は、実はそう多くないので貴重である。

     さらに素敵なのが、北海道開拓をテーマに、多くの魅力ある歴史上人物に焦点を絞り、彼らを生き生きと作品世界の中で蘇らせてくれる希少な作家であるということ。北海道生活に身を置くものとしては、この世界の未だ短い歴史はとても身近であり、とても心惹かれるテーマなのである。

     実はこの短編シリーズは、三冊完結となっているらしく、まさに今月、第三冊目の新作単行本『小さい予言者』も発刊となる。まさに突然のマイブームとなってしまったのがこの浮穴みみという一風変わった名前の作家であるのだ。

     『鳳凰の船』は船大工である続豊治と上田寅吉を主人公の邂逅の時間を描くタイトなストーリーだが、彼らの会話を通して、旧幕府と新政府に分かれ、津軽海峡に西洋式軍艦を船出させ、運命を分けた時代や世相、そしてその狭間で船造りを学び仕上げる船大工という存在の責務と苦しい立ち位置が、痛いほどに伝わる一篇である。

     『川の名残』は、ブラキストン、エドウィン・ダン、ジョン・ミルンと言った函館と北海道開拓にゆかりのある外国人たちと、彼らに関わったり妻となったりした日本人女性たちの姿が描かれる。思い出と共に消えていった川の姿を通じて、札幌に創成川を通した『楡の墓』の大友亀次郎の姿も浮かび上がる。どの作品も同じ地平で繋がっていることがわかるのだ。

     『野火』は、『楡の墓』中の短編『貸女房始末』で札幌の焼き払いを行った北海道庁初代長官・岩村通俊を描きつつ、七飯村で西洋農法モデルを試行したプロシアのR・ガルトネルによる果樹園という新しい未来が登場する。ぼくの住む町当別町でも、様々なリンゴ農法が試行錯誤されてきた歴史が記されているが、北海道の原野を新しく拓く気概を描いた印象的な一作である。

     『函館札』は、またもトマス・ブラキストン。本州と蝦夷の地の間・津軽海峡に動植物の生息域を分ける境界線としてブラキストンラインを提唱した学者でありながら、実はイギリス商人であった彼の、経済学的才能と、その皮肉な結末を示す一篇である。

     『彷徨える砦』は、弁天台場を取り壊すミッション下で悩む函館港湾改良工事監督・藤井勇の物語。クラブサン(チェンバロ)の音色が心に残る恋愛小説的側面も持つ美しい一篇である。

     明治維新という名の世界転換。そして舞台は北海道という未開の大地。巨大な変革とドラマティックな舞台と背景を基にして、人間の個の魂を描く傑作短編集、その第一弾が本書である。是非とも濃密な読書的幸福の時間を味わって頂きたい。

    0
    2021年11月10日

    Posted by ブクログ

    幕末明治の頃の函館が舞台。異人さんたちが暮らしやすい土地にしようとしている様、技術を学び建造する人達の情熱。芯の通った生き方をしたいと思う。

    0
    2021年05月07日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    この短編集の舞台は、主に幕末から明治にかけての函館。
    西洋船を造る船大工「鳳凰の船」外国人の妻となった日本女性「川の残映」ブラキストン邸に働くこととなった孤児「函館札」北海道初代長官、岩村通俊の話「野火」は札幌の出来事になる。

    北海道の歴史を踏まえながら、人のドラマを描くことで、歴史がよりリアルに感じられる。
    どの物語も人の運命の綾が描かれ、時と場所を超えて共感した。中編でも、長編を読んだ時のような満足感がある。

    0
    2023年01月14日

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