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1990年代に猛威を振るったHIV、結核、マラリア。それら三大感染症と戦うために生まれ、コフィ・アナン、ビル・ゲイツ、ボノ等から絶大な支援を受けてきた国際基金グローバルファンド。その官民共同の新たなビジネスモデルは「21世紀のグローバルヘルスの大いなる革新」と呼ばれ、「世界最強の国際機関」とも称される。戦略局長としてジュネーブを拠点に日々グローバルに活動する著者が、世界最強の組織の条件を、自らの体験をもとに解き明かす。
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Posted by ブクログ 2019年11月10日
國井修氏(1962年~)は、自治医大卒、公衆衛生学修士(ハーバード大学)、医学博士(東京大学)。これまでに医療活動を行ってきた国は110ヶ国以上。栃木県の山間僻地での診療に始まり、NGO、国立国際医療センター、東京大学、外務省、長崎大学熱帯医学研究所(教授)、ユニセフ(ニューヨーク本部、ミャンマー、...続きを読むソマリアでの保健・栄養・水衛生事業を統括)を経て、2013年、本書で語られている「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(通称・グローバルファンド)」に移り、現在は、約10人の幹部の一人として、戦略情報部、技術支援・連携促進部、コミュニティ・人権・ジェンダー促進部などを統括している。尚、國井氏のユニセフ時代までの半生は、自著『国家救援医-私は破綻国家の医師になった』に詳しい。 本書は、グローバルファンドがなぜ「世界最強の組織」と呼ばれるのかについて、組織論的なアプローチで書かれているため、グローバルファンドが活動の対象領域とする世界の開発問題や地球規模の課題に関心を持つ人びとだけでなく、営利・非営利に限らず、組織のマネジメントに携わる多くの人びとに様々な示唆を与えてくれる内容となっている。國井氏も、「組織の利益と社会の利益、そして未来のニーズや可能性との結びつきを考えて、組織のリーダーシップやマネジメントをもう一度見直す機会を与えることができれば幸甚・・・グローバルファンドの学びや進化が、グローバルな経験が、日本の課題解決のため、さらに日本の素晴らしい未来のために、活用できれば幸い」と語っている。 私は、本書から様々な気付きを得られたが、強く印象に残ったものとしては、ジェームズ・C・コリンズの『ビジョナリー・カンパニー2』からの引用で、先見性のある組織のリーダーの特性とは、「カリスマ性でも、特殊な能力でもなく、「謙虚さ」、それも「驚くほどの謙虚さ」、そして「不屈の精神」」である、といい、本書に紹介されたグローバルファンドのリーダーは正にそうした人びとだということである。國井氏も当然例外ではなく、(私は國井氏の宇都宮高校時代の後輩なのだが)学生時代から最近お会いしたときまで、そのリーダーシップは不変であった。 また、「Value for Money(VfM)」の概念の構成要素の一つである「公正」の考え方にははっとさせられた。そこでは、「公正(Equality)」と「平等(Equity)」の違いを「3秒で教えてくれる」絵で示されているのだが、大人と10歳ほどの子どもと5歳ほどの子どもの3人が、大人の肩の高さの塀の向こうの野球を見ようとしているとき、同じ高さの3つの踏み台の配分の仕方を描いている。「平等」と書かれた絵では、踏み台はそれぞれに1つずつ配分されているため、5歳の子どもは相変わらず塀の向こう側を見ることはできない。一方、「公正」と書かれた絵では、大人にはゼロ、10歳の子どもに1つ、5歳の子どもに2つ配分されているため、全員が野球をみることができるのである。目から鱗であった。。。 國井氏は「不屈の精神」をもって、今後活躍の場をどこまで広げていくのか、とても楽しみであるが、一読者としては、國井氏の魅力が一層輝くような「現場」を描いたものを読みたいと思ってしまうのは欲張りだろうか。。。 (2019年11月了)
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世界最強組織のつくり方 ──感染症と闘うグローバルファンドの挑戦
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