ハプスブルク帝国 (講談社現代新書)
by 岩崎周一
そのため夫婦間においても、恋愛感情より、ある種の同志的な意識に基づく友愛・敬愛感情が重視された。この時代を代表する知識人だったモンテーニュいわく、「結婚では当然のことながら、姻戚関係や財力などが、本人の魅力と美貌と同じか、あるいはそれ以上に重んじられる。何といっても、人は自分だけのために結婚するのではない。それと同じくらい、あるいはそれ以上に、人は自分の子孫や、自分の一族のために結婚するのである」(荒木昭太郎訳)。社会学者ピエール・ブルデューによれば、ヨーロッパにおいて恋愛結婚が珍しいことでなくなるのは、一九世紀後半以降のことであった。