Posted by ブクログ
2015年08月20日
この青年漫画、『のぼる小寺さん』は今年、『彼女はろくろ首』(二駅ずい)とガチで争うレベルで、確実に人気が出る。思う、ではない。絶対に、人気作品となる。根拠、そんなものはない。一漫画読みとしての、直観だ
私だけではないはずだ。ほとんどの漫画読みが、この作品のように、マニアックなテーマを選びながらも、読...続きを読むんだ人間のハートを全力でブチ抜き、魅了してくれる漫画を待っていた
内容を説明するのは正直、難しい
伝わらないのを承知で、端的に言うと、青春炸裂、そんな感じ
部活系なのだが、メジャー所の女子サッカーや女子野球、陸上、格闘技ではなく、ボルダリングだ。オリンピックの競技候補の一つにもなっているので、ここ最近、ニュースで耳にした事がある人も増えてきたはずだ。そう偉そうに説明している私も、そう詳しくない
しかし、この『のぼる小寺さん』を読んだら、絶対に、この競技の魅力を理解できてしまうだろう。己の身一つだけで高い壁に挑み、全力を出し尽す。そのシンプルな凄味にKOされない人間は、そうそういまい。『弱虫ペダル』(渡辺航)や『DAYS』(安田剛士)がストライクゾーンど真ん中の人は確実にハマる
ヒロインは、そんな地味だが、本気になる価値があるボルタリングに青春を懸けている美少女、小寺さん。発する言葉こそ少ないが、昇る動作は饒舌かつ情熱的だ
クラス内じゃ目立ってはいないが、異性にマジの恋心を抱かれるタイプと感じる。また、同性にも人気がある
自分がやりたい事を、脇目も振らず、単純に頑張っている人間ってのは、「自分はつまらない人間じゃあるまいか」、そんな劣等感から無理に目を逸らして、毎日を中途半端な熱を燻らせて過ごしてしまっている人間の目には眩しすぎる。そんな人間を視た時に、目を覚ますか、目を瞑るか、は個人の勝手だが、少なくとも、私は努力の意味を知っている人間を口だけで馬鹿にする人間だけにはなりたくないな、と読んで思えた
小寺さんを様々な角度から見ている、人間が一人に絞られず、各々、自分に「何か」欠けているモノを感じて、自覚なしでガムシャラになっている学生らってのが、これまた、良い点だ。小寺さんの頑張る姿に触発され、自分に出来る事から頑張り出す彼らもまた、人間的に魅力的だ。個人的には、小寺さんに、友情とも恋心とも違う、青春、そんな名前の淡い感情を抱いている、卓球部の近藤くんがお気に入りだ
また、画を構築する線こそ、一本一本は細いのだが、力強さがあり、それらが集まる事で、この熱さを表現できているんだな、と素人にすら感じさせてくれる。ちょっとエロいとこも、正直に言えば、推す理由だったりしてw
このままの路線で、高みを目指して欲しい。ラブコメ要素はこの際、いらない。小寺さんにはマイペースに、黙々と、手強い壁に挑んで欲しい。まぁ、あえて言うなら、近藤君と四条君の間に友情が成立したら面白くなるな、とは思っている。あと、小寺さんが、ガチのスランプに陥って、自分の殻をブチ破る展開にも期待している
この台詞を引用に選んだのは、これは、今現在、どんな生き方をしているにしろ、人生で大事な事だ、と思ったので。様々な頑張る理由を持ちながらも、結局、根源にあるべきは、自分を満たしたいって欲求であるべきだろう。誰かを喜ばせるとかでなく、自分が達成感を味わいたいからこそ、一つの事に集中して、自分の全部を出せる人間は、理屈じゃない美しさを持てる。そんな人が近くにいて、大事な事に気付かせてもらえた人もまた幸せだろう