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経済財政諮問会議で「日本型資本主義」による新しい経済成長モデルを提案し、50年後の日本を見据える原丈人とは、いったい何者なのか。2007年のベストセラーを大幅に増補。
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Posted by ブクログ
サブプライムローン問題、リーマンショックを予言したとして有名な本書。 若手行政官(官僚)への推薦図書として、マックス・ウェーバーらの古典と並んで紹介されたこともあるらしい。 読みたいと思いつつ、読んだことがなかったけれども、増補版が出たということで読んでみた。 増補にあたっては、主に時事ネタなどが...続きを読む更新され、具体例が増えているよう。 また、IFX(インデックス・ファブリック。リレーショナル・データベースに代りビッグデータ等の構造化されていないデータを取り扱うための新たな仕組み)についての記載もされている。 著者の原丈人氏は、考古学を学んだ後にベンチャーキャピタリストとして、未来を創るベンチャー企業の育成に携わっている方。 「会社は誰のものか」という議論は昔からあったが、原氏は、企業は国や地域社会に長期的に貢献できる存在でなければいけないと主張し、短期的に株価を上げることのみに固執しているCEOなどアメリカ型の資本主義を批判している。 本書の一番の主張としては、市場資本主義を脱却し、日本型資本主義である「公益資本主義」を実現すべきという、日本に対する提言である。 日本がこれから世界の中でプライムを取っていくためには、欧米やアジアの真似ではなく、新たな基礎技術を開発・育成しなければならない。 そのためには、短期的な利益を追求する資本主義ではない、新しい制度を日本が実現していかなければならない。 言うは易く、行うは難しであるが、原氏の凄いところは、実際に実践しているところである。 バングラデシュの「ブラック・ネット」やザンビアの「スピルリナ・プロジェクト」など、実例がいくつも紹介されていて興味深い。 これからの未来を考えるときに、旧来の資本主義では立ちいかないのは目に見えている。 私自身も、今の市場主義的な資本主義には疑問を持っていた。 しかし、だからといってどういう仕組みがよいのかも分からず、悶々としていた。 いっそのこと、共産主義にでも逆戻りしたほうがよいかと思ったことさえもある。 だから、原氏の主張にはとても共感できた。 本書を読むと、原氏が本当に日本のことを考えていることがよく分かる。 真剣に考えているから、それが具体的な政策として、提言に現れている。 そこには、「アベノミクス」のような、中身のない成長戦略ではなく、本当の意味で日本が世界の中で成長していくための戦略が描かれている。 今の日本には、自己の利益ばかり考えて、社会をよりよくする気概のある人が少ないように見える。 その中で出会った本書は、「八百万の神」の国、日本にとっての一筋の希望に見えた。 日本をよりよくしたいと本気で思っている人たちに読んでほしい一冊。
ビジネス書や自己啓発本というより、経済思想の本。 新自由主義・ROE至上主義に批判的で、「公益資本主義」を提唱する。 筆者のビジネス界での実経験が、主張に説得力を持たせている。 いつだか積読に入れていた。 「ROE経営は「すでにあるもの」の効率化を図ることはできても、「今はないが、将来つくるもの」...続きを読むの価値を最大化することはできません。反対に、そういうものを積極的に切り捨てたほうが、ROEは上がる。」(74頁) 「日本企業は米国の基準に振り回される必要もない。いいところだけを吸収し、地球の未来にとって悪い点は正し、米国のシステムを上回るものを創ればいい。」(159頁)
学研の宮原さんのおすすめで。 めざすべき資本主義の例を得た。 会社が株主のもの、会社はROEの最大化をめざす、といった暗黙の了解に全く共感していなかったけれど、会社は公器なのであり、顧客、従業員、株主、地域、社会、すべてにとってプラスであるべき、とする公益資本主義。腹落ち感ある。これで経営していきた...続きを読むい。 —- アメリカの企業統治 新CEOがやりがち、何も生み出していない ・短期・目先の株価を上げるための施策 ・マネーゲーム ・ストックオプションが元凶 手順 ・必要以上のリストラ ・試算圧縮(ROE) ・過去の累損の一掃 ・将来出るかもしれない負債まで引き当てる形で大きな損失を出す ↓ 株価下落 ↓ 底値でストックオプション付与 +リプライシング ↓ ・経費削減 ・IRを駆使 ↓ 2、3年後自然に会社の利益と株価が回復 ↓ CEOは何も生み出さずに莫大な利益を得る ↔︎長期的な安定した発展 CEO これから2、3年の間に取り組もうとしているビジョンを徹底的にインタビュー 公益資本主義 ・企業は従業員や顧客、仕入れ先などを含めた公共的なもの ・目的 社会に有用な製品やサービスを通じて社会に貢献する ・株主は会社の経済的な所有者 ・株主の利益は、目的を果たした結果
いゃ〜!面白かった。 「会社は株主だけのもの」というアメリカ流の資本主義から公平な富の分配をする公益資本主義に変わることを提唱する筆者がわかり易く説明している。 印象に残った文章 ⒈ 企業をむしばむCEOゴロ ⒉ 株主にとっての利益になるのであれば、何万人の従業員が解雇されようと「株主価値」が最大の...続きを読む時点で会社を解散するのがベストであると理解するのが、現在の資本主義である。 ⒊ 経済が文化をつくり、技術が政治をつくる。 ⒋ 社長と社員のあいだにあまり差のないフラットな組織をもつネットワーク型の中小企業 ⒌ これからの時代に日本が輸出すべきものは、システム(制度)やモデル、さらにルール(規則)といったいったもの ⒍ 人間が幸せになるということが一番の目的で、お金持ちになることやGDPを上げることは幸せになるための手段でしかないのです。 ⒎ 違いを認めたうえで、その違いをよく説明していく能力
古典の「国富論」は読んだこと無いけど,経済活動は誰のために何のために行われるのかを考えさせられる。 人間生活が経済を基本としているからには,生活を安定させるため,生活を発展させるためには経済を熟慮する必要がある。 経済を単なる「金稼ぎ」ではなく安定した営み,それを多くの人が営める環境とはどういう...続きを読むものか,それは天から与えられるものではないから,いかに作っていくのかのアイディアが本書で得られる。
先進国に先駆けて日本は新たな技術を産業化していく「仕組み」づくりに力を注がなくてはならない。(現状は補助金を与えることしか出来ていない。) そして知識やアイデア、仕組みなどを世界に輸出し、特許使用料などの貿易外収支で国を富ませていく
独立自尊や自主独立を実現するのに不可欠な4項目 1. 食料と水の確保 2. エネルギーと資源の確保 3. 防衛力と外交を強化する事による安全保障 4. 文化と言語を守る事 日本は単に工業製品を売るだけでなく、システム(制度)、モデル、ルール(規則)を輸出する時代が来る。 日本の人口が減少する中...続きを読むでも、貿易収支から貿易外収支へと転換させ、国民所得を増やす事は可能。 夢を実現する2つの方法 1. 今そこにある体制や環境に順応しながら、その枠組みを上手に利用して叶える。 2. その体制や環境をおかしいと思い、ルールそのものを変更する事に挑戦し、新しいルールに基づいた世界をつくる事によって叶える。 コア技術の大きな特徴は、どう応用すればよいのかについて、最初は一般に解りにくい事。 基幹産業の典型的なライフサイクルは、始まる時は目立たないところで徐々に、ある一線を超えると急速に伸び、やがて成熟産業となる。その後はまた徐々に時間をかけて衰退していく。 GDPを増やす事、経済成長することも、その中身を見ずにただ数字だけの上がり下がりで短絡的な判断をする風潮も、手段と目的を取り違えている。 最初から社会貢献をもっとも大きな目的として事業を行う会社と、利益のごく一部をあくまで株主の同意を得られる範囲で社会貢献に使う他の企業を比べてみれば、市場経済や株式会社という同じ資本主義の仕組みを使っていても、その効果と影響は全く違う。 株主と株価連動型の報酬をもらう経営者の為に、短期的な株価の上昇を追求するより、会社を公器ととらえ、中長期的な視野を持った経営の方が最終的には持続し発展する。 いくら哲学的に深い考えをもった経営者がいても、ビジネススクールで株式資本主義的な考えに洗脳されたテクノクラートが増えたり跡を継ぐと、数字にならない事は価値がないと切り捨てる傾向が強まる。 一般社員と経営者の所得格差は、1950年代には20倍程度、1980年代には42倍程度。2000年には120倍、2013年では204倍にまで広がっている。 ストックオプションのような株価連動型の報酬は、短期的に株価をあげる事に関心の少ない取締役、執行役員などに対する大株主が仕組んだ賄賂。これをもらうとどうしても任期中に株価を上げるような空気を醸成し、株主と経営陣は共通に達成すべき利害調整が完成する。後は、定期的に自社株買いを実行すれば株価は上がる。さらに、経営者の労働市場が、情報の非対称性や参入障壁などによってひどく歪んだものになっているのは明らか。 1993年以降、株式公開すると、逆に市場に会社の資金が吸い取られている。資金調達額よりも自社株買い額の方が高いのである。 公益資本主義の概念に則った、ROEに代わる会社の評価基準は、 1. 富の分配における公平性、、、様々なステークホルダーに対して富を公平に分配する事。 2. 経営の持続性、、、社員の幸福度を高める事。数字を整える事ばかり考えては幸福度は下がる。内部留保は会社の将来の為に使う事。配当には回さない。 3. 事業の改良改善性、、、成功体験を持つ大企業は柔軟性を失い、新しい業態へ変化し辛い。企業における改良改善は社会全体の成長や学習能力とも密接に関わる。目先の利益にとらわれていては、その影響は社会全体に広がる。 経営者は、大会社になっても相手の立場になって考える事、感謝の気持ち、きびしさを内包した優しさを自ら率先して示し、「暖かい」社風を進歩、発展させる事。小さな企業と同じような状態をいかに大企業の中にも作っていくか。これは公益資本主義の理論を構築していく上でも要となる命題。組織の論理を強くして個人や周囲の人々の幸せを奪わない事。 株主資本主義の観点からは、CSRは企業イメージをあげる道具にしかならない。だが、会社とはそんなつまらないものではない。社会に貢献したいという志をもとに組織が活性化すれば、社員も生き生きとし、結果的に会社も儲かる。そんな会社が評価される世の中の方が、時価総額を上げた人間が立派だと誤解するような世の中より素晴らしい。 投資家が短期間で売却する為のインセンティブを消す為に、保有期間が長ければ長いほど一株あたりの配当金額を大きくする。現在のファンドの平均保有期間は10ヶ月。 本当の意味で中長期的な投資を行いたいと思っている投資家は世界全体の総資金量の10%はいる。 有害な投機を抑制する為に、証券投機取引税やファンドの報告義務を強化する事も必要。 日本版SOX法は廃止すべき。これは企業の不正監査や粉飾決算などを防ぐために会計の透明性を高め、内部統制の強化を謳った法律の俗称だが、高いコストを払って内部統制の仕組みを整備しても、企業の新しい事業への投資意欲を削ぐ結果になるだけ。内部統制があってもなくても社内で起きる犯罪発生率は変わらない。むしろ大部分の社員はコンプライアンスに対して辟易しており、信じるより疑う事で社員の一体感を損ねる。 日本が取り組むべき6つの制度的課題 1. 法律上、会社の公器性と経営者の責任を明確にする事。まずは「上場企業は社会の公器である」事をしっかり定義する。そして、「経営者と取締役会は従業員、顧客、取引先、株主、地域社会、地球環境などすべてのステークホルダーに対して責任を持つ」という新しい企業統治のルールを作る。 2. 中長期保有株主を優遇する制度を作る。3-5年以上保有しなければ議決権を行使できない等。 3. 革新的な技術を事業化し、新しい産業をつくる仕組みを作り上げる。所得税の10%分を先端技術ベンチャーに投資した場合、上限を定めて税額控除を行う。 4. ROEに代わる新しい企業の価値測定法を確立する。富の分配における公平性、経営の持続性、事業の改良改善性等。 5. 投機家に利するような極端な規制緩和は改める。現在は、「投機家に対する利益誘導」を「規制緩和」の美名の下に行う事が多い。本当の意味で社会の豊かさを増すような規制緩和を行う。 6. GDP、GNIを補完する経済指標をつくる。 21世紀の「グローバル人材」に一番大切な要素は、英語や中国語といった語学力よりも、「違いを認めた上で、その違いをよく説明していく能力」。外国語はあくまで道具として使い、自国語でしっかりと考えを表現できるような教育を徹底する事。
PUC; パーベイシブ-ユビキタス-コミュニケーション 使っていることを感じさせず、どこにでも遍在し、 利用できるコミュニケーション機能 IFX; インデックス-ファブリック パトリシア-ツリー(検索アルゴリズム) 公益資本主義
「会社は公器」「短期利益でなく長期経営」という主張はとても共感するが、主張の繰り返しが多く、それとは直接関連しない話題や筆者の投資先の事業紹介などに話が行き来しており、冗長に感じた。
原丈人さんの著書ということで手にとった一冊。 原さんの提唱されている”公益資本主義”と今の世界の経済状況、そしてこれから世界の中で日本が歩むべき道を提示されています。 内容としては原さんの書かれている他の書とあまりというか、ほとんど同じです。ただこちらのほうが新しいし、丁寧に詳しく読みやすいというと...続きを読むころでしょうか。 ただ、内容的なことだけなら別著『新しい資本主義』の方がコンパクトでいいと思います。
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