無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで200万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
一般向けの書籍も多数発表している宗教学者・島田裕巳が、宗教の本質的な部分を構成する“死生観”について、神道、仏教、キリスト教、イスラム教等がどのような特徴をもち、他の宗教とどの点で共通し、また異なっているのかを考察したものである。
論旨は概ね以下である。
◆死という必ず巡ってくる出来事を前提として、いかに生きていくのか、それが死生観の本質である。死生観は、死後の世界についての考え方を含みこむことで、個々の宗教が世界をどう把握しているのか、即ち、それぞれの宗教の世界観に密接に結びついている。
◆神道には開祖が存在せず、教えも聖典もないため、死生観も曖昧で、死後に赴く場所も必ずしも明確になっていない。記紀神話によれば、死者は「黄泉の国」に赴くとされ、そこは地上界と行き来できる身近な所と考えられたが、その後独自の他界観は深められなかった。
◆神道の他界観を発展させたのは江戸時代の平田篤胤で、更に民俗学の開拓者・柳田國男が、『先祖の話』の中で、日本人の神観念を、「死者は、子孫によって祀られることによって「祖霊」へと昇華していくが、冬の間は山の神として子孫たちの住む村里を臨む山からその生活を見守り、春が来ると田の神となって里に下って農作業の無事を守護する。また、村全体で祀る氏神もこの祖霊である」と表現した。
◆仏教は、釈迦が生老病死の苦に直面し、出家をしたことから始まった宗教であり、「生まれることの苦」が根源的な問題である。インドには更に「輪廻」の考え方があるため、輪廻の繰り返しを逃れるべく「解脱」を目指した。その後中国に伝わった仏教は儒教の影響受け、現世で仏道修行を積み重ねれば、来世は西方極楽浄土に生まれ変わることができるという「浄土教思想」が生み出された。「念仏」を唱えれば極楽往生できるとする思想は、日本でも浄土宗、浄土真宗として広く浸透した。更に、儒教や道教の影響を受けて死者を往生させるために確立された「追善供養」は、ご先祖様が祖霊・祖神となり、残された家族の守護人となるという日本の先祖供養へ強い影響を与えた。
◆キリスト教は、イエスの惨たらしい死を出発点にした宗教である。イエスの再臨と最後の審判がすぐにでも訪れることが前提となっており、それを恐れ、強い信仰を持つことが求められた。また、「(原)罪」の概念により、罪を償うことがないまま亡くなれば地獄に落ちることが強調された。現世の価値を否定し、死後に地獄に落ちないためには信仰が大事とする点において、仏教とキリスト教は共通点がある。
◆イスラム教では、ムハンマドが自宅で自然死したため、死の捉え方がさほど重要な意味を持たず、明確な来世観・他界観がない。現世において信仰にかなった生き方をするべきとされてはいるが、戒律を破ったために地獄に落とされることが殊更強調されているわけではなく、その点で戒律は緩いと言える。
◆日本的な祖先崇拝、即ち、生きている間は祖先を丁重に祀り、死んだら今度は自分がご先祖様になるという考え方は、生きることにも、死ぬことにも意味を与えるものであった。しかし、都市化が進んだ現代日本においては、ご先祖様になるということはもはや目標とはならず、それは、死ぬことの意味を見出せなくなることであり、生きることの意味も明確ではなくなることである。現代は、“生きやすい”時代であるが、それは同時に“死ににくい”時代なのである。
それそれの宗教の死生観がわかり、自らの生き方・死に方を改めて考えるきっかけを与えてくれる一冊である。
(2017年3月了)
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
ビジネス・実用
ビジネス・実用
ビジネス・実用
小説・文芸
ビジネス・実用