ネタバレ
Posted by ブクログ
2018年04月22日
ゲーム会社で働く我妻は、パワハラ上司の小瀬村によって酷使され、職場から帰れない生活を送っていた。限界を迎えたその時、突如ドラゴンが現れ、小瀬村をさらっていった。驚きとともに解放されたことへの喜びを噛み締めていた彼らであったが、そこに社長が現れ、仕事を続けるよう命令する。仕事から解放されたい我妻は、小...続きを読む瀬村を探しに行くことを口実に職場から立ち去る。
新宿で小瀬村を探していた我妻に巨大なスライムが襲いかかってきた。ロシア人騎士ニコライに助けられて九死に一生を得た我妻は、魔物たちが人間の心によって生み出されていることを知る。すなわち、己を殺して三歩下がることを美徳とし、横一列になることを良しとするストレス社会に生きる日本人の不満が魔物として具現化されているのであった。
ニコライとともにドラゴンを探し出すことにした我妻は、そのドラゴンは自分が上司を呪い、会社を恨んだ証として生み出された魔物であり、自分にはストレスを魔物として具現化する能力を持っていたと知る。ドラゴンの元へたどり着いた時、ドラゴンは我妻に小瀬村をどう殺してほしいか聞くが、我妻は彼を解放することを望み、そして自分自身が変化することを望んだ。その変化にドラゴンは大きなダメージを受け、ニコライによって消滅する。
自分にはストレスを魔物として具現化する危険な能力を有していると理解し、また、自身が変化することを決意した我妻は、小瀬村に退職願を提出する。我妻は、労働環境の劣悪な企業から離れ、清々しい気分でまた新たなサラリーマン人生に歩みを進めるのであった。
簡潔に言うと、ドラクエをモチーフにしたアドベンチャーである。文章が優しいため、中高生でもスラスラ読めてしまうと考えられる。
体裁を大切にし、他人との同調を望むが故に発生する日本に多い劣悪な労働条件について考えさせられる書になっている。また、我妻がニコライの正体を尋ねようとするもなかなか切り出せないシーンは、引っ込み思案の日本人の性格をうまく表現しているといえよう。
結論としては、ストレスの根源を倒す過程で自分がレベルアップし、現状を打開して新たな人生をスタートさせるというよくある話であったのが少し残念であった。とはいうものの、労働条件の改善について、アドベンチャーの形式で表現するという発想はおもしろいと感じた書であった。