Posted by ブクログ
2019年03月29日
キュンと来て、ウルッとして、グッと来た
大円団、そう評して締めくくっても構わない作品に出逢えて、本当に嬉しい
躊躇いなく、殿堂入りに決定である
しかし、残念だ、と思う点はある
まず一つ、大台に乗る手前である、この(9)で完結ってのが、地味にショック
確かに、前作の『富士山さんは思春期』よりも巻数は...続きを読む多いのだが、個人的に、10巻超えを期待していた
もちろん、これは勝手な期待なので、オジロ先生や担当編集者さんに文句があるって話じゃない
むしろ、次回作は10巻に到達するかも知れない、と思えた
次に、ドラマ化や実写映画化が決定しなかったこと
こんだけ、ほっこりと出来る漫画なのだから、ドラマ化すれば、間違いなく、安定した視聴率が取れるはず、と思っていたんだが、そう簡単には決まらないようだ
まぁ、ちょっと時間を置いてから、良い漫画がドラマ化するってパターンもあるので、期待は捨てずにおこう
そんで、これは、上の二つよりも、私の勝手さが目立つ愚痴になってしまうが、直筆サイン色紙をゲットするチャンスが、ツイッターで感想をつぶやいた人だけが掴めるってこと
え、今時!? と言われる事がしょっちゅうなんだが、私、ツイッターをやってない
なら、これを機に始めたら、と言われるかも知れないが、どうにも抵抗がある
何が嫌かってのは上手く説明できないんだが、素直に恐いのだ
なので、イラスト色紙は悔しいが諦める事にした
その分、ここにアップする感想には、これまで以上に熱を籠めようと思う
この完結巻を読むにあたって、既刊を読み返した
改めて、山あり谷ありな歳の差の恋愛を縦糸、読み手が懐古の念を抱き、共感が出来るアオハルドラマを横糸にした、絶妙に適度なサイズの良い漫画だった、と思えた
作中の登場人物らは、多くの事に悩み、迷い、考えた、進路や自分らしさ、そして、恋に
諦めなかったからこそ成就した恋もあれば、夢と天秤にかけて選ばなかった恋もあった
どの恋模様も、読み手の心に、様々な刺激を与えていたはずだ
源の負担にはなりたくない、と思いながらも、心の片隅では、彼のずっとそばにいたい、と願っていた知恩さん
そんな知恩さんが、源がずっと、全力で捧げ続けていた、本気の恋愛感情に対し、素直な気持ちを返そう、と腹を括った理由は、あえて伏せるが、この作品と知恩さんらしいものである
やっと、知恩さんが根負けし、源と付き合う覚悟を決めた時は、大半の読み手が、「うっしゃ!」とガッツポーズしてしまったんじゃないだろうか
私ごときが偉そうに言える事じゃないが、この『猫のお寺の知恩さん』は、知恩さんのおばあちゃんがいたからこそ、面白かった
この完結巻でも、おばあちゃんは良い味を出している
特に、私が印象的に感じたのは、117p
帰ってきた源と知恩さんを一目見て、全てを悟って、何も言わず、二人きりの時間を与えてやる
豊かな人生を送ってきた女性だからこそ、自然に出来る気遣いなのだろう、これが
蒸し返すつもりはないんだが、ドラマ化してほしかった、ほんと
存命であれば、樹木希林さんか、野際陽子さん、もしくは、市原悦子さんに演じていただきたかった
けど、業界には、この三人に匹敵する、良い味が出ている老齢の女優さんが多く在籍しているから、不安はない。もちろん、全9巻を読んで、おばあちゃんに好感が持てる方にお願いしてほしいんだが
次の連載がスタートするのが楽しみな一方で、この作品の続きが読みたいって未練も引きずってしまう
さすがに、「続・猫のお寺の知恩さん」は厳しいだろう。だから、せめて、読み切り集を出す事が今後、あるのであれば、源と知恩さんの“それから”を巻末に描き下ろしてくれないだろうか、オジロ先生
ただ、これだけの良い作品を描き切ったのだから、しばらくは、体を癒し、気持ちを立て直す時間も必要だ
ファンとしちゃ、気長に待つだけである、この『猫のお寺の知恩さん』の良さすら霞むほどに面白い連載作品を、オジロ先生がスタートする時を
どの回も、心に刺さる。その中から、私が推したい回は、第73話「昼間とクレープの知恩さん」である
間違いなしに、昼間ちゃんも、また、知恩さんに負けないくらい、イイ女だ
月並みな表現かも知れないが、失恋が、昼間ちゃんを、もっと可愛くした
いや、彼女のイメージと、このケジメの付け方からすると、カッコ良くした、と表現すべき・・・・・・いや、やはり、可愛いだな
こんだけ、イイ女にフラれたんだから、源は自分が考えている、本気より、もっと本気で、知恩さんを笑顔にしてやってくれよ
ほんと、まとめ方が自分でも浅い、と思うが、好きになるのに年齢は関係ない、気にする必要はないって事だな
この台詞を引用に選んだのは、これまで以上に、源の男らしさが、如実に出ている、と感じ取ったので
惚れた男の子が、ここまでの覚悟で臨み、自分が大好きな場所で生き、死んでいく、と決めてくれているんだから、年上の女としちゃ、それに応えてやらなきゃ、カッコが付かないよな
「ねえ、源ちゃん。ここには、なんにもないよ」
「そうかなぁ」
「源ちゃん、ほんとうに、ほんとうに、ここでいいの?」
「オレ、ここがいいんだ。知恩さんがいる、ここが」(by知恩さん、源)