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あつい
途中から旅のお話よりも本の制作について書かれていて、あれ?って感じだったけど、作者が自分の旅を通して感じたことを本にしていく過程、本制作に対する考え(会社を大きくするというよりかは自分が書きたいものを書いて読者にも同じように楽しんでほしいという方針)、1冊の本ができるまで、そして仕事として本を発行していく大変さなどものすごく伝わってきた。制作側ではこんなドラマがあってノルマがあって、本当に色々な人の思いがあって、薄い雑誌1冊だとしても簡単なことではないのだな。
Posted by ブクログ
蔵前仁一の自伝。
蔵前仁一は、バックパッカーであり、作家であり、また、「旅行人」という会社の代表。「旅行人」は、出版社で、かつて雑誌やガイドブックや旅行記などを発行していた会社。
以前、蔵前仁一の本を何冊か読んだことがあり、結構面白く読んだ記憶があったので、久しぶりに手にしてみた。
筆者の若い頃の旅は、いわゆるバックパッカーの旅。普通の旅と違う点が多いが、一番の違いは、旅にかける時間・期間だと思う。日本を出てから1年とか2年帰って来ないことが当たり前の旅だ。
私も旅好きだが、私の一番長い旅は、1ヶ月弱のヨーロッパを廻った旅。これだけの期間を旅行に割けるのは、ほとんど最初で最後だろうので、かなり欲張ったコースになってしまった。一ヶ所での宿泊は、長くても3泊。多くは1泊または2泊して移動を繰り返していた。
本書の中にも書かれているが、年単位の旅行の場合、一ヶ所の滞在は、もちろん個人によって大きく異なるだろうが、筆者の場合、月単位になる。一ヶ所に1ヶ月とか2ヶ月の滞在を繰り返す旅は、私の、それでも最も長い旅とは、全く異なるものだろう。
私は、長くても、あと数年で引退。その後は時間だけは山ほどある。しかし、年単位で旅を続ける体力はもうないだろうし、家族を放っておいて、勝手に旅に出るわけにもいかない。そう考えると、思い切った旅ができるのは、やっぱり若いうちということなのだろう。
Posted by ブクログ
僕が旅に出る理由はだいたい百個くらいあって
ひとつめはここじゃどうも息も詰まりそうになった
ふたつめは今宵の月が僕を誘っていること
みっつめは車の免許とってもいいかな
なんて思っていること
ーくるり「ハイウェイ」
大好きなくるりの曲がなぜだかふっと頭の中で流れはじめた。
旅に出る理由なんて、いくらでもあって、そのどれでもなかったりする。
蔵前さんもまたそうなのだ。
旅に出る。
人と出会う。
その半生はまるで点と点を結ぶように、偶然の積み重ねが必然かのように繋がっていく。
自分が面白そうだなと思ったことにただ一歩を踏み出す。うまくいくときもあればいかないときもある。それだけのことだ。
ー396ページ
人生も旅も意図したようには進まない。
でもそれが醍醐味なのかしらんと思う。
やってみなはれ、と背中を押されたような気がした。
バングラデシュのガイドブックを作った所、日本在住のバングラデシュ人男性からたどたどしい日本語でお礼を告げる電話がかかってきた、というエピソードがいちばん好き。
Posted by ブクログ
バッグパッカーを対象とした雑誌『旅行人』(1993~2011年、前身の『遊星通信』は1988年~)を主宰した蔵前仁一(1956年~)の、所謂半生記である。
本書は、蔵前氏が大学を卒業し、東京でフリーのイラストレーターをやっていた1982年、26歳のときに(沢木耕太郎が『深夜特急』の旅に出たのも26歳!)、東京での生活と仕事に嫌気がさして、友人の「インドにでも行ってみたら?」という一言に乗り、インドへ2週間の旅をしたところから始まる。
前半では、その後『遊星通信』を発刊するまでの中国、東南アジア、南アジア、中東、アフリカ等への旅の様子が主に描かれるが、日本人の見ず知らずのオヤジに、仕事を辞めて長旅をしていることについて説教される場面、「「あんた、『おしん』を見たことがあるかね」「あれを見なきゃダメだ。『おしん』を見れば、おれのいっていることがわかるよ」 ネパールがどこにあるのかも知らず、アフリカでなにが起こっているのかも知らない人間が、『おしん』を見ろと僕にいう。僕が興味があるのは『おしん』ではなく、あなたが興味のない世界のことなんだよ。それを知りたいのだ。ネパールがどこにあるのか知ることが僕にとっては大切なことなのだ。だから旅をしているのだ。」は、多くのバッグパッカー的旅行人の思いを代弁している。
そして、後半では、旅行人というよりも出版人としての、ミニコミ誌『遊星通信』・『旅行人』の発行、(他社が出さない辺境地の)ガイドブックの制作・発行、他のバッグパッカー仲間の本の出版などについてのエピソードがこれでもかと語られる。中でも、まだ『地球の歩き方』でも出ていなかったバングラデシュのガイドブックを発刊した際に、日本在住のバングラデシュ人から、「バングラデシュのガイドブックつくってくださって、ありがとうね・・・このガイドブック、とってもうれしいですね。ほんとにお礼をいいたくて電話しました・・・ほんとにうれしいですよ。いい本ですね。ありがとうごじゃいます」とお礼の電話がかかってきたというエピソードは、前述の説教オヤジへの蔵前氏の反論と本質は同じであり、世界に生きる人々がお互いに知り・知られることを求めており、そして、それを実現することが今の世界に生きる我々にとって最も大切であることを、図らずも思い出させる。
私は、1987年の年初、蔵前氏がバンコクから飛んできて30年振りの大雪で震えていたアテネの街を、同じようにバッグパックを背負って歩いていたが、もしかするとプラカ地区の道ですれ違っていたのかもしれない。。。
バッグパッカー的旅好き+本好きにとって、懐かしく、楽しめる一冊である。
(2016年6月了)
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