Posted by ブクログ
2020年01月18日
映画評論家とゲームデザイナーの2人のおじさん(2人とも昭和37年生まれ)による、「スターウォーズ」シリーズをめぐる映画史。ジョージ・ルーカスの生い立ちから経歴、スピルバーグとの比較、ディズニーによる買収と今後の展望が語られる。必ずしもスターウォーズのストーリー自体の云々や解説がある訳ではない。
...続きを読む数年前に初めてスターウォーズのシリーズを見て以来、たぶん1回ずつしか見たことがないのでストーリーがイマイチ定着しておらず、昨年12月に公開された「エピソード9」を観に行く前にちょっと読んでおこうと思ってわざわざ買ったが、要するにジョージ・ルーカスと映画業界の歴史、みたいな話が中心で、それはそれで面白いが期待した内容では全くなかった。何が「スターウォーズ学」なのか分からない。せいぜい「ルーカスとデジタル映画史」くらいのタイトルが良いのでは、と思った。だいたいおれは「ジャー・ジャー・ビンクス」自体が何かよく分かってないレベルで、到底おじさん2人のテンションについていけなかった。飲み屋でおじさんの昔話を聞いている感じになってしまう部分もある。
あとは面白かった部分などのメモ。ルーカスが南カリフォルニア大学の映画学科に在学中、卒業制作『電子的迷宮/THX-1138:4EB』(67)というのがあるらしく、これは「機械文明が高度に発達すれば、社会の管理と統制が可能になり(中略)ディストピアが現実のものになるのではないか」(p.60)という恐怖がその映画の世界観の根底にあるらしい。なんかそういうディストピアものがおれは好きなので、興味ある。あとは、「スターウォーズ」の「神話的構造」というのが「比較神話学の学者ジョーゼフ・キャンベルが古今東西の神話を分析した著書『千の顔をもつ英雄』(五六)との出会い」(p.73)によって決定づけられたらしい。そういう、物語の解釈に興味があったので、この部分をもっとフィーチャーした内容を期待していた。あとは一番古い「エピソード4」は実は「リリースするたびにその内容が様々な点で変わっている」(p.90)らしく、そんなこと許されるのか、と思ってしまった。マイナーチェンジ、とか「ディレクターズカット版」とかならともかく。「エピソード6」だって「往時の物悲しく、喪失の念をともなったエンディングは、にぎやかで能天気な狂騒曲と化した」(p.91)だそうで、おれが見たものが実は他の人が見たものとまったく違う、ということが起こりうるということを知った。あとは著者による「スターウォーズ批判」の部分で、「世界のディテールを構築していくあまり、創造主の頭の中にだけあればいい裏設定をスクリーンに映し出してしまった悪例」(p.98)と批判されているフォースの何かの話があるが、やっぱりファンになると、納得できない部分色々出てくるものなんだなあと思う。最後に、「新作の三部作をどう呼ぶか」(p.171)という章があり、名前なんてどうでも、と思ったが、「アナキン三部作」、「ルーク三部作」、「レイ三部作」というのは分かりやすくていいと思う。だいたいおれはアナキンとルークが誰で誰だったのかもあやふやで…。
あとこの本が出たのは2015年の年末なので、エピソード7が公開されるかされたか、という時点での話。(20/01)