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高い理想の下につくられ、マイホームへの憧れとともにあった東京郊外――その知られざる開発秘話を掘り起こし、光と影を検証する。30年にわたって、郊外を市場調査・研究してきたパイオニアが、「山の手」と「下町」の推移、「第四山の手論」を生み出した舞台裏、アメリカ郊外の文化論、「逆開発」のまちづくり等を説く。東京郊外論の基本常識をコンパクトに密度濃くまとめた一冊。貴重な写真、図表、地図を多数収載。
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Posted by ブクログ
高度経済成長期に多々開発された「郊外住宅」の現在の状況と将来の展望について、現状分析や海外の事例などを参考に、論じた作品。 既に、空き地・空き家問題が起こっており、人口減少社会の本格的な到来の前に、いち早く取り組まなければならない課題だと思う。
大都市の郊外論は、商業的な観点、住宅立地の観点、さらには都市縮退の観点からも注目していた。 主に、東浩紀氏などが郊外論を最近展開しているが、その元となったのが三浦氏のパルコ時代の著策。 新刊がでたんだなと思って、職場の本屋の平積みから購入。 あいかわらず切れ味がいい。 ①これ...続きを読むまで(東京の)西へ西へと動いてきたのが、もう一度、海側の東が復活しつつある感じがします。これは今後の東京を考える上で大変興味深いテーマだと思います。(p86) ②ニューヨーク万博で伝えようとしたメッセージは、ヨーロッパ封建主義、19世紀から台頭した共産主義や社会主義、1930年代に生まれたファシズムに対するアンティテーゼ。(p152) ③もともとニューアーバニズムは「ネオトラディショナリズム」(新伝統主義)とも呼ばれていて、アメリカの古きよきスモールタウンのよさをもう一度見直そうという思想です。そういう意味では、ニューアーバニズムの思想を学ぶことが、日本の古いまちの再評価につながるのは当然のことなのです。(p192) 最後に参考文献が載っているが、自分が未読のものがおおくて情けない。 必読といわれるもの、今橋映子『都市と郊外』(NTT出版)、E・ハワード『明日の田園都市』(鹿島出版会)、東秀紀『「明日の田園都市」への誘い』(彰国社)『田園都市の日本人』(講談社学術文庫)、陣内秀信『東京』(文春文庫)、藤原新也『東京漂流』(朝日文庫)、赤坂憲雄『排除の現象学』(ちくま学芸文庫)、服部圭郎『衰退を克服したアメリカの中小都市のまちづくり』(学芸出版社)
東京周辺の開発史を見ながら、現状と今後を占う一冊。 2011年発刊なので若干古いものの、今読んでも古さを感じない部分もあり、勉強になった。
1982年にパルコに入社した三浦氏が手がけた仕事は新所沢店出店のマーケティングで、それはパルコが創刊したマーケティング情報誌「月間アクロス」につながっていく。入社5年後の27歳の時に編集長になり郊外論はそのまま三浦氏のライフワークとなっていった。この本はそんな三浦氏が入門編として用意した東京の山手と...続きを読む下町、郊外の変遷から田園都市などが取り上げられている。三浦氏のこの本の続編とも言える「東京は郊外から消えていく」は以前に読んでてこちらは今住んでる人が次に住みたい町はどこかとかアンケートを中心にこれから人気の集まる街を予想して、一方では空き家問題を取り上げていた。どちらかといえばこのほんの方がお勧め。 明治期の地図を見ると鉄道は海岸線、時々海の上を走っており築地や月島は既に埋め立て地になっていたがお台場やら羽田やらは昭和の初めでもまだ海苔の養殖場だった。さらに遡ると1603年に埋め立てられるまでは日比谷は入江になっており和田倉門は海に面していた。銀座のあたりは前島という半島だったが丸の内は良くて湿地帯だったのだ。明治期に入ると本郷界隈が住宅地と開発され最初の山手となった。 路面電車が整備されるとそれまでは郊外だった山手線内側の西半分に人が住むようになり山手となった。御殿山、代官山などその名の通り高台にあり、坂を下ると下町がセットになっている。大正〜昭和初期に中央線の高円寺、阿佐ヶ谷、西荻窪が郊外住宅地として開発され渋沢栄一の田園都市会社が洗足、大岡山、田園調布を開発しはじめた。田園調布の分譲開始は関東大震災の1923年でこのころ東京の下町だった東側から西側への重心の移動がすすんだようだ。 「アクロス」が第四山手ゾーンと呼んだたまプラーザに代表される東急田園都市線沿線が発展したのは1960年代で85年に「金妻」の舞台となったことからメディアにも取り上げられるようになっていく。バブル期には郊外はとんでもない範囲にまで拡がるがこの当時の千葉・茨城の新築マンションの広告コピーが非常に面白い。 「ゆったり暮らす。(牛久)」「シティの風、リゾートの風、レイクフロントへようこそ(土浦)」「都心へツー・オン50分圏(野田線はっきりしないが運河のあたり)「暮らしが都会へ急接近しています。(東金)」 当時は住宅の平均分譲価格が年収の10倍以上で例えば吉祥寺駅前の70平米、築15年のマンションが1億2千万円、今なら6千万円ほどなのだが。今の蘇州でもちょっとした高給取りで年収が10〜20万元なのにアパートの価格はちょっと安めで平米8千〜1万元とかから、高いと2万を超えている。最近は60平米台の部屋の広告もあるけど普通は100平米からとかだからローンで家を買うのはお勧めできないのだがまだ上がると信じてる人達はなかなかブレーキがかからないらしい。給料は上がり、買った家の資産価値は上がり続けローンの支払いは実質減るという時代が確かに10年ほど続いたのだけどね。 郊外がどうなるかというと確実に進むのが少子化と高齢化。これと言った解決策が出てるわけではないが住んでる人達がどうやって街の価値を高めていくかだろう。空き家対策にしても防災対策にしても地籍がはっきりしないケースが足をひっぱりそうだ。アベノミクスでは少子高齢化対策と女性の社会進出を両方やると言っているがそのためには職住接近して共働きでも子育てできる社会にしていかないと無理があるように思える。
郊外に住む者として興味がありました。人口減となっていく中で郊外の何に価値を求めるかが重要でしょうか。
軽い語り口のところもあるけど、全体的に興味深く読めた。 郊外が成り立ってきた歴史と、広げていく広報のイメージ戦略的な部分など。 目次 第1章 第四山の手論 第2章 東京は増加する人口を吸収してきた 第3章 山の手の条件 第4章 郊外の文化論 第5章 郊外の歴史と問題 第6章 郊外の未来
主に戦後の「郊外」の歴史と背景を様々なデータで検証した本。郊外といっても、その成り立ちはそれぞれ。さらに住む人、その時代には理由がある。海外の例も含めて、まちの出来上がる経緯と衰退を予測。ニューアーバニズムというコミュニティを醸造する仕組みは、今の日本の郊外都市に必要な考えだと思う。
著者曰く、「東京郊外を考えるための最低限の基礎知識が身につく、入門書」とのこと。膨大なデータを基に展開する第四山の手論、郊外の歴史、文化論、さらに郊外の未来へと自説を説く様相は圧巻。いろいろと勉強になります。 【読書メモ】 ・「第四山の手論」は、ひとえに新所沢を盛りたてるために生まれた概念。 →...続きを読む1983年(昭和58年)に西武新宿線・新所沢駅前にパルコを出店する計画があった。 ・ニューアバーリズム 「なんだ、ニューアーバリズムが目指しているのは日本のまちじゃないか」 ・都心から転出する理由は子どもです。子どもが生まれたら、広い家を求めて郊外に住む必要が出てくる。それが嫌だから、子どもを産まない人が増えた。結果、転出が減ったのです。 ・都市問題が少子化問題につながっているのです。国土交通省の問題は、実は、厚生労働省の問題でもあるわけです。 ・定年後の男性が昼間でも元気に歩いているまちのほうがはるかにまともです。彼らがNPOで活動したり、地元で起業したり、お店を開いたり、いろいろな活動をすれば、子どもたちは、いろいろな大人の男性の姿を見ながら育つことができる。 多様性の時代ですね。
2012.03.05 東京における郊外開発歴史、経緯が良く分かる。文京あたりが第一山の手、山手線内の西側が第二山の手、杉並、世田谷、目黒、大田あたりが第三山の手、そして新百合ヶ丘やたまプラーザを中心とする縦の丘陵エリアが第四山の手とされている。80年代にアクロスで特集されたのを覚えているが、この第四...続きを読む山の手の定義が新所沢へのPARCO出店に際しての戦略の一貫で合ったのは初めて知った。とても懐かしかった。
街の歴史は面白い。郊外の変遷や、これからの街づくりや、ワクワクして読んだ。ニーチェの言葉を著者が引用していて、人間は今も、混沌を抱えてなくてはならない、というような意味の。それにも結びつくけど、真に豊かな街は、色んな人が集まる街だとも。深く共感。 人も街も、混沌を抱えるからこそ、許したり、認めたり...続きを読む、結果豊かになって行けるのだと思った。
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