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激動の時代とよばれる二〇世紀。それは差別と被差別、支配と被支配の構造が世界を覆い、暴力と戦争にみちた帝国主義の時代であった。アフリカの分割、植民地の拡大、二度の世界大戦、冷戦の激化、独立抵抗運動の広がり。帝国世界の形成から解体まで、「長い二〇世紀」という視角から、現代につながる歴史の大きな流れを描く。
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Posted by ブクログ
19世紀末~20世紀終盤の帝国主義世界の動きなどを極めて分かりやすく大きな視点で紹介してくれている良書。
帝国主義という思想をベースに、帝国(中心)と植民地(周縁)との関係から、20世紀の歴史、特に帝国主義の現場=植民地の歴史を叙述した本。帝国主義の登場、強化から、反帝国主義≒民族自決思想の萌芽と普及、枢軸国の逸脱と崩壊、帝国の崩壊までがよく整理されている。その中で帝国主義における暴力の実相をえぐり出す...続きを読む。今まで読んだ20世紀の叙述の中で最も分かり易い。そして強烈である。戦後70年を考える上で貴重な一冊になるのは間違いない。
20世紀とはどのような時代であったのか。 本書では1870年代~1990年代初頭までの「長い20世紀」を、支配-被支配関係を軸に、一つの際立った時代として描いていく。 支配-被支配関係で読み解いていく視角が、個人的にはとにかく分かりやすかった。受験世界史で学んだ出来事が、新たに有機的に結合していく...続きを読むような読書体験だった。個々に知っていたあの出来事この出来事が、次々と支配-被支配関係の論理に見事に乗っかってゆくのは、痛快でさえあった。 特に第二次世界大戦に突入していった日独伊の行為は、既にヴェルサイユ体制下にあって過去のものとなりつつあった帝国主義的な支配-被支配関係を、自分たちのために再構築しようとして行った「時代遅れな」取り組みだという見方は面白かった。 枢軸国側は歴史の流れからして、負けるべくして負けたのだという感じを抱いた。 新書サイズということで、当然網羅性は低いのだが、それゆえに「支配-被支配関係の拡大と崩壊」という本書の大きな物語が、一切ブレることなく明確に冒頭から末尾まで貫かれている。論理展開も明快。 一つの視角として自分の中に入れておきたい一冊だった。
著者はイギリス帝国史を専門とする木畑洋一。 本書で扱う「20世紀」について、 起点: 世界が帝国的な支配構造で覆われるようになり始めた時=1870年代 終点: アフリカの各地域の独立(1990年ナミビア独立)、アパルトヘイト体制の終結、ソ連解体=1990年代初頭 としている。 暦の上で...続きを読むの20世紀と異なる20世紀論として、ホブズボーム『極端な時代 短い20世紀 1814-1991年』がよく知られている(邦訳タイトルは『20世紀の歴史―極端な時代』)。 ホブズボームは第一次世界大戦の開始からソ連の崩壊までの期間を「短い20世紀」として位置付けた。木畑はこの「短い20世紀」論は、「あくまでもヨーロッパ世界を中心とした時代区分」であると論じる。 ――― 第一次世界大戦は、ヨーロッパにきわめて大きな衝撃を与え、激しい変動をもたらしたため、そこに眼をすえてみれば大戦に新しい時代の始まりを見ることは可能である。しかし、世界のそれ以外の地域、とりわけ植民地化されていた地域を広く視野に入れた場合には、その点は疑わしくなる。(7ページ) 木畑は、「短い20世紀」論に対し、暦の上での19世紀後半から20世紀初めにかけて作り上げられた世界の仕組みが、二つの世界大戦によって解体の道をたどり始め、第二次世界大戦後に本格的に解体していった過程として「長い20世紀」を描く。アフリカ分割や植民地拡大の暴力性が「長い20世紀」論の中心論題であり、重視されているのは、支配された側の状況である。 19世紀後半以降、帝国の競合によって世界が分割され、支配―被支配の関係が世界中に広がった。アフリカの分割、植民地の拡大、二度の世界大戦、冷戦の激化、独立抵抗運動の広がりという歴史をたどると、20世紀が戦争と暴力にみちた時代であり、(特に支配される側の)命があまりにも軽んじられていたことが分かる。 21世紀は暴力を絶つ時代となるのか。支配ー被支配の構造をどの程度脱するのか。現代は「長い20世紀」から分断された時代ではない。連続性の中に現在があること、そして、新たな暴力が世界中に顕在化している現況を考えると、近接する過去の歴史を学ぶことの重要性を強く感じる。
こういう世界史の本というのは、図解雑学本なるビギナー向けの本か、プロ向けの専門書かに二極分化される傾向がある。それでも、本書は新書サイズで20世紀、特に帝国主義が勃興し終焉した1870年代から1990年代までの世界の歴史を(特に、国民国家体制を作り上げ、第1次世界大戦や第2次世界大戦などに代表され...続きを読むる近代グローバリゼーションの波を)、コンパクトに概観できるようにまとめられている。更に、各時代の支配/被支配の様相について、南アフリカ、アイルランド、沖縄の様子を章末に定点観測という形で述べられている。 特に20世紀の世界史から、国際関係論やグローバル化、冷戦体制が崩壊してから現代的な問題として顕在化したテロリズムや地域紛争など、解決しなければならない問題を捉える上で、大いに参考になるだろう。
本作は、20世紀を振り返る「世界史を一定程度鳥瞰する」というような一冊である。欧州諸国、アジア、アフリカ、米国、太平洋と広い話題を要領よく集めている。細々とした用語を覚えるようなことに四苦八苦するのではなく、こういうような「世界史の一時期を鳥瞰」という論に触れて、「私達が生きている世界は、どういう経...続きを読む過で今のようになって来たのか?」と考えることが、「歴史を学んでみよう」とすることの“眼目”なのではなかろうか?そうした意味でも、多くの皆さんに本書をお奨めしたい。
本書の特徴は、ホブズボームの「短い20世紀」に対し、「長い20世紀」という観点から、帝国主義を中心的な観点とし、歴史を記述することにある。帝国主義を中心に据える以上、西洋中心的な記述では不十分であるため、アジアやアフリカなどの地域も含めて、幅広く世界史を展開している。
タイトルが近代史ではなく二〇世紀の歴史であることがこの本の特徴だった。 歴史の単語としての帝国しか知らない私にとって、今もそれが帝国に当てはまるような動きがあることを知る機会になった。
本書では20世紀を「帝国主義の時代」と位置付けている。 帝国主義とは、「一つの国家または民族が自国の利益・領土・勢力の拡大を目指して、政治的・経済的・軍事的に他国や他民族を侵略・支配・抑圧し、強大な国家をつくろうとする運動・思想・政策」などと定義づけられている。第二次大戦前の日本は、韓国・台湾・中国...続きを読む、その他のアジアの国々を侵略・支配・抑圧しようとしており、自ら大日本帝国と名乗っていた通り、帝国主義国家であった。 20世紀が帝国主義の時代であったということであるが、帝国主義の流れ・動きは、実際の暦上の20世紀とは少しずれている。帝国主義的な動きは、まず、ヨーロッパ諸国がアフリカ諸国を分割・支配しようとした時に始まったとされる。フランスがチュニジアを植民地化したのは1881年、イギリスがエジプトを実質支配したのが1882年のことなので、帝国主義の時代は、暦上は、19世紀後半に始まっている。その動きは、アジアにも広がり、イギリスがビルマを植民地化したのが1886年、日本が台湾を植民地化したのが1895年である。 アフリカ・アジアの国々が植民地化した後は、大国間での領土をめぐる争いが起き始め、それはそのまま戦争に結びつく。第一次世界大戦、第二次世界大戦ともに、帝国間の覇権争いの結果起こったという解釈が成り立つのである。 第二次大戦後、旧植民地国での独立の動きが起き始める。1945年にはインドネシアが独立宣言を行い、1947年にはインドとパキスタンが分離独立する。1950年代に入ってからは、アフリカ、アルジェリアで独立戦争が起き、また、他のアフリカ諸国でも独立の動きが強まる。共産主義・社会主義諸国も実は、ソ連が帝国的に、東ドイツ、ポーランド、チェコスロバキア、ハンガリー、等といった国を支配していたという構造であったが、それも、1989年のベルリンの壁崩壊、1991年のソ連解体により、体制が崩壊する。このあたりをもって、帝国主義時代は終焉を迎えたとされており、それは、おおよそ100年強続いた時代だったというのが、本書が示している20世紀の時代の流れである。 そういう風な見方をすれば、確かに現代史の大きな流れを理解しやすい。 本書には、その間の出来事についての解説が多く書かれているが、各地の戦争や紛争、あるいは、アウシュビッツでのホロコースト等、世界での帝国主義的活動の結果失われた人命は気が遠くなるほどの規模になる。確かに第二次大戦時代に比べると、そのような活動で人命が犠牲になることは少なくなったが、今でも、ロシアのウクライナ侵攻を典型とした帝国主義的な活動の残渣はあちこちに見受けられる。人間は歴史から学んではいるが、学び方は十分ではないのだ。
1870年代以降の世界史を「長い20世紀」という枠組みから「帝国」と植民地・従属地域の支配・被支配関係の変容を軸に叙述している。エリック・ホブズボームの「短い20世紀」論が第一次世界大戦~冷戦終結までを「極端な時代」と規定し、それ以前の帝国主義形成期との「断絶」を重視するのに対して、本書の「長い2...続きを読む0世紀」論は19世紀後半から第二次大戦までの「帝国世界」の連続性を強調し、大戦以後冷戦期の歴史を脱植民地化=「帝国」の解体過程と捉えているのが特色(それ故に20世紀末以降のアメリカを中心とする世界秩序に「帝国」概念を適応させる議論には否定的)。また、グローバル化と国民国家の形成を一体の関係とみなし、両者を対立的に捉える見方を否定しているのも興味深い。巨視的な通史と同時並行して、アイルランド、南アフリカ、沖縄を「帝国世界」の支配と被支配がせめぎ合う典型例として「定点観測」し、徴視的な地域史を組み合わせた叙述方法は、その3か国・地域が「定点」として相応しいかどうかは別として、世界史叙述の方法論の1つとして可能性を示したと言えよう。大国・強国中心ではない「支配される」側の視点を重んじた近・現代世界史の入門書としての価値がある。
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