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映画「かもめ食堂」の初日挨拶で、シネスイッチ銀座の舞台に立ったとき、かつて銀座文化でもぎりのアルバイトをした7年間がキラキラした宝物のように思い出され――。「映画館の出身です!」と自らの出自を述べる俳優が、映画が活況だった頃の懐かしい思い出や、旅先の映画館での温かいエピソードをユーモアとペーソスを交えて綴る名エッセイ。
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Posted by ブクログ
天の橋立・城崎温泉・舞鶴・静岡の映画街と行ったことのある場所がたくさん出てきて、エピソード内のはいりさんの郷愁に引きずられるように、懐かしさに浸った。 もぎりのある映画館に行ったことはない。映画館に行くとその作品と向き合う時間になるから、その分駄作には怒りたくなるし、いいものが観れた時は世界に感謝...続きを読むするし、逆に家でも真剣に観れた作品の時は、なんで映画館に行かなかったんだろうと過去の自分を責める。昔のままではいられず、均質化していった映画館だけど、特別な場所なのは変わりない。 いつかはいりさんがもぎりする映画館に行ってみたいし、大森を歩いてらっしゃるのに遭遇したい。
「キネマ旬報」連載のエッセイ。『わたしのマトカ』や『グアテマラの弟』とはまた違ったテイスト。 大学卒業後20年ほど銀座の映画館で「もぎり」をしていた。エッセイはその頃の話が中心。あふれ出る映画愛と映画館愛。これだけひたむきになれるとは。しかも、映画に出るようになっても、もぎりをしていたとは! 映画を...続きを読む見にきた高名な某歌舞伎役者を怒らせて帰してしまう話や、銀座のキオスクを回って翌朝発売の「ぴあ」を手に入れる話がおもしろい。自分のかつて勤めていた映画館で出演映画の舞台挨拶をするエピソードは感動的。
大好きな片桐はいりさんの作品。映画のチケット切りのお仕事をされていたときのお話。職場での様々なエピソードを愛をもって面白く描かれており、仕事を本当に愛されていたんだなと伝わる。
『かもめ食堂』など 俳優さんとしても 大好きだった片桐はいりさん 数年前に 『私のマトカ』 『グアテマラの弟』を 読んで ますます 大好きになりました 本屋巡りをして 旅先でやっと出会えた 『もぎりよ今夜も有難う』 少々映画ファンぐらいの 私には知らない映画も 多かったですが、 やっぱり面白い...続きを読む 読後感のよいエッセイ はいりさんは 世の中に、 ちょっぴり愉快な悪戯を しかけたいという ただそれだけの衝動で、 もぎりも、 演じる仕事もやっていることに 気がついたと 本書の中で書いている それが 私が、 はいりさんや はいりさんのエッセイが 好きな理由なんだな と私も気がついた
お薦め書評で絶賛されていたのを見て、手に取りました。はいりさんのエッセイは初めて読みましたが、下手に洒落気がこもった文体で飾られた物語なんかではなく、再度読み返したくなるほど、内容の厚い読み物でした。 はいりさんの好奇心に連れ立って、はいりさんを取り巻くコミュニティの中に、私も紛れ込みたくなりました...続きを読む。
女優片桐はいりの映画館によせるおもいをエッセイにしたほんです。全国の映画館を見て回り古い昭和の映画館をもぎりとか高場(たかば)というシネコンの時代には化石化した用語で語っています。映画そのものを主題にした話は一切ありませんが、読ませる本です。
この本を読んだ次の日に映画館で映画を観た。 どの映画館にもいろんな人の思い出がある。私が観に行ったのは都内の大型シネコンだけども、全国にこんなにも魅力的で温かい映画館があるんだな。学生時代、ドキドキしながら入った名画座。すでにシネコンに慣れてた私には戸惑いもあったけど、入れ替え制でなかった空間が妙に...続きを読む心地よかったのを思い出した。映画の話じゃなくて映画館の話。映画館を愛すことで、これからもたくさんの素敵な作品と、街に出会いたい。
昔の映画館の話がとにかく面白い。そして豊かな語彙力と表現力にただただ圧倒された。大人が対象の読書感想文コンクールがあったら課題図書にしたい。
片桐はいりさんの文章もすごく好き! 私は音光映像長時間集中がだめな人なので、映画はなかなか普段見ないのですが。。。 そんな私でも映画館にいって映画をあじわいたいと思える1冊でした。 映画館そのものの魅力、映画のある街の魅力、映画がつくられていく魅力、映画にまつわるとにかく全ての好きと愛が詰まった本で...続きを読むした。 もう好きとかじゃなくはいりさんの人生そのものなんだなあ映画はきっと、、 好きをずっと続けていくことも人生になっていくんだなー。
原田マハ『キネマの神様』文庫本の巻末解説を書いているのが、この本の著者・片桐はいり。ご存じの個性派女優だが、この方が映画館育ち(元もぎり嬢、ちなみに原田マハもそうだったらしい)とは、知らなかった。それにこんなに文章が上手くて語りが面白くって、などということもぼくは全然知らなかった。 そんな元もぎ...続きを読むり嬢であるばかりか今もボランティアでもぎりチャンスがあれば映画館に繰り出してしまうという皆様ご存じの本業は女優である片桐はいりによる、映画愛溢れる名エッセイ集。シネコンの現在ではシネチッタ銀座として知られる元・銀座文化というシアター(当時はシネコンではなく名画座という種類の愛すべき映画館であった)でもぎり嬢をやっていたという著者だが、『キネマ旬報』編集者から文章を依頼されてきただけあって、エッセイ能力は映画愛ともども半端ではない。若い頃の青春の思い出と、映画と、映画館のことを、愛情いっぱいに語ってくれるばかりか、その頃の映画館の暗闇が蘇り、映画への愛がこみ上げ、言葉のひとつひとつが心に響いてくる。まさに古い名画座時代の映画ファンにとって、かけがえのない一冊なのである。 銀座での映画と言えば、ぼくは個人的に父と行った数少ない劇場体験となるテアトル東京の巨大シネラマ・スクリーンが記憶に残る。普通の映画館ですら今のシネコンに比べれば相当スクリーンが大きかったのに、その三倍もあるような横長巨大スクリーンの上を、チャールズ・ブロンソンとアラン・ドロンと三船敏郎が、銃で、剣で、暴れまわってくれるのだった。そう、その作品は、英仏日三大俳優共演で話題となった『レッド・サン』である。三船がどうだったとか、時代設定がどうなのかな、とか父子で楽しく語り合いながら帰る夜道が楽しかった。くっきりと記憶に残る今は亡き父のあのときの笑顔。1971年。中学三年のある日。 ぼく自身は若い頃は強烈な映画ファンであった。小学生の頃から大宮オリンピアに通い、浪人時代以降は、池袋文芸坐を軸に、『ぴあ』を毎週買い求めては名画座をまわった。週末の夜などは、オールナイトの5本立てなども観ました。就職をしても会社が本郷三丁目だったので池袋までは地下鉄で15分とシチュエーションにも恵まれていた。 入場券を買い込んではもぎり嬢(時代から言って文芸坐であればそれが若き原田マハさんであったことも考えられる)にもぎってもらい、名画座の暗闇にはいってゆくときの浮き浮きした気分は忘れられない。煙草の煙が立ち上るあの頃の闇。映画が目的ではない怪しげな人の姿。それら、当時の映画館という非日常空間のことを本書は沢山思い出させてくれる。映画というものを酸素のように求めていたあの頃の自分、アゲイン! と思わせてくれる。 本エッセイは前半部分にそういった映画愛や映画館の裏話、逸話などに要点が詰まっており、後半は現在に近い片桐はいりという女優の役者仕事に絡めながらの旅芸人のような映画紀行、または古い映画館や映画館の跡を訪ねる作者のこだわりとそのときの思いが、綴られる。タイムスリップによる夢の再現から、現在から振り返るあの時代への哀愁とを両面から向かい鏡のように見せてくれる。映画のように。万華鏡のように。 映画に人生の一部をつぎ込んだという意識のある方には、是非とも本書を手に取って頂きたい。映像がデジタル化する前の時代に生きた年代の方であれば、本書は幼い時代の幻燈のように、屋外の広場に張られたスクリーンの風に波打つ映像のように、切なく心を打ってくれるものとぼくは想うのである。
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