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Posted by ブクログ
数年前にNHKのドラマになった、マッサンこと竹鶴政孝氏のスコットランド人の妻リタさんの小説。竹鶴氏は、日本で初めて本格的スコッチウィスキーの製造をした人で、ニッカウヰスキーの創始者である。以前にドラマの原作となった「ヒゲのウヰスキー誕生す」という本を読んだが、その本は政孝の視点から書かれていた。本書も内容は似ているが、外国人であるリタがどう政孝と出会い、人生を共にし、日本に帰化していったかを追うことができる。
著者の森瑤子氏は早逝してしまったが、100冊を超える著書を遺している。本書もたくさんリサーチをして書かれたであろうことがうかがえる。著者の配偶者がイギリス人ということもあり、スコットランドの暗い天気や広々とした家といった情景がとてもリアルに描写されていた。まだ外国人、しかも白人が日本にとても少ない時代に、日本に来て文化を学び、日本人になり、政孝を支えたリタさんの苦労は想像を絶する。子に恵まれずとった養子とそりが合わなかったというところは胸が痛んだ。
望郷というタイトルなので、リタさんがホームシックにくよくよ悩む内容かと思ったが、必ずしもそうではない。時代や帰国しやすさも全く違うものの、外国に嫁いで祖国の家族を安じるという自分自身の身の上と重ね合わせ、涙を流す箇所もあった。
Posted by ブクログ
『ヒゲのウヰスキー誕生す』を読んで、リタから見た竹鶴夫妻の歩みを知りたいなあと思ったので、ずっと読んでみたかったこの本を購入。
分厚いけど、夢中になって一晩で読み終えた。
リタの最初の婚約者のこと、竹鶴との出会い、妹エラとの確執、日本での戸惑いなど、リタ側から見た生活ぶりがたっぷり描かれていた。特に幼少期~大学まで、どんだけひ弱な女の子だったかというのもよくわかった。それなのに日本に行くと決心して、日本人になりきって、よくそこまで頑張れたもんだなと感心。それだけ竹鶴のことを信頼してついていったんだろう。リタのお母さんが夫をうまくたてる人だから、そういう育ちも影響していると思う。
ただ、サラを養女に迎えたという展開は「ヒゲの・・・」にはなかったのでびっくり!でもこっちはリタの伝記がもとになってるので、こっちのほうがより正確なのか?
でもリタが年をとればとるほど頑固というかこだわりすぎの性格になっていって、それは自分が子どもを産めなくてサラに愛を注ぎすぎるからか?と思った。最後はちょっとリタが怖かった・・・笑
でも、こんなに愛せる・信頼できる夫と生涯一緒にいられてリタは幸せだったんだろうと思う。なかなかリタのようには振る舞えへんな~(*_*;
Posted by ブクログ
竹鶴リタの物語、読み終わりました。森瑤子ワールドの中のリタはなんだか悲しいなあ。一生懸命生きて、愛する夫はきっと労わってくれた、でもそれ以上に日本に同化しようとすごく努力した、だけど完全にはなれなかった、それを「望郷」という題名で表したのではないか。
「望郷」ではリタの戦死した婚約者への感情の動きから描くことで、よりリタという人間の根っこのところへの理解が深まる。。子供を流産してしまい、自分の血の入った分身との生活が叶わなくなって、「初めてニッポン人にならなければならないと悟った」と描いている。そしてリマという養女との行き違いの生活を森瑤子は想像たくましく描く。ここのところがこの物語を読んで悲しく感じるところなのだ。
夫の姓になって夫の家族と住み、自分の育った土地を離れたいわゆる「お嫁さん」になった日本人の妻の場合でも、いくつになっても実家をなつかしく思いだす、というのはあるだろう。でも子供を産むことで、夫の家の跡取りの「母」となることで、新しい”夫の側の”土地での地位が確定される、という構図がある。リタはそれが叶わなかった。そこのところじゃないかな。リマとの別れの後の、威氏とも孫ともいい関係だったようだが、森瑤子は威に、「僕は何人子供がいても養子には出すまいと思う」と語らせている。
ただ、威氏のニッカのHPでのエッセイを読むと、10代後半で納得の上での養子縁組でもあったので、何も違和感はなかったと書いている。おじの会社を継ぐためのもの、であって、「リタおふくろ」「政孝おやじ」と書いているように、実父母は別に厳然として存在し、ニッカという会社、いわば大名の家督相続、仕事と養子縁組は一体、というように見える。
ともかく、この森瑤子ワールドの中のリタはけなげにスコットランド人として日本人として、精一杯その生を終えた、といえます。
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