半導体 尖端覇権の興亡

半導体 尖端覇権の興亡

小説・文芸
2,750円 (税込)

13pt

尖閣諸島沖の波高い2010年、中国漁船が海上保安庁の巡視艇に体当たりし、海保職員によって船長が逮捕された。中国はこれに反発し、レアアースの輸出を全面禁止すると通告する。狼狽した民主党の菅直人首相は処分保留のまま船長を釈放した。一連の経緯によって、中国はレアアースを「戦略物資」することを学習する。翌年の東日本大震災と福島第一原発の放射能漏れ事故によって、日本は太陽光発電を中心とした自然エネルギーに大きく軸足を移すが、すでに太陽電池の生産は中国メーカーに主導権を奪われつつあった。中国は先進諸国から学んだ技術をもとに政府から巨額の補助金を得てあっという間に日本メーカーを駆逐し、世界市場を握ってしまったのだ。同じころ、半導体製造の根幹となる露光装置でも日本は後発のオランダ企業に打ち負かされようとしていた。次世代の露光装置に極端紫外線(EUV)を使うというアイデアを世界に先駆けて考案したのは日本人研究者だった。しかしニコンが手をこまねいている間にオランダ企業が実用化に成功し、この分野の「世界一強」となった。リーマン・ショックとそれに続く円高によって、DRAMと言われる半導体メモリを製造するエルピーダが破綻し、米マイクロンに買収された。続いて、液晶テレビで世界に先駆けたシャープが、新参者の台湾の鴻海精密工業に下克上された。2010年代初頭、日本のハイテクメーカーは急速に凋落し、気がつくと、韓国や台湾どころか中国に先端製品を抑えられるようになった。中国への警戒感が台頭するとともに「経済安全保障」という思想がアメリカやヨーロッパからもたらされた。日本企業の持つ技術や製品を囲い込んで、外国の「侵略」から守るという戦略を模索し始めた。経産官僚はまずTSMCを誘致することに成功し、渋る財務省を押し切って巨額の補助金をもぎとった。するとアメリカのIBMから「最先端の半導体製造技術を提供する」という話がもたらされる。当初、一部の官僚は半信半疑だったが、ロシアのウクライナ侵攻が転機となった。もし中国軍が台湾に侵攻したら――その連想が、背中を押す。こうして、新興企業「ラピダス」に10兆円もの国費が投入される巨大プロジェクトが、うなりをあげて進行しはじめた。日本の電機企業の盛衰を30年にわたって取材してきた著者にしか書けない壮大な叙事詩。現在進行形のドラマを追う、ビジネスマン必読の一冊。

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半導体 尖端覇権の興亡 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    日本の半導体産業の歴史を企業側だけでなく政府の対応も含めてよく取材している。

    自国を守る考えがどんどん各国で進んでいると感じる。

    0
    2026年09月26日

    Posted by ブクログ

    今年は産業ノンフィクションをよく読んだけどその中で一番面白かった。
    半導体というか経産官僚による経済安全保障を確保するための産業ドキュメンタリーって感じだった。

    0
    2026年09月21日

    Posted by ブクログ

    日本のお家芸であった半導体製造。「産業の米」と呼ばれ電子立国の屋台骨を支えていた半導体が韓国、中国、そして台湾にも生産量、技術力も追い抜かれている。技術力については1周遅れどころか2周も3周も遅れている惨状。

    そしてこの現状を打破すべく電子立国復活を目指して現在北海道に建設中のラピダス。未だ世界のどの半導体メーカーも到達していない微細な最先端半導体の量産を目指しているが、ただ中身をみると半導体技術はIBMからの提供で日本自前の技術ではない。兆を超える多くの税金を投入しているがライセンス料はIBMに取られ、しかもラピダスが生産する最先端半導体の販売先の目処がほとんど立っていない。

    量産体制開始は27年と目前に迫っている。日進月歩の半導体技術の世界だが、果たしてラピダスが生産する最先端半導体を受け入れる世界市場が出現しているのか。

    乾坤一擲にもみえる大きな賭けに日本が出ざるを得なかったのはなぜか?ここまでに追い込まれた凋落の原因はどこから始まったのかを紐解いていく、日本経済の現在地がよく分かるノンフィクション。お勧めです。

    0
    2026年08月30日

    Posted by ブクログ

    本書は、日本の半導体産業が辿った半世紀におよぶ波瀾の歴史を解きほぐした、500ページを超える圧巻の大作である。

    新聞記者という最前線の取材者が目の当たりにしてきた栄枯盛衰のドラマの中では、かつて世界を席巻した日本企業の半導体部門や、打開策として設立された合弁企業が次々と淘汰されていく過酷な現実が描かれる。その容赦ないドキュメンタリーは、現代に至る「日本の敗北」の構造を余すところなく描き出しており、読者に強い衝撃を与える。

    しかし本書は、単なる失敗の記録にとどまらない。衰退の嵐の中で「細い糸」を途切れさせることなく技術を紡ぎ続け、現在の生存へと繋げた企業の執念、さらにはTSMCの誘致やラピダス誕生に至る最新の動向までが網羅されている。

    かつての敗戦から怒涛の再起へと向かう現代の潮流までを見渡した本書は、日本の産業政策や技術史を語る上で決して欠かすことのできない「至高の歴史書」と呼ぶに相応しい名著である。

    0
    2026年08月16日

    Posted by ブクログ

    著者が朝日新聞在籍時代に取材したライブドアをテーマにした本がすごくおもしろかった記憶があり、この著書を購入。

    過去40年ぐらいの日本の半導体産業の現場を1冊にしたという感じ。
    テクニカルなことを求める人には勧めないが、官民がどのように半導体産業にかかわっているかを知りたい人にはお勧め。

    0
    2026年07月26日

    Posted by ブクログ

    1980年代に世界を制した日本の半導体産業が、みるみる凋落した1990~2000年代の経緯と、2020年代になって発表されたTSMCの熊本進出、ラピダスの北海道進出の舞台裏を詳細に描くノンフィクション。
    本書は2部構成です。前半部分はレアアース、太陽電池、EUV(半導体製造に必要な露光装置)、液晶など半導体が絡むデバイスで日本がその地位を失っていく経緯が各章毎にまとめられています。
    後半部分はTSMCとラピダスの誘致を勝ち取るために奔走した経済産業省の担当幹部や自民党国会議員の動向が時系列でまとめられています。

    前半部分は読んでいて辛くなります。「あの時、こうしていれば…」的な局面が次から次へと描かれています。日本国内にメーカーが多過ぎた、各メーカーが設計から製造までの垂直統合モデルに固執し過ぎた、リスクを取って開発を続けられなかった、技術流出に対して鈍感過ぎた等々、原因はいくつかありますが、それがほぼどの分野でも共通しているように感じました。
    メモリーや太陽電池については本や新聞記事で目にすることも良くありますが、EUVについてはその仕組みなども含めて詳しく触れている著書があまりない中、本書は結構詳しく述べられていて非常に興味深かったです。

    後半部分は、経済産業省というのはこういうやり方で政治家を動かして、そして産業振興の方向性を定めて行動するのかという部分が詳細に描かれています。半導体産業はもはや民間だけで成立する産業ではなく、国が積極的にバックアップして育成するのが当たり前となった今、それに立ち遅れて地位を失った日本がいかに復活を目指しているのか、熊本のTSMCと北海道のラピダスを舞台として紹介されています。
    ラピダスについては、「半導体の微細化が限界に達しようとしている今、巨額の資金を投入するラピダスは航空機の時代に戦艦大和を建造することに似てなくもない。その方向性は数年後に明らかになるだろう」と結んでいます。果たして、兆単位の投資が実を結ぶのか、非常に気になります。

    産業・企業ものノンフィクションで著者の大鹿氏の本は、ハズレがありません。その著者が30年にわたる取材を基に半導体という重要分野を扱った本書は500ページを超えるボリュームですが、それを感じさせない充実した1冊でした。

    0
    2026年06月18日

    Posted by ブクログ

    著者の後記に本書の第1部は2010年以降の日本の先端産業の凋落をテーマとし316頁、第2部では、急速な中国の台頭に伴う、技術のヘゲモニーを握る考えを再認識することから経済安全保障政策の重視による半導体の肩入れが208頁描かれる。
    国家観の甘さが没落を招き、大局的な見地を欠くことの苦難を今更ながら実感させられる。
    最後のラピダスのエピソードは現在進行中であり、サクセスストーリーになることを期待したいが、決して甘くない未来を予感する。
    本書は日本の産業、政策サイドからの視点で半導体を中心とした流れが描かれ、クリスミラーの「半導体戦争」の国家間の戦略的視点からも併せて読むと、複層的に理解できると思う。

    0
    2026年10月04日

    Posted by ブクログ

    こんなに面白いノンフィクションは久し振りで一気に読めた。業界の経営に関わった人が友人に薦めたのを教えて貰った。現役時によく聞いた会社や名前だが、知らなかったことが多く今更ながらに納得である。

    その間のことは毎日、新聞で読み聞いてもいたはずなのに、このように長い期間にわたる技術の進歩、産業や企業の政策や戦略を振り返る視点とはまた別で、
    頗る新鮮だ。

    日本の半導体産業が世界を席捲していた頃(1980年代)から転落した過程の業界や各社で起こっていたことを振り返り、技術開発の動向、通産省など政策当局者や経営者の思考や行動、判断などを網羅している。

    作者は朝日新聞の記者でこの分野に30年間携わっていただけに、いろいろなことを正確によく知り、事業の捉え方も客観的で本質的だ。人の論評についても言葉を選んでその人の判断の間違いや器量、性格などを忌憚なく指摘している。
    産業ドキュメンタリーの傑作である。

    第一部は
    ・中国のレアアースの全面禁輸で「経済安保」の考えの始まり
    ・東日本大震災をへて太陽電池の攻防と惨敗、
    ・世界を席捲したニコンとキャノンの露光装置が
    ASMLのEUVに完敗、日立とNECのDRAM部門が統合したエルピーダの経営破綻、産業革新機構のルネサスの成功とジャパンディスプレイの失敗
    ・ソニーの貴族主義とシャープの液晶ディスプレイ亀山工場の失敗

    ソニーの当時の経営陣がそんなに腐っていたとはビックリである、シャープの亀山工場を戦艦大和に例えるくだりも納得だ。当時の業界は太平洋戦争時の日本軍に酷似していたことも痛感。アメリカはもとより韓国、台湾、そして中国に負けるべくして負けたことがよくわかる。経営者が世界の大きな流れに無頓着で初戦の勝ちに酔って傲慢になり、内向きの鍔迫り合いに終始した。

    第二部は
    ・自由主義経済が終焉して地政学上の経済安保主義に
    ・TSMCの熊本進出、県内に熊本GDPの2倍が付加
    ・ラピダスの挑戦、IBMが持ち込んだ異次元の試み、
    前代未聞の官製企業、動き出したら止まらない
    既に1兆2000億の投入を決め、‘27年の量産開始までにあと3〜4兆円を注ぎ込む。拠出の法的な枠組み作りや経営権の整備などを進めている。

    ラピダスのことについては
    将来のことなので誰にもわからないが、作者はラピダスへの巨大資金投入を、技術の趨勢から「戦艦大和にならなければよいが」と言う。
    ・IBMは自分でやらず何故日本に持ち込んだのか
    ・SBなど日本企業はどこまで本気か
    ・東、小池以外の次世代経営人材はいるのか
    ・先端半導体の試作はできた、次は量産
    ・‘26.3.21、テスラが最先端のロジック・メモリ半導体の製造とパッケージングの世界最大の工場をテキサスに建設することを発表。AI半導体を生産する、インテルも加わる。
    (この本の最後にこれを記している)

    ・・・課題はいろいろあるが、日本の半導体産業は地政学的な立ち位置や技術的なバックグラウンドをふまえ、凋落著しい日本経済再興の突破口にすることになった。政府はそれをTSMC誘致とラピダスの成功を目玉に実現しようとしている。

    東会長は
    「2030年は‘19年に比べて電力消費量が17倍になる。電力削減は微細化や三次元積層化と専用チップの普及で実現できる。専用チップは従来の汎用チップと違い専用部分の電力だけですむ。三つで電力消費量を五分の一に抑えられる。‥‥迫力ある、また目が覚めるような形で新しい価値を生み出していきたい。」
    と言う。

    事業や会社の立ち上げには、まず売るものがあってその顧客がいなければ成り立たない。先端半導体「専用チップ」の顧客を作ることである。汎用チップより難しいがその顧客創造が最大の課題だ。

    業を起こすには獣のような狂気も必要だ。
    政治家や当局に資金は調達して貰うが、
    技術や事業で頼ることはできない。
    創業当事者が成功を確信してやるしかない。
    自分は彼らを信じる。

    0
    2026年09月16日

    Posted by ブクログ


    国内での半導体動向について概観されており、全体像が掴めた。全体としては日本の凋落の歴史なので、気持ち良く読み進めることができない部分もあったが、知的好奇心がくすぐられる面も少なからずあった。
    自身はこれまで、実体験として、国が民間の経営にどこまで介入するのかと、疑問に感じることが多かった(業界によるのかも知れない)。しかし、確かに産業によっては、特に国の生命線になり得るような分野においては、一定程度の介入が必要なのかも知れないということが理解できた。
    後半は、国内半導体産業の乾坤一擲とも言える経産省肝入りプロジェクト、ラピダスの動向に触れる。著者は朝日新聞出身ということもあってか、ややもすれば政権に対する批判のような、多額の税金を投入する割に成果の実現性に疑問を呈するような、否定的な見方をしている。確かに、それも客観的な分析なのかも知れないし、税金投入の累計額は、補助金や出資などを合わせて約2.3兆円〜約3兆円規模とも言われ、大変な金額にも思う。しかし、国民1人あたりにすれば20,000〜30,000円、個人的には国全体に利益がある、場合によっては死活問題にもなりかねないことでもあり、納得して払える額とも思う。
    本格生産を開始するとされている2027年度(2028年度?)まであとわずか、かすかな期待とともに見守りたい。

    0
    2026年09月09日

    Posted by ブクログ

    米中冷戦や台湾有事を背景に、TSMC誘致やラピダスへなりふり構わず動く日本の執念がリアルに描かれます。

    0
    2026年07月06日

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