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ちまたを騒がせるヒアリ、夏の風物詩スズメバチとアシナガバチ、刺されたら最も痛いサシハリアリ……お馴染みの面々から、外国の恐ろしいハチ・アリまで実際に刺されたシュミット博士。 その痛みを毒液や生態と関連させるというユニークな手法で、刺されると一番痛い昆虫、痛みの原因となる物質、ハチ・アリ類の防衛戦略と社会性の発達……素朴なギモンから深遠な進化の歴史まで、ハチとアリの知られざる一面を明かしていきます。
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Posted by ブクログ
著者のジャスティン・シュミットは、2015年にイグ・ノーベル賞を受賞。授賞理由は、苦痛に耐えての虫刺されの痛みの尺度の作成。まさに体を張った研究。本書の原著は、タイムリーにも、受賞直後の刊行。 子ども向けの授業では、ミツバチが何匹も飛び回っている広口瓶に手を入れてみせる。刺されると思いきや、大丈夫。...続きを読む実は中にいるのはオス。オスは刺さない。進化的には、ハチの産卵管の先端が刺針に変化した。つまり、刺針をもつのはメス。 刺針や毒液がどう進化したか、防御のためにどう刺針を使うか、どんな毒虫の擬態をするか(ベイツ型とミューラー型)が、体験談も交え、かなり詳しく解説されている。トリビアも満載。 巻末には、毒針をもったハチやアリに刺された時の痛みの表。世界中の花バチ11種、狩りバチ34種、アリ38種それぞれについて、どんな痛みかという主観的印象と痛みの程度が記されている。まるでワインのテイスティングシートのよう。そうか、痛みは味わうものだったか。
毒展で紹介されていたのをきっかけに購入。 作者はイグノーベル受賞者。自分で噛まれて、痛さをレベル分けするという発想がイグノーベル賞にぴったり。 本の内容は非常に勉強になる。
昆虫刺されの痛さを1−4スケールで示し、イグノーベル賞を取った著者の渾身の一作。 蜂と蟻がどうやって毒針を持つに至ったか。もともとは産卵管が発達して刺す機能を持ったので、メスしか刺せない!どういう蜂や蟻が刺すのかというと、失うものが大きい種類。高度な社会性を持つ場合、コロニーを大型哺乳類から守るには...続きを読む自らを犠牲にしてでも捕食者をすから遠ざけなくてはならない。そのため、ミツバチは毒針を自切し毒液を捕食者に対して全部注入する。またありバチは社会性はないが、メスは翅もなく長生きであるため捕食されるリスクも高い。そのため、硬い体、柔軟な針、痛い毒液を備える。痛さ最高に君臨するサシハリアリは、主に植物性の糖分しか取らないが、子供や女王の餌として動物タンパクが必要なケースがあり、その時だけ他の昆虫を狙うが、その毒針はほとんど防御にしか使われていない。この蟻がなんでそんなに強い毒を持つに至ったかはよくわからないが、種自体はだいぶ昔に他のものとは分岐している。また同じ種の間のあらそいがよくおきるため、ころにーのじゅみょうは2.5年しかない。
国立科学博物館の「毒展」から辿りついた一冊。 自分で痛みを検証した、イグノーベル賞を受賞した著者はなんとも強者。 虫の毒や針についてだけでなく、第4章ではオーストラリアのカンガルー島を学会で研究仲間と訪れた著者は、 「何気なく誘って、みんなにも刺されてもらおう。ここに集っているのは、 社会性昆虫に造...続きを読む詣の深い研究者ばかり。格好の標的になってもらえる。」 などの研究の過程も垣間見え、読み物としても楽しませてくれる。 極めつけは、付録の「毒針をもつ昆虫に刺されたときの痛さ一覧」 ・ウォーリアーワスプについてにて、 「拷問以外の何物でもない。 (中略)それにしてもなぜ私はこんな一覧を作り始 めてしまったのだろう?」と記載されているところ。要所要所、笑いがあって楽しい知識本。
虫刺されの痛みの数値化でイグノーベル賞を受賞した、シュミット氏の著書。 様々な種についての記述が専門的だけれど、著書の変態的とも思える昆虫愛が伝わり、初心者でも興味をもって読み進められる良書。
サシハリアリにスズメバチ、アシナガバチにヒアリ。 刺すアリやハチは数々あるが、できたら刺されたくないと思うのが普通の反応だろう。 ところが著者、ジャスティン・シュミットは違う。 昆虫毒を専門とする生物学者である彼は、さまざまな毒針昆虫に自ら刺され、痛みを数値化したシュミット指数なるものを作り上げた。...続きを読むその功績で2015年にイグ・ノーベル賞を受賞している。 その「成果」は、巻末付録としてついている、毒針昆虫に刺されたときの痛さ一覧表にまとめられている。 数値スケールで1~4まで。種の名称と分布域、刺されたときの感じも記載される。 「目がくらむほどの強烈な痛み。かかとに三寸釘が刺さったまま、燃え盛る炭の上を歩いているような。」(サシハリアリ、痛みレベル4)「ハッと目が覚める感じ。強烈に苦いコーヒーを飲んだときのような。」(インディアン・ジャンピングアント、痛みレベル1)といったストレートなものもあれば「ピュアな痛みに、やがて雑味がまじり、ついには肉をむしばむような痛みに代わる。まるで恋愛、結婚につづく泥沼離婚劇みたいだ。」(アーティスティック・ワスプ、痛みレベル3)「神々が地上に放った稲妻の矢・海神ポセイドンの三叉槍が胸に打ち込まれたような。」(ジャイアント・ペーパーワスプ、痛みレベル3)といった、わかったようなわからないような譬えもある。 さながら痛みのソムリエ的だが、果たして彼の評価が正しいかどうか、検証する気も失せるような、「痛い」表現のオンパレードである。 これだけだと、ちょっと変わった人というところだが、本文のおもしろさはオタク的物珍しさに留まらない。 なるほど科学者、考察も深い。 刺すアリ・ハチには毒があるわけだが、痛みの毒と致死性の毒は違うものであったりする。天敵に痛さを思い知らせて、次に狙われないようにするのが目的である場合もあれば、実際に殺してしまうことが目的であることもある。獲物として、幼虫に与えることが目的であれば、麻痺させる(しかし、「餌」の鮮度を保つために殺さない)ことに特化した毒もある。 昆虫の毒は、それぞれのニーズに合わせて進化してきた経緯を持ち、なかなかに複雑な歴史を背負っている。成分も単純なものではなく、さまざまな種の毒が「ブレンド」されている。 毒成分の細かな研究も興味深いところだ。 今までに最も詳しく研究されているのはミツバチの毒である。ミツバチ毒に含まれるメリチンというペプチドは、赤血球を破棄する能力を持つとともに、発痛作用や心筋を直接攻撃する作用を持つ。やはりミツバチ毒に含まれるホスホリパーゼA2は細胞膜を構成するリン脂質を破壊し、これが二次的にさまざまな反応を引き起こして弱い痛みを生じる。 ミツバチ毒には、ヘビ毒などと異なり、有効な抗毒素がないが、これはおそらく主成分であるメリチンが抗体のできにくい小分子ペプチドであることが理由であると考えられる。 驚くことに、ヒトがハチなどに刺されて死ぬ場合、その原因は毒素の毒性というよりも、アレルギーによることが多いのだという。ヒトの大きさだと、昆虫毒だけで死に至るには相当の量が必要であるようだ。 口絵写真にはさまざまな毒針昆虫の写真も収められている。著者が途方もない数のミツバチに囲まれている写真も必見。 読みながら「いたたたたた(><)」となりつつも、なかなかに奥深い昆虫毒の世界を垣間見られて楽しい。
蟻や蜂が子孫を残す(生き抜く)為の、進化や生態を知ることができました。 自分は参考にする機会はまず無いと思うけど、巻末の痛みスケールは、解説を含めてとても興味深いものでした。 この本を読んでいたら、人間の存在についてもぼんやりと考えてしまう…
イグ・ノーベル賞を受賞した作者の、研究対象に対するアプローチは少し変わっている。 蜂に刺され、噛まれ、蟻に噛まれ、刺される。 そして、その噛むメカニズム、刺す習性、巣作り、狩の姿など研究対象に迫っていく。 蜂や蟻の最大の武器を忌避せずに受け入れるレポートは、詳細でリアル。 世の中には変わった学...続きを読む者がいるものだ。 彼が、毒物のアレルギーでなくてよかった。
長かったけどおもしろかった。 体のどこを刺されたら痛いかの実験で、腕だったり、舌だったり、局部だったり想像するだけで痛い。 ハチやアリの種類で刺された時にどのくらい痛いかの番付表が最後についている。ワインやウイスキーのような評価(コメント)でユーモアが効いてて良き。
蟻と蜂が刺針をどのような目的で発達させてきたかを、その生態、社会生活を営むのか、単独性なのか、餌との関係なのか、捕食者との関係などに触れながら記述していく。 社会性の高い種ほど、その失うモノ(蜜や幼虫など)が大きいため、外敵に対する刺針とその毒を発達させ、単独性の昆虫は餌を麻痺させる目的で発達させ...続きを読むているようだ。特にオオベッコウバチがタランチュラを麻痺させ、巣に運び、卵を産み付ける。孵った幼虫がタランチュラの血や筋肉、脂肪、消化器系などを食べられ、最後まで動いていた心臓を食べられて死ぬという。この部分を読んだ時は、タランチュラが少しだけ愛おしく感じた。 他にもヒアリが拡大した理由に人間とその殺虫剤が関わっていたり、ミツバチの毒が発達したのも捕食者としての類人猿との競争の結果であったりする。 筆者本人が身を以て蜂、蟻に刺され、それを数値化した部分が大きくピックアップされる。しかし、この本の最大の面白さは、昆虫を愛し、向き合い、その刺針を発展させてきた適応に驚嘆する筆者の姿勢だと思う。
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蜂と蟻に刺されてみた
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ジャスティン・O・シュミット
今西康子
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