Posted by ブクログ
2015年05月18日
素直に認めよう、この漫画は面白い、と
それなりに、BLや腐女子が登場する漫画は読んできていたつもりだったが、まだ目から鱗を落とす漫画に出会えるものだ
確かに、今の今まで出くわしていないな、普通の女の子がBLの素晴らしさに気付き、落ちてゆくもとい腐っていく内容の漫画には
しかも、この『咲くは江戸にもそ...続きを読むの素質』のどこが凄いかって、舞台と時間軸を現代でなく、江戸時代にしているトコだ
確かに、江戸時代も、戦国時代と比較しても、衆道は廃れていなかっただろう
その為、男と男が仲良くしてる、日常の一コマに密かに興奮している女子がいても不思議でない、と読み手に納得させる
斬新っつーか、画期的と言いたいな
また、話の主軸となる三人の少女、サク・カメ・フミが腐る妄想の材料にしているのは、日本の文学に大きな変化を齎したと言っても過言でない大作かつ名作である、『南総里見八犬伝』である
一度でも、ブッ通しで読んだ事がある人間なら内容が分かっているだろうから、登場人物で好きなカッ腐リングを作ってしまう彼女達の衝動と興奮を理解できるだろうが、歴史的な作品が穢されているな、と思うと少しショックw
しかしだ、今も昔も、面白い作品を読んだら好き勝手な妄想を膨らませてしまうのがファンのサガ。彼女らはその妄想を語り合い、己を高め合える仲間がいるのだから、割と恵まれている方だろう
BL愛が感染していく過程が、よくよく練られており、妙なリアリティが生じているので経験のある人は悶えるだろうなぁ
単純に三人で『八犬伝』への愛情で盛り上がって、高みを目指しているだけでなく、彼女らの崇高な趣味に一般人目線からの嫌悪の「NO」を叩きつける新キャラも、終盤で顔を見せてきた点も、中々に上手い
好きな事を語り合える友人を欲しながらも、致命的にコミュニケーション能力が欠落しちゃっているツルノ、確実に才能がある彼女は、三人の関係にどんな変調を生むのかな
また、オマケ漫画が、「もしかして、血筋?」と疑っちゃう現代パロってのも最高だ
どの話も面白いが、個人的にツボったのは、今でも類友がいる以上、必ず起こり、決して避けられない、カップリングの問題を取り扱った第11話「役割と危機」だ。攻めと受け、既存の作品で各々が妄想している以上、好きな組み合わせが違う事は当たり前。興味の無い人間からしたら「どっちでもいいじゃん」と思う事だろうが、当人らには血を流す事になっても、時に友情が壊れるのも承知で、決着を付けねばならない問題なのだ。上下関係、と独自の解釈も面白い。今回はどうにか丸く収まったが、また揉めそうになる時が来るだろうな。そうやって、愛をぶつけ合ってこそ、友情は深まり、作品への愛は澄みきっていく
この台詞を引用に選んだのは、私にも経験があるからだ。幸か不幸か、私の心を圧倒的な力で塗り替えていったのはBLじゃないが、人間、健全に生きていれば、時に出逢うのだ、己の生き様にイイ変化の兆しを与えてくれる「何か」に。唐突に前触れもなしにやってくる「何か」を掴み、逃さない人間は、社会的に成功できる可能性があるのかも知れないな