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約400年にわたり,大西洋を航海した奴隷船.「裸の移住者」としてアメリカ大陸に連行された人々は,いかにしてアフリカの声と音の伝統を再創造し,次世代へと繋いでいったのか.アフリカへの帰還という主題から,音楽,文学,アートなどを横断的に捉え,その歴史と現在を旅する.世界にひろがるブラック・カルチャーへの招待.
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Posted by ブクログ
環太西洋アメリカスで捉えたディアスポラ共同体としての文化継承、再構築。音楽だけでなく幅広く噛み砕いてまとめてあって、更になかなか語られてこなかった(語りにくかった)部分を知る。「キンドレット」読んでおいて良かったし、今年読んだ「パンクの系譜学」ほかの本と繋がる「関係」がわかる気がするよなー。
1週間以上も前に読み終わったのに、なかなかレビューできなかった。 というのも、本書が扱う事柄がとても広範に及んでいるから。 今でもきちんとまとめられるか心もとない。 ばらばらにトピックを上げるだけになるかもしれない。 そもそも自分がこの本を手に取ったのは、ブラック・ミュージックのことが知りたかった...続きを読むから。 昨年、クインシー・ジョーンズが亡くなり、今年もスライ・ストーンが亡くなった。 その追悼番組を聞いたりするうちに、自分たちが子どものころから聞いていたポップ・ミュージックの中に、もはや影響がまったくない音楽なんてないのではないか、と思われるような状況だったんだ、と改めて思った。 筆者はフランス語圏のクレオール文学を専門とする文学研究者。 この人にとっても、やはりブラック・カルチャーの入り口は、マイケル・ジャクソンやプリンスなどの音楽だったとのことだ。 ブラック・ミュージックではなく、ブラック・カルチャーというのだから、範囲が広くなるのは当然の流れ。 とはいえ、前半6章までは、ブラック・ミュージックのことをまとめている。 ブラック・ミュージックは、アメリカに奴隷として売られていったアフリカ系の人々の音楽がルーツという話は、本書で読むまでもなく、いつのころからか知っていた。 が、本書ではそのことを「環大西洋」世界の中で、十五世紀から説き起こされていく。 経糸を時間、横糸を空間として考えれば、とんでもない大きな織物になる。 このことが、自分の中で「広すぎてまとめきれない」と思わされた事情である。 アフリカに伝わる口承文芸が、アメリカス(中南米も含めたアメリカ大陸)に伝わって変容する。 たしかに、これはクレオール文化そのものだ。 例えば、自分はレゲエをブラック・ミュージックと思っていなかったが、本書の言う通り、たしかにそうなのだ。 本書は、ブラック・ミュージックを大きな布置に入れて提示してくれたということになる。 「ブラック」、あるいは黒人と言われる人々の間の差異にも気づかされる。 奴隷の生活を生き延び、新大陸に渡った人々。 その一方で、アフリカの人の支配層の中では、人々を売った人々もいある。 奴隷の生活を生き延びる上で、「ブラック」であることを根拠に想像の共同体を作り、故郷アフリカの幻想を心に築き上げていく人々と、現地に残っている人々の間には、たしかに温度差が生まれてきて当然だ。 そんなことにも、これまで気づかなかった。 アフリカ各民族の歴史であれ、新大陸に渡った人々であれ、歴史をまとめることが非常に困難であった事情も知った。 西欧人のつけた呼び名、他民族がつけた呼び名などが混在して、大変複雑なようだ。 もちろん、ここに西欧の植民地主義の影響も加わる。 ブラック・カルチャーの一つである、ブラック・スタディーズには、こうした困難に向き合うものであるということだった。 「ブラック」という呼称についても、差別的な呼称として嫌だと思う人もいれば、差別されてきた歴史をも含めアイデンティティだと思う人もいる。 政治的な問題で、なかなか非当事者としてどうかかわっていいか困惑するところだ。 筆者は、しかし、非当事者として寄り添いたいという立場をとる。 自分なら寄り添えるのか、と思いつつも、そういう考え方があるのかと知ることができたのはよかった。
実際に触れたことのあるものが少ないため、しっかり理解できたとは言い難い。これから見聞きしていくためのひとつの観点を得ることができた。
ニーナ・シモンの帯に惹かれて手に取る。地理的にそして歴史的に旅をしながら、復習のように整理された気がする。
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ブラック・カルチャー 大西洋を旅する声と音
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中村隆之
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