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Posted by ブクログ
「新潮日本語漢字辞典」を作った新潮社の校閲家による漢字の話。
特に前半は「新潮日本語漢字辞典」がいかに素晴らしいかの宣伝文句ぽくって気にかかるが、読んでいくにつれ漢字オタクの本領発揮といった面白い話が盛りだくさんである。
当用漢字表だの常用漢字表だの使っていい漢字を国が規制する過程での実にいい加減な決定方法を読むと、漢字をはじめ言葉に正しいだの正しくないだの言うことのバカバカしさが感じられた。私も例えば「チーズバーガーになります」といった最近の間違った言葉遣いには嫌な気持ちがしていた方だが、この本を読むにつけそういうのも言葉の変化として許容してもいいのかと思うようになってきた。「全然、大丈夫です」という言い回しも今では普通だし、そもそも「とてもきれい」なんて言い回し、今ではおかしいと思う人の方がどうかしている。
また新聞の漢字規制も妙だと思っていたがそれに関してもしっかり指摘してくれていてうれしい。ついでに言えば新聞はいまだにmainを「メーン」と表記する。「メーンテーマ」「メーンキャスト」てな具合だ。これを読むたびに違和感を感じるのは私だけではないだろう。「メイン」に変えて欲しい。
ただ、筆者の「名前を音読みするとカッコイイ」という感覚は古いと思う。
Posted by ブクログ
小学生の頃は毎週のように漢字の書き取りテストがあった。読み方や書き順のテストもあった。大変だったが、漢字が身についたのは財産だったのだ。本書を読んでそう思った。慶応2年に前島密は「漢字御廃止之議」を建白し、昭和21年の「アメリカ教育使節団報告書」は漢字や仮名を全廃し、日本人にローマ字を使わせようと提案したというが、そうならなくてよかった。
著者は、三歳か四歳のとき、夢の中に漢和辞典が出てきて、翌朝、両親に買ってほしいとねだる。初めての夏休みの自由研究にノート2冊の漢和辞典を作る。第11回漢字読み書き大会青年の部で第一位。漢字検定1級。今は新潮社で書籍や雑誌の校閲をしている。筋金入りの漢字オタクだ。
披露される漢字の薀蓄は面白い。ずっと前から「竜」と「龍」の違いはなんなのか疑問だったが、同じ字の新字と旧字で、現在でも両方使われているという珍しい例だという。この二本立てには昭和21年に定められた当用漢字表から始まる長い歴史がある。また「大阪」と「大坂」、三浦「和義」と「知良」、「斎藤」と「斉藤」などのナゾも解明してある。
日本人は中国で生れた漢字を見事に日本語に組み入れた。訓読を駆使し、送り仮名を発明し、日本製熟語を作り出した。「保険」「弁護士」「意味」「信用」「根本的」など枚挙にいとまがないほど日本製の熟語があるが、「それにしても皮肉なのは、かの国の国名を構成する熟語である「人民」も「共和」も、そして国家の政治体制である「共産主義」も、日本からの逆輸入されたものである」というから面白い。
日本の漢字政策も詳しく書かれている。第6章、7章は「常用漢字の秘密」「人名漢字の不思議」だが、「日本語の漢字のことを考える上で避けて通れない大事なことなのだ」。
この著者が企画し、作ったのが『新潮日本語漢字辞典』。11年あまりを費やしてできた「いままで無かった!日本語の漢字のための初の本格辞典。用例は日本の近代・現代文学から。見出し字総数15375字。熟語総数約47000語」という辞書を買いたいと思う。
Posted by ブクログ
漢文を読むための漢和辞典ではなく、はじめて「日本語に使われている漢字を収録した漢和辞典」という『新潮日本語漢字辞典』。その企画者であり、新潮社の校閲部に勤務する著者が書いた、漢字にまつわるあれこれの話。
学者が書いた本ではなく、校閲者が書いた本、という特徴はよく出ている。異体字の話や、人名漢字、常用漢字・JIS漢字の話など、おもしろいと感じる人がどんくらいいるかは置いておくとして、こういう視点で書いた漢字の本はたぶんなかった。
目ウロコだったのは、漢字の部首がどう決まるのかということ。「問、聞、悶、閣、閥、閲」の6つの漢字で、〈すべて「門がまえ」かと思いきや、これがそうではない。「閣、閥、閲」は「門の部(門がまえ)」で正解だが、問は「口の部」、聞は「耳の部」、悶は「心の部」に属するのである。なぜこんな面倒くさいことになるのかというと、部首は基本的に、意符の部分を取ることになっているからだ。意符とは、漢字の意味を表す部分。これに対して、音を表す部分を音符と呼ぶ。〉つまり、「モン」と読む漢字の部首は音符が「門」であるから、「門がまえ」ではないという訳。くそー。そんなこと習ったかなぁ。これだけで、ずいぶん漢和辞典を引きやすくなるなぁ。
あと、〈漢字は元来、どの部分を左に書こうが右に書こうが、上に書こうが下に書こうが、かまわなかった〉というのも「へぇ」。「峰」でも「峯」でもイイというのが、ほかのいろんな字でもあったわけで。そういえば横浜の書店「有隣堂」の「隣」の字、ホントは「鄰」という字なんだよね……とか。
ぜんたいとしてすごくおもしろいかというと、オレは「ほどほど」だったんだけど、オレよりももっと漢字好きな人はすごくおもしろい本かもしれない。
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