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行き先は何も遠い地に限らない。近所の旅館やビジネスホテルにも、知らない世界が広がっている。
執着を解き放ち、自分の輪郭を失くしながら歩く知らない町。人に出会い、話を聞く。言葉に出会い、考える。それでもこの世界をもう少し見てみたいと思う小さな旅の記録。
話題作『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』でデビューし、今「最も注目すべき」書き手であるスズキナオ、初の旅エッセイ集。前向きな言葉、大きな声に疲れているすべての人へ。
今の疲れ果てた自分でも読めるような、むしろ、こんなときだから読みたくなるような本はないものだろうか……書棚をもっとよく探せば見つかったのだろうけど、そのときは体力もなく、まばゆく見える本ばかりが並ぶ書店をよろよろと出ての帰り道、暗くて静かな旅行記を書こう、と心に決めたのだった。大好きな『つげ義春日記』の、あの雰囲気が念頭にあった。(中略)旅先で出会う何かに心が癒されるとか、元気になるとか、そんな自分勝手なことを期待しているわけではなく、知らない土地を歩くことで、そのあいだだけは、自分自身のことを考えずに済むのかもしれない。ただ、見ているだけ、聞いているだけ、歩いているだけの存在になれるような気がするのだ。そしてその行き先は何も遠い地に限らない。近所の旅館やビジネスホテルにも、知らない世界が広がっている。(「まえがき」より)
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Posted by ブクログ
ふらっと入った本屋で見つけた。
著者のスズキナオさんは知らなかったけど、題名とペーパーバック的な形状に惹かれて手に取った。
まえがきに、スズキさんが本屋に入った際に「こうすればもっと人生が良くなる!」的なプラスの方に向かうことを書かれた本ばかりで、読みたくなる本がなかったことからこの本を書こうと思ったということが書かれていた。
なんかわかるわ‥。これは買うしかないと即購入した。
内容は著者のスズキさんが前から気になっていた近所の民家のような旅館に泊まったり、終電で寝過ごした友人がたどり着いたという駅で終電を逃したという想定で一晩過ごしてみたり、旅先で疎遠になった友人を思い出しながらその時に行けなかった店に立ち寄ったりする。
ちょっと気になってるけど実行してみるまでもないようなことをふらっとやってみる、行ってみる。
自分の思い出ではないのになんとなく自分の遠い記憶にもあったような、友人から聞いた話のような、そんな気持ちになった。
あとがきに「自分の存在をできるだけ透明なものにして、その場その場で感じることだけをじっくり見つめて過ごしたいと、そんな思いがあった」と書かれていた。
そういう気持ちが、誰にでも一つは覚えがあるような感覚にさせてくれるのかもしれない。
こういうことでいいんだよな、と思えた。
Posted by ブクログ
能動的な旅。視点を変えれば、すべて名所になる
「なんでもない日常」なんて、ただの出来事の羅列でしかない。でも、捉え方ひとつで虚しさが楽しさに変わる。そう考えると、毎日はもっと自由で面白いものになるはずだ。
地元・堺の大浜公園周辺なんて、普段は風景の一部として見過ごしていた。でも、誰かの客観的な視点を通して見ると、急に輝いて見えるのが不思議だ。知らない土地の「プノンペン」や「湊潮湯」への興味も湧いてくる。
映画や旅というフックを使って、日常を別の角度から切り取ること。それだけで、世界はいくらでも広がる。
今はAIが「好きそうなもの」を勝手にレコメンドしてくれる便利な時代だ。でも、だからこそ「偶然の発見」に価値が生まれる。どこへ行くか分からない「サイコロ切符」みたいなガチャ要素に心が惹かれるのは、誰しもが予定調和に飽きているからだろう。
特にいいなと思ったのが、弘法大師の「同行二人」という概念だ。今そこにいない誰かを想いながら体験を重ねる。そうやってイメージを共有すれば、1人であっても1人ではない。忘れられない限り、その人は確かに存在している。この感覚があれば、ふらっと一人で飲む時間さえも、とても贅沢なものに思えてくる。
どこで、誰と、何を、どう飲むか。酒の愉しみ方を最大限に引き出すためのロジカルな思考も、大人の遊びとして深みがある。
周りの人が「古い」「面倒くさい」と見向きもしないことに夢中になれる自分だけの趣味は、意味を自分で創り出せるブルーオーシャンみたいなものだ。結局、本当の贅沢は自分自身の考え方次第なんだと思う。
地域の文化であれ、日々の些細な出来事であれ、それを価値ある資源にできるかどうかは、受け取る側の感性にかかっている。発信者ばかりに頼るのではなく、自分たちで面白がり、意味を創り出すこと。
一人であって、一人じゃない。そんなふうに、日常のあちこちに喜びを見つけていくのが、人生を最高に楽しむコツなんだと改めて感じた。
Posted by ブクログ
家から5分の旅館に泊まる。いいタイトルだと思う。日々生活をしている街に泊まる。布団や風呂が変わっただけで贅沢な旅気分が味わえそうだ。すぐにでも旅に出たくてウズウズしてくる。
はてさて、自分はなにげない毎日をこんなに楽しんでいるだろうか?習慣化して毎日ルーティンをこなす。仕事や勉強の成果を出すには最善手だろう。でもそこからこぼれ落ちてしまうものはないのか?ふと銭湯に立ち寄って湯を浴びて、ビビッときたお店に入ってビールを飲んで、そんなひとときが日常を豊かにするのではないか。そんなことをこのエッセイは思わせる。
土日や会社の帰りにふと気になった場所に立ち寄ってみる。今まで気になっても入らなかった銭湯や居酒屋に立ち寄ってみる。時間に追われるばかりじゃつまらない。
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小説・文芸
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