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Posted by ブクログ
主人公、鉄の過酷な運命にとにかく圧倒された。
生まれ育った村での差別、いじめ、凄惨な仕打ち。
人間が持っている闇の部分と憎しみが露にされた序盤、あまりのショックに読み続けられるか不安になったほど。
村を出てからの鉄の生き方が力強い。
日々仕事に打ち込むひたむきさと、重労働の後の達成感。
仲間との連帯感。新しい世界が面白い。
盲目の女性との出会い。こころの支え。祈りと安寧。
それなのにまたも運命に翻弄され、人生が変わっていき鉄の人生から目が離せなくなってくる。
残酷さを何度も味あわされる鉄が問う。
なぜ生きる?
生きるとは?
極限まで打ちのめされた鉄の魂の言葉が心に刺さってくる。
久しぶりにずしっと衝撃をうけた小説。
凄惨な描写がとても辛かったけれど星4つでは足りない力作なので5つにした。
Posted by ブクログ
本作は第6回小説現代長編新人賞受賞作であり、選考委員である花村萬月・角田光代という両作家のコメントが本の帯に印刷して巻かれている。さらに帯の正面に太文字で描かれたセンセーショナルな言葉『生きることは殺すこと』。
そもそもが書店で手にとったのは、新作の『光る牙』。日高を舞台に羆との対決を描いた山岳小説とのお触れだったので興味を引かれのだっがが、自衛隊出身の肉体派作家を売り物にしたこの新人作家がそもそもどうやって出てきたのかというところで、このデビュー作からしっかり読んでみようと思ったのだ。
というわけで本書を紐解くと、「生きることは殺すこと」と能書きを与えるほどには、強烈なバイオレンスに彩られた作家ではなかったので、安心した。むしろ昭和初期の不条理なまでの貧困の中で、荒み切った人心が産み落とした差別や暴力の、むしろ被害者ですらある主人公が、社会というものから追われて、山から川と、東北の大自然のなかを、逃げゆく物語である。
ゆく先々で、その時代や社会を象徴するが如き、一癖も二癖もある人物たちに邂逅しながら、主人公は純粋な人恋しさの中で信頼すべき人、守るべき弱者と手を取り合う。心のふれあいは、世界の最も深い底の闇の中で生まれ、沸き立つ。人間の命の渦潮を抱き込むが如き文体に、やられる、やられる。この作者ただものではない。
大自然の中を逃走し、最後には活劇シーンと言ってもいいような山岳の死闘がクライマックスとして待ち受けるのであるが、全編に漂うものは暴力を軸にした戦いの物語ではなく、純粋な心に支配された若き主人公・鉄の、祈りの敬虔さと犠牲的な精神に裏打ちされた肉体の酷使が絞り出す、運命の導きにも似た神話的世界を旅する物語である。
漂白と言った言葉の持つ透徹した厳しさを、この小説は徹頭徹尾貫いており、ストイックで簡潔な文体が、容赦なく、過酷も、愛も、紡ぎ出す。物語力というパワーを存分に感じさせる作者デビュー作。
この極限の世界に導かれる読者は、いわば驚愕と感動を約束されたようなものである。
Posted by ブクログ
最近女性作家の作品を続けて読んでいたので、無性に男っぽい無骨な作品が読みたくなって手に取ったこの小説。
結論から言うといささか男度が高すぎた(笑)
吉村さんは二作目。
前回読んだ「光る牙」が手に汗握る怒涛の展開で非常に楽しく読めた作品だっただけに期待大。
今回の舞台は昭和初期の山間の東北の村が舞台。
村八分の貧しい家庭に育った鉄が唯一心のよりどころとしているのが、やはり嫌われ者一家の娘、おミツ。
そのおミツが村の若者の手によって命を奪われる所から物語は大きく動き出す。
おミツの敵を討ち、村を離れる鉄。
その後の逃亡生活は過酷以外の何ものでもなく、行く先行く先で小さな幸せを見つけてもすぐにはかなくも散ってしまう。
鉄のその後の運命やいかに。
ロードムービーさながらの、ハラハラドキドキ感満載な物語。
悪くはないと思うけれど、繰り返される凄惨なシーンに気持ちが萎えてしまって、鉄の心情についていけなくなってしまった。
クライマックスが多すぎて、全体的に単調と言う感も否めないし・・・。
こう考えると、「光る牙」は同じようなハラハラドキドキ作品とは言え、断然完成度が高くなっているのが良く分かる。
この作品がデビュー作と言うのを考えれば、文句なしにすごい!
今後も追っていこうと思う。
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