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人間は、どうやら120歳(大還暦)まで生きることができるらしい――そんな時代に長い老後をどう生きて、どう死んでいくのか。それを考える上で、「宗教」は役に立つのか。宗教学者の著者が、日本人の死に方、生き方、宗教の衰退について、そして、最期まで充実して楽しく過ごすにはどうしたらいいかを考える。秘訣は「怒らない」「超然とする」「自分にとって切実な、学ぶテーマを見つける」!
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Posted by ブクログ
島田裕巳(1953年~)氏は、東大文学部卒、東大大学院人文科学研究科博士課程満期退学、放送教育開発センター(現・メディア教育開発センター)助教授、日本女子大学教授、東大先端科学技術研究センター特任研究員等を経て、東京女子大学非常勤講師。宗教学者として、宗教に関連する一般向け書籍を多数執筆。 私は従来...続きを読む、死生観に関わる本をよく読み、著者の本でも、『「日本人の神」入門』、『人は死んだらどこに行くのか』、『無宗教こそ日本人の宗教である』等を読んできたが、アラ還世代に入った数年前から、人生後半の生き方を説いた本も読むようになり、本書を手に取った。 本書は、人生100年時代と言われるようになった現代において、我々はどのように生きていけばいいのかについて、宗教学者の視点から考えたものである。著者はこれまで200冊を超える本を出してきたが、その中の多数の本からの引用があり、ある意味、著者の主張のひとつのまとめ的な位置付けとして読むこともできそうである。(尚、多くの老後指南書に書かれているような、ノウハウ的なものはほとんど書かれていない) 印象に残った点を挙げると以下である。 ◆人生100年時代が訪れ、人々の死生観は、自分はいつ死ぬかわからないと考える「死生観A」から、自分の人生の終わりを80~90歳に設定し、そこから人生を逆算して考える「死生観B」に変わった。 ◆世界のすべての宗教は、死生観Aの時代に生まれ、人生が短く、先祖は十分に生きられなかったという考えから、子孫は先祖の供養を行い、その成仏を祈ってきたが、死生観Bが支配的な現代においては、死者は亡くなった時点で成仏・極楽往生していると考えられ、死後の追善供養は不要である。 ◆かつて土葬が主流だった時代は、一般庶民は埋め墓に埋葬するだけで、家族が代々入るような墓はなかった。現代に多く見られるような墓は、火葬が主流となり、火葬後の遺骨を埋葬する必要性から生まれたものであり、意外に歴史は浅く、一時的なブームと言えるものである。サラリーマン世帯が増え、家を継承していくという意味が薄れた今、墓は不要である。 ◆若くして死ぬことが減った現代では、人は社会的な死(老人ホームに入る、認知症になる、等)を経て、肉体的な死を迎えることが多く、人の死は、瞬間的なものから、次第にフェードアウトしていくものに変わったのであり、多くの他人を呼ぶような葬式は不要である。 ◆年をとったら、超然として「こころの出家」を果たすことにより、こころの平安を得るべき。具体的には、世の中の様々な出来事にいちいち目くじらを立てるのではなく、自分には関係のない事項については、あえて関心を持たない、放っておくというようなスタンスである。 寿命の長期化が人々の死生観を変え、それが死に関わるしきたり(追善供養、墓、葬式、等)を変えていくというロジックは目から鱗であり、一読の意味はある。(「こころの出家」を目指すという考え方も共感できるが、如何にしてそれを果たすのかの説明には物足りなさがあり、残念) (2023年12月了)
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大還暦 ――人生に年齢の「壁」はない
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