アリアドネの声

井上真偽

巨大地震発生。地下に取り残された女性は、目が見えず、耳も聞こえない。
光も音も届かない絶対的迷宮。
生還不能まで6時間。
想像の限界を超えるどんでん返し。

救えるはずの事故で兄を亡くした青年・ハルオは、贖罪の気持ちから救助災害ドローンを製作するベンチャー企業に就職する。業務の一環で訪れた、障がい者支援都市「WANOKUNI」で、巨大地震に遭遇。ほとんどの人間が避難する中、一人の女性が地下の危険地帯に取り残されてしまう。それは「見えない、聞こえない、話せない」という三つの障がいを抱え、街のアイドル（象徴）して活動する中川博美だった――。
崩落と浸水で救助隊の侵入は不可能。およそ6時間後には安全地帯への経路も断たれてしまう。ハルオは一台のドローンを使って、目も耳も利かない中川をシェルターへ誘導するという前代未聞のミッションに挑む。

• カテゴリ: 小説・文芸
• ジャンル: 小説 / 国内小説
• 出版社: 幻冬舎
• 掲載誌・レーベル: 幻冬舎単行本
• 電子版発売日: 2023年06月21日
• コンテンツ形式: EPUB
• サイズ(目安): 4MB

[ブクログ · ★★★★★]

ミステリー書評
読書レベル　初級〜中級
ボリューム　298頁
ストーリー　★★★★★★！
読みやすさ　★★★★★
トリック　　★★★
伏線・展開　★★★★★★！
理解度　　　★★★★★
読後の余韻　★★★★★★！

一言書評：面白い！帯に書かれている「けんご氏」の書評通りでした！今のところ、今年の下期No.1です！ミステリ好きな方に超オススメです！またドローン好きな人にもたまらない内容かと。

約300ページですが、文字数が少ないページも多いため、遅読の私でもサラリと読めました。また、ストーリー、伏線、展開も私好みのど真ん中という感じで最高でした！

特に最後の方がドキドキもので、とあるページの最後の行を読んだ後、次のページでついに明かされる「事実」を知るのが怖くてページを捲る手が3分くらい止まってしまいました（笑。

読後の余韻も最高ですね！

[ブクログ · ★★★★★]

　秋晴れの三連休、とても楽しい読書でした。地下で展開する物語なのに、青空がにあいます。主人公として災害救助ドローンを操縦した高木春生さん、ドローンを上手に操りながら、一方、読者のわたしもあざやかに翻弄する名パイロットぶりでした。お母さん思いの孝行息子さんにやられました。

　思うに読書は、記された文字を頼りに、感覚の制約条件下で脳の中に世界を構築していく作業です。わたしが読み進めるのに手がかりとするのは、自分の感情の変化と、あたかも視覚障がい者の方の白杖のような「仮説（妄想）」でしょうか。

　わたしは、物語の舞台、スマートシティーWANOKUNIのオープニングセレモニーでの三重障がい者の中川博美さんの感動的なスピーチから、「無理」と「できる」のワードに注目しました。読み進めると、作者の井上さんが作品のなかで「無理」と「できる」の意味を変奏曲のように次々と書き換えていく様が、とても見事でした。
　ひとつ正しい理解や言葉の使い方があるのではないと思います。この物語を読むと「無理」と「できる」の二つの言葉は、様々な意味を持ち、自分がどんな行動をするのかを考えるときの手がかりになるように思えました。

　井上真偽さんは覆面作家さんなんですね。NSFMさんのレビューで知りました。本の終わりの「著者紹介」には「東京大学卒業」とあります。そうなんですね。
　この本にはもうひとり実在の東京大学関係者が登場されます。それは、福島智さんです。
　福島智さんのお母さん、福島令子さんが、本書のなかの三重障がい者である中川博美さんの操る指点字の発案者です。
　福島智さんは盲ろう者として世界初の常勤大学教員になられたそうです。まさに「無理」を「できる」に変えた方です。東京大学では、先端科学技術研究センターに所属され、「障がい者当事者の視点で人と社会のバリアフリーを研究」されているようです。

　さてここからがわたしの妄想です。
　井上真偽さんは福島研究室出身者ではないか？と思うのです。井上さんは福島先生への尊敬の気持ちを作品として表現されたのではないでしょうか。トンデモレビューですね。
　わたしは「無理」と「できる」を追いかけながらそんな妄想でも物語を、コンコンコン、と探りました。

　最後に、スマートシティーWANOKUNIは、この物語ではバリア（障壁）を与えるものなんですが、もうちょっと、フリー感を与えてくれるものも、知れたらより良かったかなと思いました。

[ブクログ · ★★★★★]

前衛的な都市計画に基づいて作られた地下都市「WANOKUNI」のセレモニーの日、巨大地震が起きる。最深層階にひとり残されたのは、「見えない、聞こえない、話せない」障害を持つ女性だった。彼女を安全な避難スペースへ誘導すべく、救助災害ドローンを飛ばす主人公たち。前代未聞で前途多難な救助の幕が開ける・・・。

途中、ドキドキハラハラ感が止まらず、ページをめくる手も止まりません。主人公、しっかりしてー！って言いたくなったり、不慮の事故で亡くした兄の回想シーンでは目頭が熱くなったり・・・。最後なんてもう、グーッとこみ上げてくるものを止められませんでした。
結末を知ったら、絶対もう一度読み返したくなる素敵なお話でした。

[ブクログ · ★★★★★]

途中で無理の解釈が良い方向にかわるが、最後にさらに上をいく考えにかわり、この本を読んで大満足。この終わり方が1番良い終わり方であると個人的に思う。
記憶をデリートしてもう一度読みたい本。

[たからのやま · ★★★★★]

なんとなく先が読めそうなものの

自分の人に対する見方に偏りがあることを痛感しました。○○な人はこういう人でこういうことが出来るけどこういうことは出来ない。そう言った捉え方は平時のときのごく一部なのかもしれない。誰かを守りたいと思ったとき、自分の力をフルで使って救い出したいと思ったときの人間の力というのは、容易に想像を超えてくるものですね。

＃泣ける ＃感動する

[きょん · ★★★★★]

一気に読んでしまいました

ハラハラドキドキで一気に読んでしまいました！
絶望と希望が目に浮かぶようで、すっと入ってくる文章の読みやすさなのにとても濃密でした。
そして最後の6pを繰り返し反芻して読み、大泣きしました。
人を救う事って、なんて難しくて、なんて尊いんだろう。

＃泣ける ＃感動する ＃ドキドキハラハラ

[muda · ★★★★★]

熱い展開

主人公の境遇や過去のトラウマを含めた感情などがとても表現されていて読んでいて泣きそうになることが多かったです。
最後の怒涛の展開がとても面白かったです！

＃アツい ＃感動する ＃カッコいい

[ブクログ · ★★★★☆]

学校　★★★　大人読書　★★☆

ドローンのベンチャー企業に勤める高木。
「地下都市構想WANOKUNI」のオープニングセレモニーで地震が起こり地下5階に盲ろうの女性・中川博美が取り残され、高木は災害救助特化ドローンARIADNEを操縦して地下3階にあるシェルターに誘導することに。

盲ろうの中川をどうやって誘導するのか、次々と起こる問題をクリアして安全に誘導するにはどうすればよいのか。高木たちが必死に救助を進めるなか思わぬ疑惑が持ち上がり。

ストーリー展開が早く、一気に読むことができた。
高校生くらいならば飽きずに読み切れると思われる。

[ブクログ · ★★★★☆]

見えない、聞こえない、話せないという障害のある女性が大地震で地下に一人取り残され、ドローンを使って救出するべく奮闘するお話。
文章も読みやすくて展開もスムーズで一気読み。

[ブクログ · ★★★★☆]

「無理」の基準なんか人それぞれなのに、なぜか尺度が社会によって決められている気がする。そのせいで「自分はこんなこともできないの」「まわりはみんなできてるのに」「まだ大丈夫、いける」って、自分を追い込んであげくに絶望して動けなくなって。
そんな現代人に読んでほしい一冊。

【自分用メモ】
「置かれた場所で咲きなさい」という言葉に感じていた違和感を言語化してくれた。
置かれた場所で咲こうと思って本当に咲ける人と、どれだけ頑張っても咲けない人と、そもそも置かれた場所以外の環境が伴わなくて頑張ることすらできない人と、いろいろいる。それなのになんで大人は「置かれた場所で咲きなさい」なんて言うんだろう、理不尽だな、と思ってきた。「自分にできること、できそうなこと」からはじめていけばいい。最終的に咲くのが置かれた場所でなくても、自分がちゃんと咲ける場所で咲けばいい。それを言語化してくれた小説。