無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
昭和32年に刊行された作品、ということを知った上で読まないと、なかなかに疑問の沸く部分はあるけれど、探偵役の兄妹の活躍が心地よくて、シリーズで読みたいなぁと思わせる作品でした。
新装版はとても可愛らしい装丁で、女流作家なのもあって文体も柔らかく、それでも江戸川乱歩賞だしなぁという心持ちで読めば、やはりそこは素人探偵といえどコージーミステリとは言えない、それなりの殺人事件が起こります。
それなりの殺人ってなんだって話ですが。
時代背景をイメージしつつ読めると、受け入れやすいかもしれません。
丸く赤いポストだとか。電信柱、という方がしっくり来るような、木製のそれとか。扉を閉めた時に、嵌め込んだガラスが振動でがしゃんと音の立つような古い個人病院だとか、レトロで今は可愛いと人気の赤や黄色、橙の花柄のグラスだとか。
…全部わたしのイメージですけど。しかも別にそんな表現は、作中に出てきません。なんとなくそんな感じかな、っていうだけです。
すみません。大半が本の感想じゃないですね。
作品に戻りましょう。
登場人物が、表で欲しいほどに出てきます。主人公兄妹と、その2人が下宿でお世話になる、少し複雑なお医者さん一家。核家族に加えおばあちゃんや姪っ子、看護婦さんに患者さん。と、猫。
連続殺人となりますので、わたしなどは一旦家系図を書きました。
ボリュームも、容疑者人数も、ちょうど良かったです。初めて読みましたが、とても読みやすかった。
こちらを処女作に、たくさん作品を残された方ですので(しかも作者さまは殆ど学校教育を受けていらっしゃらないそうです)、ぜひ、他の作品も読みたいなと思う一冊でした。
Posted by ブクログ
仁木悦子と仁木雄太郎の兄弟が下宿をする箱崎医院で殺人事件が起こる。
メインとなる殺人は平坂殺し。箱崎医院の医師、箱崎兼彦が平坂の癌を盲腸炎と誤診したため、治療が遅れてしまう。平坂の性格を知る箱崎は、自身がこの誤診により破滅すると考え、看護婦の家永と協力して平坂を殺害し、その身元が分からないよう細工する計画を立てた。
家永の声の質が平坂に似ていることを利用し、再生速度を遅くした音声を使って平坂が生きているように装うトリックが使われる。また、身元が割れないよう平坂の遺体を水死体として偽装した。
事件を目撃した桑田老婦人が殺害され、その孫ユリは指輪と現金を盗まれる。犯人は箱崎兼彦の次男、敬二。敬二は滞納していた家賃を払うため現金を使用し、指輪は換金できず隠した。この盗難事件が平坂と桑田老婦人の間で取引されようとしていた茶壷に関する話と絡み合い、事件が複雑化する。登場人物の嘘や隠し事がクリスティ的な要素を思わせる。
悦子が偶然にも抜け穴の入口を封鎖してしまったことで、家永殺しが外部犯ではあり得なくなる。さらに工藤夫人がかつての平坂の悪行を恨み、平坂を毒殺しようとしていたというミスディレクションがサスペンスの緊張感を高める。
箱崎兼彦の長男英一が平坂の妻清子と恋仲だった過去も、英一を犯人に見せかけるためのミスディレクションとして機能している。最後に、動機が巧妙に隠されていた箱崎兼彦が真犯人であると明かされる展開は、オーソドックスながら見事である。
仁木雄太郎と仁木悦子が探偵として活動しやすくするための登場人物として、老警部というあだ名の峰岸周作という人物が登場する。そこまでキャラクターが立っているわけではないが、この人物がいることで仁木雄太郎、悦子に情報が入り、変死体の調査をしてもらうなど、筋が進む。このキャラクターの存在が御都合主義的ではあるが、許容範囲内
家永殺しでは、猫を利用した物理トリックが使用される。「蛇の毒を塗ったナイフを眠らせていた猫が動かすことで発射される」という仕組みは古典的ながらユニークで印象的だ。タイトルの『猫は知っていた』はこのトリックを象徴している。
ひと昔前のミステリらしいトリックといえる。家永が「ネコ、ネコが…」といって死ぬが、これが何かという謎ではなく、ネコがトリックに使われているという、そのままの意味というのが、逆に新鮮でもある。
箱崎兼彦が犯人だということを示す伏線は結構張られている。チミではないネコが気絶していたり、幸子が寝小便をしていたことから、母が行方不明であり、とても寝れそうにないはずの敏枝夫人が熟睡していた=睡眠薬を飲まされた=箱崎兼彦が飲ませた、など。
入院患者の一人の付添人である桐野夫人は、「もう一本はどうします」という旨の証言を聞く。決定的なことを思い出す前に…という意図で殺害されかけるが未遂に終わる。
まとめると以下のとおり
● 平坂殺人→メインの殺人誤診を隠すために殺害。
● 桑田老婦人殺害→目撃したため殺害
● 家永殺人→猫を利用したトリック。共犯殺害
● 桐野夫人殺人未遂→証拠隠滅
トータルの感想は、古い作品ながら、クリスティ的な作風のよくできたミステリ。箱崎兼彦が、医療ミスを隠すために、身元が分からないような形で平坂を殺害。このシンプルなスジに、箱崎兼彦の次男、敬二がユリが持つ指輪と現金を盗むという犯行が重なり、結果として平坂と桑田老婦人が取引をしようとしたことが重なる。これを利用して、箱崎兼彦が平坂を殺害しようとするが、結果として犯行を目撃した桑田老婦人も殺害される。
家永殺しは、ネコを利用した物理トリック。最後の桐野殺しはトリックらしいトリックはないが、読者が箱崎兼彦が犯人と推理できるようにするための犯行ともとれる。
古い作品ながら、伏線もそれなりに張られており、軽いミステリのお手本のような作品となっている。今、読んでもそれなりに面白く、★4とまではいかないが、★3で。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。