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インド社会に根強く残るカースト的差別意識。その最下層を形成し、差別と貧困に苦しんでいるのは、二億五千万の「不可触民」=現在は指定カースト民と呼ばれる人々=である。インド最底辺に生きる民衆の最奥部へ入って見えた、インドの驚くべき“生命”の世界。時間とは、歴史とは、そして人間とは何か。根源的問いを投げかける名著。
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Posted by ブクログ
同著者の『不可触民・もうひとつのインド』は、著者が1977年にインドを再訪したときの見聞をもとに、最初は1981年に三一書房から出版されている。本書は、著者が1980年から81年にインドを訪れたときの体験を元にしている。前著にもまして凄まじい不可触民差別に接して唖然としてしまう。 インドにおけるカ...続きを読むースト的な差別と暴力が、どれほどに広く深く社会の底辺に巣食っているのかということが、読めば読むほどに分かってくる。同時に、一部の不可触民が、そのような抑圧から目覚め、組織的な抵抗を試み、大きな変化を巻き起こし始めていることも分かる。とくにアンベードカルが50万不可触民とともに仏教に改宗した都市、ナグプールの仏教徒たちの、驚くべき変化は、その地で活躍する日本僧・佐々井秀嶺の活動とともに印象深く語られている。 この本ではとくに、著者がインドの最底辺の人々と接していくうちに、上層であろうと下層であろうと、インド人のすべてに共通する、ある精神性への気づきを深めていく過程が注目される。著者はいう。インドの悲惨さは民衆の無知に深くかかわる。その考えは変わらない。しかし、そのことと、人々の神への傾倒、深い宗教性、「神信心」とが深く密着し、それが人々の無自覚な状態を支えていると、今までは考えていたという。しかし、著者の考え方は次第に変わっていく。インド民衆の無知と、それゆえの悲惨さ、それと彼らの深い宗教性はまた別のこと、次元のことなった問題なのではないかと。 「インド人は、特に底辺の民衆はある意味で、在るがままに生きている。無知であるとともに、先祖から受け継いできた大きく深い『智慧』をももち、それに支えれられ、辛うじて、ではあっても、それがなくては生きえない逆境を乗りこえてきている。それが人びとの、大きな遺産なのではないか‥‥」、そう著者は感じるようになったという。唯物史観的な考え方をもっていた著者にとっては、これは重大な発見だったのかもしれない。このテーマは、本書で何回か繰り返されるのだが、最終的には、著者が気づきを深めていったという、著者が理解する「インドの精神性」というものに、あまり魅力を感じなかった。この著者の「精神世界」への理解に深さが足りないからかもしれない。 それよりも、本書の最終章では、佐々井秀嶺がインドに行ってから、どのようにしてナグプールに導かれ、どのようでにその地での活動を開始したかが、本人の言葉で詳しく語られている。インドを発とうとした最後の晩に金縛りにあった状態のまま、光り輝く老人から「我は竜樹なり、南天竜宮へ行け」と語りかけられたという話は他でも読んだが、その詳しい状況や前後の経過を知ると、非常に強い印象を受ける。 インドのどん底、その地獄を知っていれば、南天竜宮はナグプールだと判断しただけで、その見知らぬ土地に単身乗り込んでいくことは、生命の危険をも覚悟しなければできることではないという。しかし佐々井師は旅立つ。そこに、本人の意志を超えた強い導きがあっただろうことを改めて感じた。あらためて『破天』を読んで見たいと思った。
地球の歩き方インドは、ほかの国に比べて犯罪対策のページが圧倒的に多い。怖いとこなんだろうなあ、と思いはしたが、そんなの比じゃなくて、インドの暴力はほとんどインドの民衆に向けられており、こんな世界が広がっていたということに衝撃を受けた。 家畜以下の扱いを受けてたカーストの出でも、きちんとした教育を受け...続きを読むれば社会や思想に関する深い洞察力や考えを持ったり、奇形にうまれた人がガンガーのほとりで死を願いつつ暮らす中でたどり着いた自分にとっての真理を語ったりというエピソードに、人間本来のポテンシャルに感銘を受けるとともに自分の偏見に気がつかされもした。 目覚めつつあるこういう人々のこれからを応援したい。
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不可触民の道~インド民衆のなかへ~
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山際素男
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