陰翳礼讃

陰翳礼讃

小説・文芸
627円 (税込)

3pt

陰翳によって生かされる美こそ日本の伝統美であると説いた「陰翳礼讃」。世界中で読まれている谷崎の代表的名随筆をはじめ、紙、厠、器、食、衣服、文学、旅など日本の伝統に関する随筆集。解説・井上章一
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陰翳礼讃 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    薄い本です。後半に入っている、他愛もない掌篇のいくつかが、僕は一番好きでした。­
    軽くてふわふわ、何のムツカシサも無く、のどごしまろやか爽やかで。薄味で腹に貯まら­ぬ胃にやさしい。
    肩の力も腰くだけな脱力感の中に、ほのめいた品位。群れない孤高と、「へ~なるほど」­と。何ともくだらなおかしいユーモアだなあ、と思っていたら読み終わる。
    読むたびに心地いい谷崎潤一郎さん。そしてこの本を作った編集者さんに、パチパチ。­
    #############­
    谷崎潤一郎さんの、まあ、エッセイ集です。­
    無論の事、最近になっていろいろな掌編を集めて作った本ですから、編集具合は谷崎さん­本人はあずかり知らぬことでしょう。
    表題作になっている、「陰翳礼讃」。­
    「日本的な美っていうのは、陰翳を愉しむ感じの、暗さを愛おしむ感じ。なんでもかんで­も明るいっていうのも無粋だよね」
    と、いうような内容です。(雑ですが)。­
    で、このエッセイは、一般の読書好き、谷崎好きという愛好家の枠を超えて、建築の世界­でとっても大きな「考え方のよりどころ」というか「考え方の古典」みたいな人気?があ­るようですね。
    この文章は、そういう建築的な提言というよりも、趣味の発表みたいなものとして愉しめ­ました。
    あまりはっきり見えないことの喜びというか。悦びというか。ヨロコビ。­
    現実的な暮らしの実際よりも、「俺はこういう世界観が好きだ」みたいな。­
    ちょっとこう、暗くって。じめっとして。合理的とか明快さとかで割り切れないぐにょっ­とした営みというか。谷崎さんですからねえ。
    こういう風に言葉で要約されると、ただの変態なんですけど(笑)、それを谷崎さんが文­章で小説にしていくと、そこにユーモアもあれば人肌な温もりもあって何だか実にこう、­美味しい。
    変態さんではありますが、ただの変態ではありません。­
    この本には「陰翳礼讃」の他に、「現代口語文の欠点について」「懶惰の説」「客ぎらい­」「ねこ」「半袖ものがたり」「厠のいろいろ」「旅のいろいろ」の7篇が入っています­。
    「陰翳礼讃」と「現代口語文の欠点について」の2篇は、エッセイというよりは「説」み­たいな文章ですが、ほかはエッセイ、雑文、という類のものです。これがどれも素晴らし­い。
    #########­
    ●「現代口語文の欠点について」­
    明治以降の文章日本語の改革を、一定の評価をもちろん下しながらも。­
    専門家、人文科学系の学者の晦渋すぎる言葉使いや、文末の言葉遣いの味わいにいたるま­で、もう目が眩むくらい素敵に具体的な検証を行います。
    それでいて無論の事、谷崎さん。この文章自体が毛ほどの難解さもなくまろやかに軽やか­に読み易く進みます。
    無駄に難解な言葉使いへの批判など、そのまま2015年の日本語状況にも目が覚めるく­らいに当てはまります。
    本、文章を読む、書く、などが好きな人には大いにおすすめな一篇。­
    僕は「陰翳礼讃」よりこっちが面白かった。­
    ●「懶惰の説」「客ぎらい」­
    なまけたいなあ、ごろごろするのがいいなあ、他人と会うのもシンドイなあ。­
    というような、それだけのことが素敵な短文。­
    ●「ねこ」­
    猫好きにはたまらないでしょうねえ。「庄三と猫」の作者ですから。­
    ●「半袖ものがたり」「厠のいろいろ」「旅のいろいろ」­
    谷崎さんは、東京生まれのお坊ちゃん。都会でモダンで洒落て西洋かぶれで金持ちな育ち­です。
    そんな谷崎さんが、関東大震災のあとに関西に移住します。­
    そして、大変に関西が気に入ります。­
    関西人の着る半袖の着物がいいんだよなあ。色んな厠があるなあ。旅の面白み、こういう­の好きなんですよ。
    そんな他愛も無い話のそこかしこに、関西礼賛もありつつ、たまに冷静に「こういうのは­関西はアカン」というのもありつつ。
    このあたりの肩の力の抜けた文章、関西生活がとにかく愉しかった僕としては、にやにや­ふむふむが止まらない、極上な味わいでした。
    これを翻訳ではなく、原文で味わえる。­
    日本人で良かったなあ、と、僕としてはココに偽らざる愛国心があります。­
    (できれば谷崎さんが書いた通りの旧仮名で読みたい!というのが趣味としてはあります­が…)

    1
    2015年08月20日

    Posted by ブクログ

    陰翳礼讃
    著:谷崎 潤一郎
    出版社:KADOKAWA
    角川ソフィア文庫 L 203 1

    戦後間もない時期に書かれた随筆、日本人であることを意識させられるような内容である
    木と和紙によって和らいだ夜の灯りを、谷崎潤一郎は、陰翳と表現しています。
    あゝ、日本人は、いつからか、そのような陰翳のある世界から、乾ききった、ゼロ・イチの世界に迷い込んだのか。

    気になったのは、以下です。

    われわれは西洋紙に対すると、単なる実用品という以外に何の感じも起こらないけれど、唐紙や和紙の肌理を見ると、そこに一種の温かみを感じ、心が落ち着くようになる

    日本の漆器の美しさは、そういうぼんやりした薄明りの中においてこそ、始めてほんとうに発揮される

    美というものは、常に生活の実際から発達するもので、暗い部屋に住むことを余儀なくされたわれわれの先祖は、いつしか陰翳のうちに美を発見し、やげては美の目的に添うように陰翳を利用するに至った

    われわれ東洋人は何でもないところに陰翳を生じせしめて、美を創造をするのである

    美は物体にあるのではなく、物体と物体との作り出す陰翳のあや、明暗にあると考える

    他

    「客ぎらい」はおもしろかった
    「厠のいろいろ」は直接的で、ちょっとNG
    「旅のいろいろ」は、有名な観光地にいくよりも、風光明媚な田舎ですごしたほうがいいというものです。

    目次

    陰翳礼讃
    現代口語文の欠点について
    懶惰の説
    客ぎらい
    ねこ
    半袖ものがたり
    廁のいろいろ
    旅のいろいろ

    注解

    ISBN:9784044094713
    判型:文庫
    ページ数:190ページ
    定価:480円(本体)
    2014年09月25日初版発行
    2020年09月15日7版発行

    0
    2025年08月16日

    Posted by ブクログ

    私はこの書を読んで気づけなかった日本の美しさを知り、古典的な考え、便利になりすぎない考えを私は自分の人生の中で大切にしたいと思った。日常のあれこれから陰翳を見つけられたらステキですね

    0
    2023年01月17日

    Posted by ブクログ

    1933年に出版された書
    建築、インテリア、照明を専門とする者においては今なおバイブル的な存在である
    日本的な美のあり方を陰翳を軸に語られている
    改行が少なく読みにくい文体ではあるが丁寧に読み進めると、文章の美しさから情景が浮かび上がってくる

    0
    2021年04月23日

    Posted by ブクログ

    インテリアや照明に携わる職業の方々に幅広く読まれている本書。日本家屋についてだけではなく、すぐれた日本人論としても読める珠玉の一冊。

    日本人が好む美しさとは、省略の美であるということ。空白を持って画面を構成する日本画もそうであるし、無駄な言葉や描写のない小津安二郎、北野武の映画も実に日本的な美と言える。宮崎駿さんが「アニメーションは三歩あるいて十歩あるいたように見せなければ意味がない」というような主旨のことを何処かて語っておられたが、それも日本の美なんだなあと強く思った。また、世界で評価されているのはまさにそれら省略の美そのものなのだ。

    その点では若者の流行言葉の略語なども日本独自の文化なのだと思う。一から十まで説明過剰というのは西欧文化なのだろう。しかし、現在の日本では行き届いたサービスや過剰な説明などが多くなり、かなり文化は変化してきている。もちろん外国文化を取り入れることで快適になり、発展するのはうれしいことだ。一概に善し悪しを言えることではないが…。比較文化論としても興味深い内容だった。もっと谷崎を読んでみたい。

    0
    2021年04月18日

    Posted by ブクログ

    文章が美しく、正に声に出して読みたい日本語という感じ。陰翳礼讃は、闇や暗がり、影と言った、通常好まれないものに対する別の見方を与えてくれる。特に、漆器や黄金の闇との調和から見た美しさ、日本人の肌の色から生じた微妙な影から来る独特の美しさなどの記述は、それ自身が美しい。
    懶惰の説、旅のいろいろ、ねこ、なども谷崎のノスタルジックな見方を伝えてくれる。内容もさることながら、文章そのものの美しさが心地よく、何度も読んでしまう。

    0
    2020年07月19日

    購入済み

    いつ読んでも…

    いつ読んでも飽きない。和紙を眺めるときのように心が和むし、示唆に富んでいて、読みながら様々なことに思いを馳せらせてしまう。私ごときが言うまでもないことですが、名著です。

    0
    2016年02月11日

    Posted by ブクログ

    日本が欧化したからこそ、谷崎は陰翳の愛すべき性質に気付いたのではないかと思う。

    肌の色と光の関係にまで及んだことは、成る程と思わされた。陰翳の中にある色香、であったり、見えざるものの持つ怪しさ、であったり。
    谷崎は、その陰翳を文学としてみようとする。

    日本文化肯定論というよりも、私たちが本能的に愛してきた闇の淡いに踏み込んでいて、読んでいて頷ける読者は多いのではないか。

    夏の夜に、蝋燭の灯りだけで過ごすイベントは、エコロジーの観点だけで好まれるのではないように思う。

    もう一題。
    「現代口語文の欠点について」も、非常に面白かった。

    「のである」体の気持ち悪さ、主格不在の文法の欧化による、煩わしさ。
    短く、端的に述べることと文学性の相違。
    なるほど、現代国語で指摘される欠点は、それが美になり得るものらしい。

    分かりやすさと、利便性は科学である。
    けれど、文学の持つ魅力はむしろ、そうではないように思う。谷崎の目から見る日本は、なかなか鋭い。

    面白かった。再読前提。

    0
    2014年10月13日

    Posted by ブクログ

    他の本を読んでいて、この陰翳礼讃に触れられていたので、ふと読んでみたくなっただけだったのだが、大変面白かった。文豪の書いた随筆ということで、もっと真面目な難しいものを想像していたのだが、昭和初期から戦後すぐ位までのものとは思えないほど現代にも通じるものがある。また、厠について一家言あるというかしょっちゅう出てきていて、なんとも面白いというか。あこんな人だったんだなと思った。 オススメ。

    0
    2026年06月02日

    Posted by ブクログ

    「むかしは良かった」みたいな話かなぁ?と思って読み始めたら、まさにその通りだったので笑った。電灯の普及により明るすぎる座敷、無粋な家電のコード、白く無機質な西洋トイレ…。清潔で効率よく便利なのは確かだが、そのために失われていく暮らしの中の風雅や花鳥風月を、谷崎は縷々嘆くのである。
     しかし、それだけで終わらないのは、さすが文豪である。京都の料亭「わらんじや」が登場するあたりからグッと文章がノッてきて、暗い座敷における吸い物椀について語る時などはこうである。

     ──まずその蓋を取って、口に持っていくまでの間、暗い奥深い底の方に、容器の色とほとんど違わない液体が音もなく澱んでいるのを眺めた瞬間の気持ちである。人は、その椀の中の闇に何があるかを見分けることは出来ないが、汁がゆるやかに動揺するのを手の上に感じ、椀の縁がほんのり汗を掻いているので、そこから湯気が立ち昇りつつあることを知り、その湯気が運ぶ匂いによって口にふくむ前にぼんやり味わいを余覚する。──

    吸い物を食する体験ってこういうことだったんだ!って、ちょっと興奮してしまった。すごい表現力。

     建築物の陰影についても書かれている(というより、こっちが主なのだろう)。わたし自身、京都のとある塔頭で陰翳礼讃したくなるようなものを見たことがある。仏間の奥にある小さな座敷で、あまり日が差さず薄暗いところだったのだが、襖の水墨画に蒔かれた金砂子がぼうっと鈍い光を放っていて、描かれた風景が幻想的に浮かび上がってきたのだ。
     あれは美術館の展示ケースの中では決して観ることのできないものだった。谷崎が後半生を関西で過ごした気持ちも、ちょっとだけ分かるような気がする。

    0
    2026年05月16日

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