あらすじ
波留花は3年ぶりに八甲田山の東南に位置する山奥の蔦沼にやってきた。3年前は夫と一緒だったが、今回は一人きり。もう40代半ばで、子供たちも成人し、夫との関係も恋人時代のようにはいかなくなった。なんとなく寂しさを感じて、沼の中に吸い込まれそうになった時、50代半ばの男性に声をかけられる。沼に飛び込むのではないかと感じたという。彼の名前は関野。互いに結婚していることを明かした上で、2人で他の沼を散策することにした。そして、互いに寂しさを埋め合うように会話を重ねていく。波留花は娘に彼氏ができて、女になったと気付いた時、若い頃には戻れないという思いに襲われたことを告白した。「過去には戻れない。だけど、いくつになっても恋愛はできる」。そんな言葉をかけてくれた関野に抱きしめられ、キスを交わす。波留花はそれだけ秘口が濡れてしまって……。
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妖精に魅せられて
タイトルともなっている「森の妖精」とはいったい何者なのか、は明かしません。本作品は雰囲気で読ませる藍川作品の中でお特にヤマ場である男女の営みに持っていくまでの過程が秀逸です。舞台は十和田湖、八甲田山。京都など古都をよく場所に用いる著者にしては珍しいが、北東北の数々の名所の美しさがヒロインの揺れ動く心情に投影され、妖精の魔法にかかったがごとく甘美な空間を演出しています。性描写も丹念で、一歩一歩丁寧に読者の気分を高めてくれます。ただ一つ、個人的な趣味かもしれないが、ヒロインの設定が子持ちというのがちょっと、生活感が出てしまい、盛り上がりを冷ましてしまうかも。そのため星は一つ差し引いて四つとしました。