あらすじ
鳥井は33歳。仕事を辞めて、田舎に帰ることになり、残り少ない東京の夜を満喫しようと考えた。行きつけの店を回り、月に1度は通っていた小料理屋にも顔を出す。いつもの女将は不在。代わりに鶴乃と名乗るアルバイトが応対してくれた。浴衣姿とはいえ、着慣れているとわかる。アップの髪が涼しげで愛嬌がいい。紅を塗った唇が色っぽく、切れ長の目もまぶしかった。30代半ばに見えたが、四十路間近だという。鳥井は楽しく酒を飲んでいたが、洗面所に入った際、突然、暴漢がお店に飛び込んできた。鳥井は柔道仕込みの寝技で取り押さえる。警察によれば、閉店間近の女性を狙う常習犯らしい。犯されそうになったのを助けられたと感謝しきりの鶴乃。家に来ないかと誘われた鳥井は、そのまま深い関係となり……。
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忽ち一羽のツルに・・ならなんだ
昔話「鶴の恩返し」をモチーフにしたと明らかにわかる作品。そのためか、主人公の男の相手となる女性の名を鶴乃というが、このネーミングは時代小説でない本作にあって古めかしくていささか興趣をそがれる向きもあろう。設定はさておき、ストーリーはこれまた鶴乃が暴漢に襲われそうになったところを主人公が助け、二人の距離が一気に縮まって、という流れは昔話と同じ。違うのは本作が男女の関係に突入するところ。当然ですな。さてプレイ描写だが、倒錯ものでなく至極ノーマルな内容に終始しつつ、濃密かつ丁寧に編まれていて読みごたえがある。最初のうちは正直、上述の女性ネーミングの違和感もあり、それほど興が乗らなかったが、絡みの部分に入ると引き込まれた。鶴乃のたおやかさ、やさしさが十分に表現され、ねっとりとした営みの記述と見事にマッチして良作に仕上がっている。星3つとしたが、心情的には4にちかい3である。