落合博の作品一覧
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ビジネス・実用
Posted by ブクログ
私は都心の大型書店に14年勤めていた。業務量は膨大だったが、販売・接客と在庫管理に集中していればいい。財務のことや仕入れ計算は担当の部署がやってくれる。個人経営の書店ではそうはいかないだろう。
現在所属する就労移行支援事業所でブックカフェを開業する話が持ち上がっており、事前になるべく最近書店を開いた人の話が知りたくて本書を読んだ。「自分一人でできる範囲のことをする」というポリシーに徹し、シンプルで居心地のいい店を作って日々営業しているのがゆったりとした文面から伝わってくる。それでも本の売上だけではやっていけないという事情もあり、多くのイベントの開催や、飲み物や雑貨などの併売を一人で切り盛りしていて本当にすごいと思う。
著者が言っている通り、本屋を始めることは簡単だが、続けていくことはとても難しいだろう。買い切りで仕入れれば返品作業は発生しないが、棚の回転率や新陳代謝は下がる。売れ筋の本は小さい書店が注文してもなかなか入荷しない。書店業界の利益率の低さも昔から言われていることだが何も変わらない。不安材料ばかりだ。
それでも本書を読んで、自らの選書眼をたのみに小さな本屋を営んでいる著者を羨ましいと思う。文化的な仕事がしたい。街の人々の生活に溶け込み、日常を豊かにする本屋を地元に作りたい。一週間くらいで読み終えられる手頃な新書だが、新聞記者時代の仕事内容の話も面白いし、書店の実務が詳しく綴られていてとても参考になった。唯一残念なのは著者が本屋を始めようと思った理由をあえて語っていないこと。いろいろな縁があって開業に至ったとのことだが、なんだか核心に触れることができないモヤモヤ感が残った。