私も身近に摂食障害を抱えた人間がいる立場なので、様々な専門書にも触れながら当事者とかかわってきたが、摂食障害の女性の心の機微について、ここまで深く、かつ的確に記された本には初めて出会った。
ただし、本書は大きな問題、言い換えれば危うさを持っている。
著者はたびたび、「○○中枢が・・・」「○○
...続きを読むの神経伝達物質が・・・」などと、自分があくまで摂食障害に対して科学的な解釈をしており、それゆえに自論には正当性があると思わせるような記述を用いている。しかし、これは逆効果である。少しでも生理学をかじった人間ならば、著者のこうした記述がすべて独自の想像によるものに過ぎないことがわかってしまう。専門家でもなく、その方面の知識もないのだから、素直にわからない部分はわからないと認めて、自分で理解している範囲で記述するべきであろう。
また、本書には「医者に治らないといわれた人が自分の援助で治った」というような記述が散見される。これはきわめて危険な話の運び方であると認識する。
摂食障害は神経症に分類され、確かにそこから抜け出すことは困難を極める。精神医療に限界があることも確かである。それゆえに、当事者や家族の悩み、苦しみは非常に大きい。そのような中、「医療はダメで自分の方法がよい」といった断定的な論を展開することは、それを盲信する当事者を生み出してしまうもとにもなりかねない。
おそらく相当長い時間をかけて活動してきた結果得られた理論であろうが、せっかく良いことを発表しようというのにこのような論理展開ではまるで新興宗教の勧誘のような胡散臭さを帯びてしまう。ジャーナリストであるなら、自信はあっても、バランスの取れた論述をしてほしかった。