師の高坂の著書が偉大なだけに、比較すると大きな流れとしては掴みにくかったが、随所に光る記述があった。一種の世界史として読める。
主権国家体制、国際共同体、世界市民主義という3層を記述単位として、理想主義に陥りがちな世界市民主義をリアリズムの立場から抑制を促すことに成功している。
・国際政治の大半は、自己の国益と世界的な公共利益のせめぎ合いのなかで、妥協を図るという点に尽きる。
・地図というのは何らかの搾取の前触れ
・19世紀にイギリスでdiplomacyが外交を指す言葉として使われ、国際がベンサムによって使われ、国家体系がドイツのヘーレンによって発明された。国民国家の始まり。
・1913年、メートルとグリニッジ標準時が統一基準になった。
・外爆発から内爆発へ
・ソローキンの戦争指標。18,19世紀に落ち込み、20世紀に大膨張する。
・安全保障のジレンマ
・集団安全保障はあらゆる紛争を世界戦争へと転化しかねない体制。
・軍事力には、心理的、政治的作用もある。
・心理的圧力に屈しない程度の軍備を持つことは自衛のための最低限の軍事力として必要。
・重要なのは、軍事的威嚇に屈せず、簡単に既成事実を作られないような程度の抵抗力、すなわち抵抗の意志を担保する軍事力。
・相互援助や地域的取極には、自らが望まない対立に「巻き込まれる」危険と、助けて欲しい時に助けてもらえない「見捨てられる」危険が存在する。その時の元手としての軍事力が意味を持つ。
・テロには、ガン手術には成功したが、患者が死んだという状態に陥らない注意が必要。テロとは演劇だからだ。恐怖を広める行為だからだ。
・世界政府は魂なき専制に陥る危険性もある。
・内戦はひとたび始まると、激烈になり、終えるのが難しい。国家に見られる痛み分けができないからだ。
・開発は単純ではない。ある社会が自らの伝統的構造と世界経済という与えられた条件を主体的に釣り合わせ、融合させられるかだ。
・国民としての統一性の弱さ、強さ。
・与えると言うことは、かれらの優越性を示すことであり、また、かれがより偉大で、より高くあり、主人であることを示すことである。:モース
・国際機関やNGOは、形式的にも誰かに責任を負う存在でない。地球的利害を調整できない。
・ローマクラブの『成長の限界』の裏切り。
・科学と政治の結びつきの危うさ。科学の自由さの喪失。科学者の無謬も担保できない。
・人は宗教的信念によって行う時ほど、喜び勇んで、徹底的に悪を行うことはない:パスカル
・文明(イギリス)と文化(ドイツ)
・世界市民法の制限。文化の押しつけを戒める:カント
・豊かで自由な国家は外部からの、特に貧しく、専制的な社会からの脅威に恐怖を抱く。
・民主制と共和制:カント
・電気的メディアは「速い情報」をやりとりするが、深い人間関係を形成する「遅い情報」は伝えない:青木保
・言語:1.コミュニケーションの道具。2.隠語やスラングを通して、内外を分ける。壁を作る。