これは「人類史」ですね。読んでよかったです。
太古の森、感染症で高熱に苦しみながら、ものかげにじっと身を潜めることしかできない先祖。そんな先祖と現代の自分を、著者の橋本求さんに「遺伝子」でつないでもらいました。
自己免疫疾患の患者のひとりとして、体や遺伝子のことを考えながら読みました。
マラリアという感染症をご存じでしょうか。ハマダラカという蚊が媒介する「マラリア原虫」が原因です。
余談ですが、マラリア原虫はもと植物(藻類)なんです!知らなかった・・・、マジメに光合成していたのに、いつのまにか動物に手を出し、生き血をすすっとんです!コワ~(他にもそんなヤミ落ち元植物がおるらしですよ!)小ネタ満載です。
マラリアだと、赤血球ヘモグロビン遺伝子の変異で、「発症しにくい」ことがあるそうです。しかし、もしマラリアなどの感染症にかかったら、医療のない昔は「自分の免疫」で生き延びるしかないのです。
そんな人類のなかには、「免疫が活性化しやすい遺伝子」をもつひとたちが存在したようです。マラリアなどの感染症にかかったとしても、免疫の力で生き延びる確率が高まります。
しかし、「免疫が活性化しやすい遺伝子」は感染症には有利でも、何かの拍子に過剰に働きだすと、免疫が自分を攻撃してしまい、自己免疫疾患の発症につながります。
わたしが病気を発症とき、自分の行いの悪さが原因なのか?と思っていました。
でも、すべてがそうではないみたいですね。
わたしのなかにも「免疫が活性化しやすい遺伝子」があるようです。この形質は、ご先祖様が生き延びるのに役立っていたんです。
それを知って、自分だけが悪いわけでもないし、ご先祖様が悪いわけでもない、と理解できました。
このことを知ったからといって、病気がよくなるわけではありませんが、なんとなく気持ちが落ち着きます。
ただ、自己免疫疾患を発症するかしないかは、遺伝子だけでは決まらないようです。
その事例として、一卵性双生児の姉妹が取り上げられます。
お姉さんは、自己免疫疾患を発症、かたや妹さんは終生何事もなかったそうです。
そのなぞについて、清潔、寄生虫、腸内細菌叢について語られています。
自分でもできることがありそうです。
この本を読みすすめると、発症の有無にかかわらず、今を生きるすべのひとが、何らかのリスク遺伝子を持っているいる可能性を感じました。
病気だけでなく、生活リズムに関しても、絶滅した旧人類の遺伝子が関与していたりします。
わたしたちの遺伝子がどんな歴史をたどってきたのか、自己免疫疾患、アレルギーの視点で書かれています。ひとつひとつの話題を短くまとめた構成で、読みやすいです。
ご自分のからだのことを想いながら「遺伝子の語り」に耳をかたむけてみては、いかがでしょうか。