少し変わっているけれど、とても面白い。
アフリカ音楽を研究する文化人類学者の著者は、アフリカはコートジボワールの地で、その地では有名な歌手・ダンサーである少女と出会って恋に落ち、結婚に至る。当然ながら異文化の壁は大きい。本書において著者は、「自分と妻との馴れ初めから結婚にいたるまでの体験を、文
...続きを読む化人類学の視点をとおして語る」ことによって、異文化を理解する学問である文化人類学の扉を開くことにあると言う。そして本書は著者によれば、個人の生々しい体験を通した文化人類学の入門書という位置付けとのことで、著者自身のフィールドワークであるエッセイ風の民族誌に加えて、文化人類学の歴史、基本的概念の概要、参照文献等が<注>において紹介されている。
これまでフレイザーやタイラーから、マリノフスキー、マルセル・モース、レヴィ=ストロース等の代表的な著作を読んだことはあるのだが、取り上げられているテーマについて実感としてなかなか掴めずに来てしまっていた。本書では、著者自身の体験を通して、ある出来事であったり、民族的出自、身分、親族関係、結婚儀式等について文化人類学の視点から具体的に説明、分析してくれているので、かなり腑に落ちるものとなっている。例えば、レヴィ=ストロースの「女性の交換」理論の説明など。
そして本書の文庫版では、1996年に結婚し1998年に共に日本で暮らすことになった妻との関係などその後を書いた補章が追加されている。「夫婦関係の危機、子育ての心得、日本における異文化交流の問題点、多様性と対峙する心構えについて、思うところを書いてみた」とある。ダイバーシティという言葉は踊っているものの同調圧力の高い日本において、益々定住外国人が多くなり異文化と触れる機会も日常となっているこの時代、果たして異文化とうまく付き合っていけるのか。本書はそうしたことを考え、また実践する上で、とても参考になる本だと思う。