1章デリバティブを一言で言うと
1 デリバティブ 言葉の由来
・Derive(〜に由来する)が語源。
・例えば、チーズは牛乳の、オレンジジュースはオレンジのデリバティブであるように、原材料と加工品の関係にちかい。
・その為、両者の価格の変動には関係性があり、原油が上がれば、ガソリン、灯油、重油、軽油も上がる。
2因果関係か相関関係か
・「お金持ち=高い車を保有している」は因果関係ではなく、相関関係。仮に宇宙人が預金残高と所有車の価格を単なる数字としてみた場合、金持ちになる為には高い車を乗ればよいと考える可能性はあるが、実態は異なる。あくまで、平均的にその傾向があるだけであり、このような関係を相関関係と呼ぶ。
・デリバティブは価格の間に明らかな因果関係があるものを扱う。
4デリバティブの種類
・デリバティブは1先物/先渡、2オプション、3スワップの3誌類が基本。
・先物は将来の取引価格を今決める取引であり、為替予約等が該当する。
・オプションは取引をするかしないかの決める権利であり、オプションそのものに価額がつく。
・スワップは割愛。
2章 デリバティブを知る為の禁輸市場の知識
2上場取引と店頭取引
・取引には上場取引と店頭取引の2種類がある。
・上場取引での証券会社の役割はブローカーであり、注文の当事者ではなく、当事者である取引所に注文を取り次ぐことである。証券会社は取引が完了した時点で、手数料を稼ぐ。その為商品の価格は需要と供給のバランスから形成される。
・店頭取引は証券会社が相手方になる取引であり、証券が国債や社債を購入し、在庫の内から、顧客に販売をする。その為、価格は証券会社の言い値であり、上場取引とは異なり、購入代金は証券会社が受け取る。当事者である為、手数料は発生せず、安く買って高く売る。その他にも外為取引は銀行を相手方とした店頭取引である。
・デリバティブには上場取引、店頭取引双方があり、上場取引では個別性を減らした汎用的なものが取り扱われている。
3株価と指数
・日経平均は225銘柄の株価の平均値。一方でTOPIXは加重平均型の日本の株価を指す。
5中央銀行と金融政策
・一般的に金余りであれば、金利は下がり、金不足であれば金利は上がる。その為、日銀が金利を操作する場合、金利を下げたい時は国債を金融機関から購入し、お金を市場に供給する一方で、金利を上げたいときは国債を売却し、お金を市場から吸い上げる。
9コモディティ
・日本では大阪の堂島取引所/大阪取引所でコモディティが上場している。グローバルではリフィニティヴ-コア-コモディティ-CRBインデックス(CRB指数)という指数が天然ガスや原油等19品目の先物価格を示している。
11 レポとリバース
・担保があっても、債務者、担保設定者が法的整理に入ると担保の処分が自由にできなくなる為、担保を取得したからと言って100%安全な訳ではない。
・「リスクがほぼない」「リスクの程度が小さい」というのは雲泥の差がある。何故なら、程度を常に監視する必要に迫られる為。
・そこで、リスクが非常に低い国債を担保に資金の貸し借りを行うレポ/リバース取引が盛んに行われている。
・金を借りる側から見たものをレポ、貸す側をリバースと呼ぶ。
・一般的には国債を在庫として抱える証券会社や資金効率性を高めたいヘッジファンドがレポ取引を実施する。
12証券の貸し借り
・空売りをする為には、対象証券を借りる必要がある。貸し手は手数料がもらえる。
3章オプション取引とその仕組み
3 コール/プットオプション
・買う権利をコールオプション、売る権利をプットオプションと呼ぶ。
7オプションの行使期間
・行使期間によってヨーロピアン型/アメリカン型/バミューダ型の3種類に別れる。
・ヨーロピアン型は行使日にしか権利を行使できない形式。
・アメリカン型は行使期間中であればいつでも行使できる形式。
・バミューダ型は行使期間の毎週末や、毎月末など行使期間の特定のタイミングで行使できる形式。
8オプション価格の決まり方
・オプションそのものに価格が存在する。オプション価格は現物の価格の変動につれて変動する為、そのつれ方を理解する必要がある。
・一般的に現物の価格が上昇すれば、儲けが出る確率が上がることからコールのオプション料も増加する。一方で、価額が下落すれば、儲けが出る可能性が低まることから、コールのオプション料も下落する。
9オプション価格の決まり方(2)
・ボラティリティとは変化率の標準偏差を示す。
・ボラティリティが上がると、オプション価格は上がる。何故ならボラが大きくなると、株価の変動が大きくなり、行使期日にストライクプライスになる可能性が高まるからだ。反対にボラが下がると、変動幅が小さくなり、ストライクプライスになる可能性が低まる為、オプション価格も低下する。
・同様の考えで期間が長くなると、オプション価格は高くなる。重複するが、期間が長ければ、不確実性が高まり、ボラが激しくなる為、オプション価格は高まる。
10 ザ・マネーとは何か?
・ザ・マネーとは現在の市場価格とストライクプライスが等しい状態を示す。一般的にはアット・ザ・マネーと呼ばれることが多い。
・これに対して権利を仮にその時点で行使したとすると利益の出る状態にあることをイン・ザ・マネーと呼ぶ。この反対に利益の出ない状態をアウト・ザ・マネーと呼ぶ。
・イン・ザ・マネーのうち、今仮に行使した場合得られる利益のことを本源的価値と言う。
11 オプションとレバレッジ
・オプションには常にレバレッジ効果がある。例えば、ある株を1万で100株を3ヶ月後に購入できるオプションを10万円で取得したとする。3ヶ月後に1万500円になったと場合5万円の利益を得る。このケースにおいては株価は5%しか上昇していないのにも関わらず 10万円で購入したオプション取引から5万円の利益(利回り50%)となっており、レバレッジ効果が働いていると言える。
12 経路依存型オプション
・近年、経路依存型と呼ばれるオプション形式が増えている。
・経路依存型の内、ノックインはある条件が整った時のみオプションが出現する。例えば、3ヶ月後にとある株を1万円で購入できる権利を購入したとして、「期間中に一度でも株価が9,000円を下回った時」だけ出現するタイプの形式である。この場合仮に3ヶ月後に1万円を超していたとしても、期間中に常に1万円台で推移していた場合には利益を得ることができない。このケースにおいて9,000円をバリア価格と呼ぶ。
・反対にある条件が揃うとオプションが消滅する形式をノックアウトと呼ぶ。先ほどの例で述べると「期間中に一度でも11,000円を上回る」とオプションがなくなる。
13 オプション価格と取引所
・オプションは店頭取引だけでなく、取引所に上場されているものもある。
14 インプライド・ボラティリティ
・オプションの理論価格を決める大きな要素はボラティリティ。
・過去のデータに基づいたボラは、未来が過去を繰り返す保証はない為、参考にならない。
・実際に大切なのは今後、価格がどのようなボラティリティで推移するかどうか。実際には誰もオプションの理論価格はわからず、あくまで成立したオプション取引から逆算して算出している。これをインプライド・ボラティリティと呼ぶ。これを指数化したものとしてボラティリティ・インデックスなどがある。
第4章 スワップ取引とその仕組み
1 スワップの考え方
・定義は1つのルールに基づいた金額と別のルールに基づいた金額を定期的に一定期間交換し続ける取引を指す。
・一般的には金利スワップと通貨スワップに分けられるが、通貨スワップは交換される金額が異なるキャッシュフローを交換する取引を指し、片方は円建/片方は米ドル建といった取引が継続される。
4 オーバーナイト・インデックス・スワップ
・OIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)とは固定金利と変動金利の翌日物レートを交換するスワップ取引。日本では変動金利として一定期間の無担保コール翌日物レートと交換する取引が行われています。変動金利は毎営業日複利、つまり利息分を組み入れて、毎日計算する。
8通貨ベーシススワップ
・期間や通貨などが異なる変動金利を交換するスワップ取引。同じ通貨同士でも期間や市場が異なる金利を交換したり、円とドルなど異なる通貨の銀行間取引金利を交換したりします。
・世の中全般的に円調達の方がドル調達より、相対的に容易であるとされている。
9一般的な通貨スワップ
・通貨スワップとは、取引の当事者間で合意したある期間での異なる通貨の金利と元本を交換する取引である。金利は変動金利・固定金利のいずれでもよいが、異なる通貨の変動金利どうしの交換がもっとも多い。主に海外資金を調達する際に用いられる。例えば、日本企業がUSドルを必要としているとする。日本企業が米国の銀行でUSドルを調達するかUSドル建債券を発行しようとすると、米国からは海外企業となるため信用リスクなどから金利が高くなる。同様に米国企業が日本円を必要とする場合、日本で円を調達しようとすると金利が高くなる。このとき両者で日本円とUSドルの通貨スワップを用いる。日本企業は日本で米国企業よりも安い金利で日本円を調達し、米国企業は米国で日本企業よりも安い金利でUSドルを調達する。両者は調達した資金(元本)と後の金利支払いを交換する。その結果、両者は自ら外貨を調達するよりも安い金利でそれぞれUSドル・日本円を調達することができる。
・通貨スワップとは通貨を対象とするデリバティブ(金融派生商品)取引のひとつで、異なる通貨間の金利と元本を交換する(スワップする)取引を、「通貨スワップ」といいます。たとえば、ドルでの支払いのためドル建て社債を発行して、通貨スワップで円に換えれば利払いや元本償還が円になるため、将来の支払いが円貨で確定します。通常は、取引の開始時と終了時に元本の交換が行われますが、元本の交換をせずに金利部分だけを交換する通貨スワップもあり、「クーポン・スワップ」と呼ばれています。
・異なる通貨間での固定金利のスワップの仕組みを説明する。ドル円を例にとると、まずは円の固定金利と変動金利をスワップする。その後、円の変動金利とドルの変動金利をベーシススワップを用いて、スワップし、最後にドルの変動金利と固定金利をスワップする。
11 フロアとキャップ
・フロアとはオプション料を払い金利のボトムラインを設定しできる取引である。例えば、3ヶ月タイボーに連動した預金をしているお客様がいたとして、0.1%のフロア取引をすると、3ヶ月タイボーが0.05%になったとしても、0.1%の利息は確保できる。
・キャップ取引はフロアの反対でオプション料を払い、金利の上限を設定できる取引である。例えば3ヶ月タイボー+SP0.5%の変動金利で資金調達をしたお客様がいたとして、0.3%のキャップ取引をすると3ヶ月タイボーが0.4%まで上昇したとしても0.3+0.5の出来上がり0.8%の利息の支払いで済む。
12 フォワード・スタートのスワップ
・フォワード・スタートのスワップとは、金利スワップの先物、つまり先日付を指す。通常の金利スワップを取引日に締結するとその2営業日後が開始日となるが、フォワード・スタートのスワップの場合は1年後等先日付のスタートを今決めることができる。計算方法は実は簡単で、例えば、2年後に5年間の金利スワップを結ぶフォワード・スタートのスワップを取引したとする。7年の金利スワップが0.2%,2年の金利スワップが0.1%だとすると(7*0.2-2*0.1)÷5=0.24%となる。
13 スワップション
・金利スワップのオプションをスワップションと呼ぶ。12の例題を改めて活用すると2年後に期間5年のスワップを取引できる権利を購入できるということになる。
5章 デリバティブを利用した金融商品
2信用取引
・信用取引においては株を買う代金を借りる為に、保証金を支払い、株価が下がれば、追加で保証金を入れる必要がある。
9コーラブル債
・満期日前に発行者が償還できる債券をコーラブル債と呼ぶ。
・例えば、満期まで10年、金利2%で半年に一度解約判定日のコーラブル債を発行したとする。この場合、半年後に発行体が債券を償還するのはどういうときか?答え発行者が有利な時だ。もう少し詳しく述べると、①市場金利(国債利回り等)が下がり、2%よりも低い金利で債券を発行できる時。②発行者の信用リスクが上がり、2%よりも低い金利で債券を発行できる時。
15コモデリ
・取引相手先の金融機関は、取引のリスクを転換する必要がある為、一般的には上場された先物があるコモディティを取り扱うケースが多い。
・世界的にドル建で価格が形成されたコモディティを取り扱う際は要注意。何故ならコモディティの価格変動に加え、ドル円相場も価格に影響する為。