夕刊ゲンダイに長く書評を書いてきた狐こと山村修の本を二冊読んだ。
うなる他なかった。
書評という文章のジャンルにおいて、ここまで想定外の表現を駆使した人を知らない。
書評というのは、本来批判的に書いてもよいし好意的に書いてもよいはずだが、山村の書評は常に肯定的な表現に満ちている。その肯定感が半
...続きを読む端なくすごい。このように讃美されたらどのような読者でもその書物を読みたくなるであろう。作品の「宝石」を引き出すということを地で言っている。
こうした山村の爪の垢でも煎じて飲まねばならぬという思いから、以下に彼の書評の特長を列挙してみる。
・ある作品を読んで思い出した別の作品(本とは限らず映画だったり芝居だったりする)を引いて対比させたり関係性を示す
・作品が書かれた年代について記し、その観点から時代背景を示す
・作家に見出される知性だったり、抒情性だったり、種々の特長を表現する
・不意を打たれた、めざましい、等自分の感情がどう動いたかを記す
・作品そのものが何に重きをおいているかを表現する
・作品そのものが扱っているテーマを作者がどのように料理しているかを独自の言い方で表現する
・自分がどのようにその作品を読んだかを記す