人間の弱さと現実を解像度高くえがく、イギリスのスモールタウンミステリー #ホワイトハートの殺人
■あらすじ
イギリスの海辺の町で殺人事件が発生した。殺害されたのは、ホワイトハートというパブの店主の男性で遺体には鹿の枝角が括り付けられた。地元の女性刑事二コラは、仲間の刑事たちと事件解決のため街中を奔走する。
■きっと読みたくなるレビュー
英国産の味わい深いミステリー、いわゆるスモールタウンものですね。ウェスト・ドーセットというイギリスの小さな町の住人たちがメインキャラクター、彼ら全員で作品を作り上げてるって感じ。
物語としてはシンプルで、刑事二コラが視点となり、殺人犯を見つけるために街中の人々に話を聞きに回るというもの。尋問パートにおいて、彼らは何かを隠したり、嘘をついたりすることになる。捜査を続けるうちに、少しずつ彼らの裏の顔が見えていき… といったところが読みどころですね。
特にスモールタウンといえば、えっ… といった人間関係が赤裸々になったりするんですよ。本作もご多分に漏れずなかなか強烈。やっぱり人間って弱い生き物だよなーと痛感するよ、自分も含めてだけどさ。
そして本作の主人公、刑事二コラに惹かれまくり。辛く大変な職業であり、現場では責任のある役割の彼女。結婚して妻となり、可愛い子どもも育てている母親でもある。決して順風満帆な人生を送っていない、うまくいかないことも、悩みもある。そう、警察官だからって決してスーパーマンではないんです。
例えば学生時代の友人の人生を垣間見てるような、そんな親近感があるんですよね。
特に彼女がこの田舎町に引っ越してエピソードは、身につまされるし、応援したくなっちゃう。
事件は二コラの捜査により、事件に関連する人間関係が明るみになっていく。そんな中、事件解決につながる重要なキャラクターが登場するのですが… この場面の緊張感やリアリティは肌で感じました。彼女は生命力があるんですよね、どうすれば生き延びられるかを知っているんです。ただ、決して望まれたことではないというところが切ないですよね。
果たして二コラは事件を解決できるのか、犯人は、背景には何があったのか。胸に重くのしかかる真相、そして最後までキッチリと英国スモールタウンミステリーを読ませてくれました。
■ぜっさん推しポイント
自分がミステリー書くなら、こんなのを書きたいなって思わせてくれる作品でしたね。
探偵役が地道に捜査していくストレートな筋立てですが、その背景には登場人物ひとりひとりに人間ドラマがあってさ。なにより「弱さ」の描き方が沁みるんですよね… そして事件解決後のエピソード部分(450頁)に、泣いちゃいました。
本作は日本人にあうと思うので、普段海外ミステリーを読まない人にこそ読んで欲しいです。