伊香亞紀の作品一覧
「伊香亞紀」の「エンドマークの続きから」「隣人さんは臆病者【デジタル特装版】」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「伊香亞紀」の「エンドマークの続きから」「隣人さんは臆病者【デジタル特装版】」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
おやおや。これは「隣人」という近すぎず遠すぎる距離から始まる、臆病な二人の恋がたまらなく愛おしい作品でした。
大学進学を機に一人暮らしを始めた佑月の隣へ引っ越してきた士門。第一印象こそ、女性との関係にも慣れていそうな遊び人のおにいさんなのですが、読み進めるほどに見えてくるのは、むしろ人の顔色を気にしてしまう優しい不器用さ。対する佑月も、しっかり者で周囲に迷惑をかけないよう頑張る一方、自分の弱さや苦しさを誰かに預けることが苦手な人物です。
そんな二人は、一見すると正反対。それなのに「人にどう思われるか」を気にしてしまうという共通点を持っている。この共通点が、二人の恋をとても繊細なものにしていると感じました。
特に印象的なのが、士門の「俺は佑月くんをただの隣人とは思ってないよ」という言葉。単なる告白めいた一言ではなく、それまで自分の気持ちより相手の反応を優先してきた士門が、初めて自分の感情を言葉にしたように感じられて胸に刺さります。
そして佑月の「俺、士門さんのこと好きなんだ」という心の動きも、その一言に至るまでの積み重ねがあるからこそ愛おしい。最初は距離を取っていた佑月が、士門の優しさや笑顔に少しずつ心を開き、「ただの隣人とは思ってないです」と伝えるまでの変化には、彼が抱えてきた心の枷が少しずつほどけていくような感覚があります。
個人的には、士門が「不安そうに小さくなるこの子を守りたい」と感じる場面も印象的でした。恋愛経験があるように見える士門が、佑月を前にして初めて自分でも扱いきれないほどの感情に戸惑う。そのギャップがとても魅力的です。
濡れ場も、勢いに任せた描写というより、二人が互いへの気持ちを確かめながら距離を縮めていく雰囲気が中心。だからこそ、キスや触れ合いのひとつひとつに「好き」という感情が滲んで見えます。
繊細な絵柄で表情の変化を丁寧に拾いながら、恋に臆病な二人が少しずつ相手を信じていく姿を描いたところが、本作の大きな魅力。かわいらしい「もだきゅん」だけではなく、人の顔色を気にしてしまうという弱さまで二人の個性として描いているからこそ、二人の恋を応援したくなる一冊でした。
Posted by ブクログ
「久我の家か瑞稀を選ぶんなら俺は瑞稀を選ぶ(颯太)」
Eros度★★★★★
おやおや。これは、別れたあとに残された「好き」の形を、こんなにも丁寧に掘り下げてくださるのですか……! 高校時代に恋人同士だった瑞稀と颯太。家柄も育った環境もまるで違う二人が惹かれ合い、ひそやかに育んできた恋が、周囲の事情によって引き裂かれてしまう。その過去を知っているからこそ、数年後の再会があまりにも苦しく、そして目を離せません。
何より胸に刺さるのが、瑞稀の「颯太のために身を引く」という選択です。自分が愛されていることを知っているからこそ、その愛を手放して相手の未来を守ろうとする。決して愛がなかったわけではなく、むしろ深く想っていたからこその自己犠牲なのですが、その優しさが結果的に二人の間へ大きな傷を残してしまうところが切ない。瑞稀自身も、過去の決断を抱えたまま、再会した颯太の変貌を目の当たりにすることになります。
そして颯太。高校時代の太陽のような明るさを知っているだけに、再会後の冷たさには衝撃を受けました。「瑞稀に復讐するために帰ってきた」と告げる彼の言葉の奥には、単純な怒りだけではなく、「愛されていたはずなのに捨てられた」という深い傷があるように感じられます。だからこそ、冷たく振る舞えば振る舞うほど、その奥に残っている瑞稀への執着や愛情が透けて見えるのがたまらない。
特に「久我の家か瑞稀を選ぶんなら俺は瑞稀を選ぶ」という颯太の言葉が印象的でした。彼がどれほど瑞稀を大切に想っていたのか、その一途さが伝わる一言であり、現在との落差を考えるほど胸を締めつけられます。
再会後の「セフレ」という関係も、この二人だからこそ単なる身体だけの関係には見えません。触れ合えば過去の感情まで呼び起こされてしまうような、未練と執着、戸惑いが交錯する距離感。濡れ場も過度に刺激を追うというより、身体と心が別々の方向を向いてしまう二人の複雑さが感じられる描き方で、関係性そのものに色気があります。
「恋を壊された男と、恋を捨てた男」。その言葉が、この作品の二人を本当に的確に表していると思います。どちらが悪いと簡単に決められないからこそ、二人が抱えてきた痛みや言えなかった本音の一つひとつが気になる。過去の甘さと現在の苦さ、その落差をじっくり味わえる、再会ものとして非常に心を揺さぶられる作品でした。