問題意識・背景
- 「やりたいことがない」「Will(意志・志向性)が見つからない」ことに悩む人は少なくない。
- 従来のキャリア設計は「未来から逆算して目標を立て、そこに向かって進む」手法が主流だが、不確実性の高い時代やライフステージの変化により、それが機能しづらい場合がある。
- 著者自身も、“Willなし人間™”として、ライフステージ変化(結婚・出産・育児など)とキャリアの不一致に苦しんできた経験を持つ。
本書の方向性・前提
- 「やりたいことを見つける」ことを前提としないキャリア戦略を提案。まずは「今・過去」に注目し、そこから選択肢を広げていくアプローチをとる。
- キーワードとして「ピース化」と「ラベリング」という手法を用い、自分の経験を細かく分解・整理し、キャリア資源として言語化することを重視。
主要章・構成と内容(概要)
1. やりたいことがない人が抱えるキャリアデザインの憂鬱
- やりたいことがない状態には複数のタイプがあり、それぞれに特徴と強みがあると示す。
2. 不確実な未来に頼らないキャリア戦略の考え方
- 将来前提ではなく「経験ベース」でキャリアを見る視点を持つ。
- 経験を“ピース(断片)”に分け、それに「ラベル(文脈や意味づけ)」をつけて再構成する。
3. 「取り柄がない?」ゼネラリストのキャリア戦略
- 専門性がなくて悩む人、ゼネラリスト傾向の人に対して、広く浅くという状態を資源と捉える視点を提案。
4. やりたいことが見つからないときのキャリアデザイン
- 自分の価値観・大事にしていることから「ありたい姿」を描くアプローチ。
- 過去経験から本質的な要素を取り出し、それを未来につなげる方法を具体化。
5. キャリア選択の基準を築く
- キャリアを判断するための軸やテーマを設ける。
- 会社のフェーズや自分の性格・特性を照らし合わせながら判断基準を整える。
6. ライフステージ変化への対応
- 結婚・出産・育児といった変化を見据えたキャリア戦略を扱う。
- 時短勤務の活用、残像問題(過去の働き方の延長線上で思考停止してしまうこと)への対処、ファミリーとキャリアの両立を考える視点。
7. 過去から未来をつくるための行動
- 職務経歴書の書き方、転職しない選択肢も含めた柔軟なキャリア戦略、経験の活かし方など、実践的なアクションプランを提示。
- 終章・おわりに
- 「選べる自分」「選ばれる自分」であることの意味を再確認し、キャリアを主体的に選び取る態度を強調。
本書の狙い・効果
- モヤモヤ・迷いを「選択」に変える視点を提供。
- キャリアに自信がない人、自分の強みが言語化できない人、ライフステージでキャリアの方向性に揺らぎがある人などに向けた実践的ガイド。
- 所与の経験を活かし、将来不確実な中でも主体的にキャリアの選択肢をつくる力を育てる。
留意点・限界
- 本書の戦略は、あくまで経験を起点とする手法であり、「未来志向の目標が既にはっきりある人」にとっては古典的キャリア設計の補完になるかもしれない。
- 実践には自己分析や情報収集、思考の反復・検証が必要(即効策ではない)という性質がある。
- 社会的・組織的制約(性別・年齢・転職回数などのバイアス)にも直面する可能性があり、それらを無視するわけにはいかないことも著者自身が指摘している。