講談社MRC編集部・編『嘘をついたのは、初めてだった』講談社文庫。
『黒猫を飼い始めた』に続く講談社MRCのショートストーリー・アンソロジーの第2弾。
29作品全てが『嘘をついたのは、初めてだった。』という1文で始まる競作ショートストーリー集。
『嘘をついたのは、初めてだった。』という1文は一人称表現であるが故に、私や僕といった一人称の短編ばかりが並び、嘘の対義である正直に言及しているのは、嘘に対する後ろめたさの現れか。
『黒猫を飼い始めた』の方が格段に面白かった。嘘をつくことに怯えているのか、構え過ぎたかのような捏ねくり回した作品が多く、面白くない短編ばかりだった。
須藤古都離『嘘の代償』。初読み作家。陸軍に入隊して5年目の主人公が吐いた嘘が切っ掛けで200人の仲間が殺され、主人公も40人を殺すことになった事件の顛末。
五十嵐律人『偽証の誓約』。自分の故郷の出身作家ということもあり、何作かは読んでいる。二重三重に張り巡らされた仕掛けが煩わしい。主人公の幼馴染みの茜音が飛び降り自殺を図り、主人公はそれを教唆したのは智也であると嘘をつく。
柿原朋哉『もうすぐ死ぬ』。初読み作家。なるほど。主人公は大昔のスプーン曲げの超能力少年みたいな感じだろうか。
西尾維新『生まれる前から倦まれてた』。何とも言えない初めての嘘。
小川一水『最後の一頭』。初読み作家。SF作家というのは知っていた。余り手が混み過ぎていて、つまらない。
櫛木理宇『みんなのいえ』。不気味さは伝わるがよく解らない話。
小野寺史宜『エミリン』。思わせぶりで、ブラックな結末。余り現実離れもせず、奇を衒わず、このくらいの話が良いかな。
赤川次郎『幸せな嘘』。あれ、読んだことがある短編だ。読書記録を遡れば、『あしたの寄り道』に収録されていたようだ。こういうこともあるので、読書記録は短編集であろうと可能な限り詳細を記述しておくべきなのだ。
柾木政宗『盛ってるで……』。初読み作家。結果的に嘘になるのだが、さらにその裏がある。と、ここまでに留めれば良いものをさ、らにその裏を書いたのは失敗だ。
高田崇史『女帝の憂鬱』。珍しい歴史物。しかも、嘘の対義が正直であることを宣言してから、物語を展開するあたりは良く解っていらっしゃる。
真下みこと『嘘日記』。初読み作家。小学生も大人には気を使うのだ。嘘をついたことで辻褄が合わなくなるのを防ぐための『嘘日記』とは面白い。捻る必要があっただろうか。
彩坂美月『終わる日/オワルヒ』。初読み作家。嘘をついての恋人の奪い合いという話。
芦沢央『二十五万分の一』。嘘をつくと消えてしまうという話。綺麗にまとめようとして、まとまっていない感じ。
大山誠一郎『偽りの証言』。ミステリーぽいタイトル。何故、こんな嘘をつく必要があるのか、意味不明。
青羽悠『バウンド・オーバーラップ』。初読み作家。作家の創作は嘘の一種なのか。少し回りくどい感じ。
阿部暁子『悲雨』。初読み作家。意味がよく解らないのは自分の読解力不足なのだろうか。
川村拓哉『オタマジャクシの雨』。初読み作家。嘘をついても、それが真実になってしまう少年の話。ラストのオチがよく解らない。
阿月まひる『村上』。初読み作家。そもそも同級生に対して推しという意味が解らない。
吉川トリコ『サロメの移り香』。なるほど上手く騙された。百合だったのか。
矢部崇『嘘コントパンケーキワイヤドテレフォンスーサイドゴーホーム』。初読み作家。やたらと長いタイトルだ。内容はよく解らない。
夏川草介『死神の微笑』。珍しく主人公は一人称ではなかったし、これはなかなか良かった。こういう短編が読みたかったのだ。
波木銅『大内くんの食卓』。初読み作家。これも何だかよく解らない短編だった。
潮谷験『透明人間』。初読み作家。これまたよく解らない。作家の方はどうだと言わんばかりにミステリーを書いているようなのだが。
竹本健治『口にもできないようなつまらない願い事』。まるっきり『猿の手』ではないか。
佐野徹夜『おやすみ、ずっとそばにいるね』。初読み作家。村上春樹の『風の歌を聴け』からの抜擢の中にある嘘とはどれか。
長谷敏司『スリーピング』。初読み作家。これもよく解らん。
篠原美季『それでも、やっぱり地球はまわる』。初読み作家。よく解らん。
献鹿狸太朗『替え玉』初読み作家。よく解らん。
三津田信三『探検の思い出』。よく解らん。
本体価格660円
★★★