関東圏以外の人はピンと来ないかもしれないけど、テレビ東京(12ch)はかなり独特な放送局だ。他の民放が華やかな番組で視聴率稼ぎにしのぎを削るゴールデンタイムに旅番組をしてるかと思いきや、どこの局もニュースをやっている夕方6時に呑気にアニメを放送したりしている。日経新聞色がかなり濃く、朝昼晩と株式ニュ
...続きを読むースをやり、夜9時以降は硬派な経済もののドキュメンタリーを放送。11時から放送されてい経済ニュース「ワールドビジネス・サテライト」はサラリーマン世代の支持を集めてる。深夜には今や伝説の「ギルガメッシュナイト」などのエロ番組もやってた(最近はかなりおとなしくなっていまったけれど)。まあ、早く言えばちょっと変わり者の、でも/だからこそそんな「テレ東」の番組には固定ファンが多い。
前置きが長くなってしまった。この本はテレ東の前身、東京12チャンネルの時代から番組作りをしてきた著者による回顧録。それはつまりテレ東の歴史そのものでもあるわけで、何故テレ東があれほどまで独自な番組作りができるのかという種明かしでもある。抗議殺到だった元祖お色気番組、グルメ番組のような「新規市場」の開拓、苦肉の策だった12時間ドラマ誕生秘話などなど。当時を知らない僕らの世代でも読めるテレビ局の舞台裏が次々と出てくる。放送禁止歌をめぐるタブーについての部分や、まったく意図しない表現で差別を助長すると抗議を受けた件、米国のドラマを放送したら中東の大使から「プロパガンダだ」と抗議を受けた話など、考えさせられる部分もあり、その内容は単なる回顧話に留まらない。いやぁ、良いモノを読ませていただきました。
著者は独自な番組に挑戦する社風を「番外地精神」と言い表しているけれども、そんなテレ東も視聴率の順位こそ最下位ではあるものの他局と勝負にならないとまではいえない水準になり「番外地」とは言えなくなってきてる。番外地時代を知らない世代が、今後も小回りのきいた独自番組を貫くことが出来るか、民放路線を追従するか。少なくとも、固定ファンが付いている番組を大事にする姿勢がある限り、テレ東がその色を失うことはないだろう。インターネットに押されテレビが地盤沈下を起こしている今、その独自路線が見直される時が必ずやくるんじゃないかと密かに願っているんだが、、、