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  • 韓国、男子――その困難さの感情史
    4.1
    1巻3,300円 (税込)
    「男」は理不尽な観念だ。ジェンダー間の格差・分断・差別の歴史の中で、男性は「男」であるがゆえに抑圧する主体だった。他方、「男なら…」という期待は、当事者に「失敗と挫折でがんじがらめ」の内的経験をもたらしてもきた。日本においても然り。だが韓国では、この問題を感情史的アプローチで探究する試みがいち早く登場した。韓国ドラマの男たちが“おんな子どもを守る強い男”の類型を引きずり続けるのはなぜだろう? フェミニズムへの関心の高い国で、なぜ若者がバックラッシュの政策を支持するのか? その背景にある男性性の問題、すなわち「韓国男子」のこじれの源を、本書は近現代史上の事象や流行語を手がかりに辿る。「男子(ナムジャ)」の苦難や煩悶が、非‐男性への抑圧と表裏をなしながら、いかにして社会を構成する人々全体の生きづらさに与ってきたか。朝鮮王朝時代、植民地化、南北分断と軍政、民主化、新自由主義化といった局面に応じて、男性性をめぐる新たな困難と、そこから噴き出る抑圧と暴力の構図が繰り返し出現した。終盤では、兵役が生む軋轢や、オンラインで拡散する苛烈なミソジニーとバックラッシュに揺れる2000年以降の社会の様相を見る。「このような作業が必要な理由は、まず理解するためだ。」今日の韓国の人々の心性を理解するための重要な知見と示唆に溢れた論考であるとともに、日本における同じ問題を合わせ鏡で見るような書だ。

ユーザーレビュー

  • 韓国、男子――その困難さの感情史

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    ネタバレ

    歴史を追って韓国の男性性がどう形作られてきたかを概観することができる良著。

    朝鮮王朝時代の両班である士大夫は、官職を出すため、家族をかえりみず、学問に励むことが美徳とされ、学者が武者を見下してきた文化、何もしないため、女性が家計を支え家事労働も全て請け負ってきた、というところで神戸のおじいちゃんとおばあちゃんを思い出した。

    朝鮮王朝時代のヘゲモニックな男性性は家族や国を守ったりすることではなく、徹底した無能力ぶり、とは著者の言葉。生産、再生産は女性と下層身分に押し付け、自分たちだけで名誉と権力を分かち合ってきた、らしい。


    しかしこのような男性性のあり方は、近代に入り西欧列強や日本の侵略

    0
    2025年05月01日
  • 韓国、男子――その困難さの感情史

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    ネタバレ

    男性でこういう考察が出来るのがすごい。ぜひ武田砂鉄さんと日韓男性問題について論じて欲しい…

    家父長制の名残があるところは日本も韓国も似てるなと思っていたけど、背景にある歴史がまったく違うことが本書を通して実感できた。
    巻末の解説にもあるけど、韓国の人たちにとっての兵役や戦争を知ることで、韓国の作品のなかに出てくる家族のあり方やK-POPの文化的背景を理解する手がかりになる一冊。

    ミラーリングのミラーリングを試みようとした男性たちが「韓国女子とセックスするのをやめよう!」という勇ましい主張をしたが、これほど女性たちから大歓迎されたものもなかった、に大ウケ。

    0
    2025年04月26日
  • 韓国、男子――その困難さの感情史

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    “「男子(ナムジャ)」はつらいよ でもその傍で みんながもっと生きづらいよ” という帯文が端的で秀逸だと思う。女性として日本人として揺さぶられながら複雑な思いで読んだ。男性が自らの男性性について内省して考察してくれるこういう本をもっと読みたい。



    “韓国男子として30代半ばを迎えた自分自身の直面している悩みも作業の動機だった。その悩みとは、誰かを抑圧することなしにひとりの主体として、また、他人と連帯しケアを行う者として生きていけるのかという問いである。思うに、男というアイデンティティを突き詰めることなしには、その問いへの答えは見つからないはずなのだ。”(p.11)


    “異性愛に基づく「正

    0
    2025年02月06日
  • 韓国、男子――その困難さの感情史

    Posted by ブクログ

    これは勉強になる。特に女性嫌悪しながらも
    理想の(実在しない)女性を求め、それに当てはまらなければ叩くというやり方を考えるとなんとも言えない気分になる。

    0
    2025年08月26日
  • 韓国、男子――その困難さの感情史

    Posted by ブクログ

    現在の韓国におけるフェミニズムと、それに対する男性からのバックラッシュの歴史と現状について述べた本。フェミニズムの立場からの本なので、ある程度のバイアスがかかっていると想像されるが、正直、韓国社会との接点をあまり多く持たない私には、何が真実なのか、判断する術は無い。
    しかし、現代韓国社会の一面として、このような問題が提起されていることを知っておく事は重要なことだと思われる。
    なお、男性である私としては、読み通すのに、それなりの苦痛があった事を告白しておく。

    0
    2025年07月10日

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