神戸の実家から帰宅する途中の本屋さんで見つけた本です、入り口近くに平積みになっていて気づきました。歴史好きの私ですが「数学」に限定した歴史についての本は初めてでした。
思いおこすと最終的に理系に進んだ私は、数学は不得意ではなかったと思いますが、好きというイメージがありません。答えが明確に出てくるのでゲームをしている感覚でした。大学に言って数学の授業を受けた時に、数学とは哲学に近いことを悟り、やはり理系と言っても私は「工学系」なのだなと思いました。
この本には、経済・政治・戦争に影響を及ぼしてきた様々な数学について解説されていますが、時代を最近になるにつれて哲学的になってきています。そのような難しい内容をわかりやすく解説してくれて著者の Fukusukeさんには感謝します。
以下は気になったポイントです。
・アルキメデスが発明した戦艦への武器、1)アルキメデスの鉤爪、2)投石器、3)熱光線(p20)アルキメデスを殺害したローマ兵は、将軍マルケルスにより、鞭打ち・皮剥の刑を受けた、生きたまま連れ去るように命じていためである(p26)
・6世紀以降、欧州は数学をはじめてとする自然科学を軽んじる暗黒時代に突入、この期間の数学の発展を担ったのは、イスラムである、アル・フワーリスミーは、完成されたインドの数学(現在のアラビア数字)をアラビア中に広めた(p34)フィレンツェで1299年から簿記でアラビア数字を使うことが禁止された、印刷技術が発明されていなかったから、アラビア数字が定まっておらず、誤魔化されることが多くあったから、下書き・検算ではアラビア数字、正式書類ではローマ数字を使っていた(p39)
・単式簿記は、お金の増減を記録するもの、複式簿記は、お金の増減の原因は何か、それによって手持ちの現金、預金口座など、どこのお金が増減したかを記録する(p48)年利何%で元利合計が元本の2倍になるまでに何年かかるか、72を利子率で割ると、その結果得られた年数で元本が2倍になる(p50)
・1589年に、カトリック・プロテスタントの両宗派の平和的解決を願っていた、フランス国王アンリ3世が暗殺され、プロテスタントであるアンリ4世が王位継承者となった、これに介入しようとしたのが、カトリック教徒のスペイン・フェリペ2世である、そのためスペインとフランスは宗教戦争にまで発展した(p55)フランスでは1598年アンリ4世が「ナントの勅令」を発布し信仰の自由が認められていたが、ルイ14世により撤廃された(p65)
・旧来の保険制度の2つの欠陥は、1)若者も高齢者も同額保険料、2)死亡率の誤差(感染症などにより変わる)がある(p68)
・限界効用逓減の法則、最初の消費単位が最も高い満足度を示し、消費量の増加に従って追加の満足度が減少する、最初の一杯目が美味しい(p77)対数的な感覚で、対数では例えば「お小遣い」が2倍になった時の「累計満足度」の増え方が等しい、社会人の給料が20万から40万に上がれば、小学生のお小遣い「1000→2000円」と同等となる(p89)
・ナイチンゲールは、それまでの場当たり的な病院運営から、看護婦たちの仕事内容を整理、秩序だった運営へと変化させた、この変動を細かく記録していた、60%以上の死亡率を半年後には2%身まで下げた(p128)
・平均値と中央値に大きな差がある理由は、正規分布をしておらず、左(低い値)に寄った分布になっているから(p137)
・ランチェスター法則をまとめると、一次法則:接近戦では戦闘力は兵力数に比例、二次法則:遠隔戦では兵力数の2乗に比例する(p152)
・ベンフォードは自然界における様々な数値を調べ、人口統計・河川の長さ・物理定数など人為的に操作できないデータの多くが自身の法則に従うと述べた、逆に、郵便番号やナンバープレートのように人工的に作られたり、身長や体重のように数値範囲が限定されているデータには適用されない(p165)アメリカの選挙、ミルウォーキー・シカゴ地区での得票数において、バイデン・ハリスの得票数は、ベンフォード法則からかけ離れていた、この訴えを受けて、行政や司法が動く事態となったが、結果は覆らなかった(p170)
・アメリカとソ連の2つの大国が熱を帯びない冷戦の状態が続いた背景には、ゲーム理論によける「ナッシュ均衡」があった(p205)ナッシュ均衡の状況を言い換えると「自分だけが戦略を変えると損をする均衡状況」である(p210)アメリカ軍がナッシュ均衡の概念を知り、「核開発を維持しつつ攻撃はしない」という戦略を選択し続けた(p213)
2025年6月11日読破
2025年6月11日作成