白石朗・訳の作品一覧
「白石朗・訳」の「コロラド・キッド 他二篇」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「白石朗・訳」の「コロラド・キッド 他二篇」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
Posted by ブクログ
日本のキングファンにとって幻の作品とも言える二作がついに一般に流通!
これだけでも嬉しいのに新作も一篇入っていて控えめに言って特別な一冊でしょう。
ちょうど本なんて読む余裕がなかった時期で、限定的な出版であったことを後から知って本当にショックだった。その後何年もふとした時に思い出しては悲しい思いをしてたけど、ついに読むことができて感無量。内容や出来とかもう関係ないレベル。
そんな思い入れをなんとか排除しての感想は、キング作の中ではまあまあってところかな。
キング中編はハイレベルのものが多いことを考えるとやや物足りない。
浮かびゆく男
この作品で一番のポイントはキャッスルロックが舞台であること。
よく知った地名や人名が登場するばかりか、なんと観光気分も味わえてしまう。久しぶりに里帰りした気分になれる。全力でファン向けサービスでしょう。
内容自体は綺麗にまとまっていて読後感も素晴らしい。パノラマ島綺譚を想起させる場面があった。
コロラド・キッド
実際の理由は知らないけど邦訳本に入らなかったのもわかるような気がする内容だった。
これは好き嫌いが別れる。序盤こそ面食らったものの、こういうものなんだと飲み込めればあとはキングの運転で連れて行ってもらうだけ。
本作だけ本人のあとがきが付いてるのが笑える。ちょっと言い訳がましいよね。優しいんだよね。もっと突き放してくれてもいいんだけどな。
ライディング・ザ・ブレット
三作の中で一番好き。これぞキング。
王道ホラーの要素てんこ盛りでどこを取っても不気味さが漂う。はっきりと見えてくるような気がする見事なホラー的風景描写。
これを限られた人がダウンロードでしか読めなかったというのが悔しい。嫉妬。
もっとゲス路線に振ってるほうが好みだけど、これはこれで哲学的で深みがあって満足度が高い。
Posted by ブクログ
「浮かびゆく男」2018年、「コロラド・キッド」2005年、「ライディング・ザ・ブレット」2000年。
キングの中編小説3本を収めた作品集で、一番長い「コロラド・キッド」は邦訳で200ページもあり、日本では普通に長編小説で通る長さ。一番短い「ライディング・ザ・ブレット」でさえ80ページほどある。
この3編を私が5段階で評価するとしたら、順に5点満点、3点、4点。
とにかく巻頭の「浮かびゆく男」が素晴らしい。
見た目や体積が変わらないのに体重がどんどん減ってゆく男性の、不条理なホラーSFで、合計20キログラムのダンベルを持って体重計に乗っても体重の数値は変わらず、人を抱きかかえてみるとその人は宇宙の無重力空間にかるかのように髪を逆立ててふわりと浮いてしまうというから、恐らく、反重力的な現象なのだろう。
しかし、この作品はなんにも怖くないのである。それは、渦中の男スコットは将来に待ち構えているに違いない死を全然おそれていないからだ。楽観視しているのではなく、死ぬなら死ぬでしかたがない、と静かな諦観の境地にあるのだ。
むしろこの作品は主人公の死へと向かいながらも明るく、ヒューマニスティックなファンタジーを描き出し、極めて感動的な作品となっている。
舞台はキングお気に入りの架空の田舎街、キャッスルロックなのだが、そこの住民はどうやら古びた保守主義者で共和党支持者が大半であるらしい。
レズビアンで同性婚をしたと公言してはばからない女性2人が街にやって来てレストランを構えると、古い頭の住民たちは彼女らを嫌って迫害する。アメリカはジェンダー問題に関してすこぶる進取的というイメージがあったが、田舎町なんかではやはりこうした雰囲気なのかもしれない。この部分、ちょうど第2次トランプ政権がいきなり「多様性」排除の大統領令を発し始めた現在と見比べて、ははあ、アメリカでもこの手の人たちが血気盛んに粋がってきているんだなあ、と感慨深い。ちなみに本作発表年は第1次トランプ政権の時代。
体重の減る男スコットが彼女らを一生懸命救ってやり、そのことで彼女らもようやく心を開き、街の人びとも彼女らの存在を認めるようになる。素晴らしいメルヘンではないか。
仲間たちの温かな支えに囲まれながら、スコットは体重1キロを切って死んでゆくのだが、スコット自身の静かな境地と友人たちの温かい友情のおかげで、むしろハッピーエンドであるかのような輝きを伴いながら、物語は終わる。
敢行時すでに71歳に至ったキングは、「恐怖の大王」から豊かさを増して、このように温かいファンタジーを書いてのけた。私はこの作品を最高に素晴らしいものと感じたし、この1作のためだけにも、これはいい本だよと人に勧めたくなる。
が、次の表題作「コロラド・キッド」はホラーならぬミステリーで、しかもあまり面白くない。キングはある時期からミステリも書くようになったのだが、私は実は今まであまり興味がなくて読んでいなかった。近いうちにキングのミステリーも読んでおきたいとは思っているが、本作はどうも好きになれなかった。はぐらかされたような感じが強すぎた。
最後の「ライディング・ザ・ブレット」は正統派の、アイディア自体は結構「ふつう」なホラー。本書の中では唯一「怖さ」のある作品。出来はまあまあといったところか。