劇団四季ミュージカル「ウィキッド」を大阪四季劇場で観て来ました!
前回観たのは14年くらい前。色々忘れていた場面や記憶違いの場面も。
「ウィキッド」は「邪悪な」という意味で、アメリカ人なら誰でも知って「オズの魔法使い」の「邪悪な」な西の魔女がどうして悪い魔女になったのか。元々は北の良い魔女グリンダと西の悪い魔女エルファバは魔法学校の同級生で…というところからのお話。
全身緑色で生まれ、見た目だけで「邪悪なもの」としてみんなから嫌われていたエルファバと美しくて愛想が良くて皆んなの人気者のグリンダ。正反対でどうしても打ち解けない二人だったが、ある日グリンダがエルファバにプレゼントした「ダサい」はずの帽子をエルファバが喜んでダンスパーティーに被ってきたことから友情が芽生える。
その頃、魔法学校には人間の言葉の話せるヤギの先生がいたが、ある時人間の言葉を話せなくなり、「動物は喋るな」とどこかから圧力をかけられ、何者かに連れ去られてしまった。聞けば、昔は人間のことばを喋る動物の先生が沢山いたらしいのだがみんな追い出されたのだという。
魔法の才能があるエルファバにオズの王様が会いたいと言われていると聞いて、エルファバは喜び勇んでエメラルドシティに行った。そして、「動物たちが虐げられている窮状」を訴えようとするのだが、逆に動物狩りをしているのは王様のしわざだと知る。人それぞれ不平不満がある中で、「平和」を保つには「共通の敵」が必要だから動物たちを喋れなくしているとのこと。正義感に満ちたエルファバは王と戦おうとしたために、「邪悪な」魔女の道を選ばざるを得なくなった。グリンダはエルファバを見捨てたくはなかったが、エルファバに「皆んなに愛されるグリンダのままでいて」と頼まれ、「北の良い魔女」となった。
「オズの魔法使い」はあらすじしか知らないが一世紀くらい前に書かれ、子供たちに夢を与えた(?)物語の時代から進化し、「世界の正義」としてリードしているアメリカをアイロニカルに見ているように思う。アメリカでなくとも戦争の時は「共通の敵」に対する「正義」が作られ、歴史は「勝者」によって書かれていくことを語っている深い話だ。
グリンダが思いをよせるフィエロはエルファバのことを愛している。何故かというと「グリンダは皆んなに愛されるけれど、エルファバは誰からも愛されなくても強く生きている」からだった。「いつも笑顔で皆んなを幸せにする」ことはいつの何処の社会でも善だ。だけど、いつも笑顔でいられるというのは社会への疑問や怒りを持たなかったり表さなかったりすることかもしれない。
主人公の独唱がダイナミックで、アメリカらしい華やかな舞台だけれど、根拠のないアメリカンドリームやハッピーエンドではなく、ハッピーの「裏」を描いている秀作だと思う。
「オズの魔法使い」に繋がる「東の悪い魔女」や「かかし」や「ブリキの人形」や「ライオン」の登場も面白かった。
2回めの全国公演ですっかり名作として評判高いこの作品。エルファバが登場しただけで、観客席から拍手だった。舞台装置も衣装も楽曲も秀逸。
「大空高く 舞い上がるの
飛んでいくのよ 何処までも」
「誰にも止められない 羽ばたこう
大空へ 恐れはしないわ」
エルファバ「自由を求めて」より
本日のメインキャスト
エルファバ 小林美沙希
グリンダ 山本紗衣
フィエロ 武藤洸次