自己革新力とプロセス・コンサルテーション型による支援
ある中小企業が業務上の課題を抱えていたとします。それが生産工程の問題や制度の問題などの、解決のための正解があるものならば、ハイフェッツが言う「技術的問題」に該当します。そして、その「技術的問題」の解決策を、その組織の中の人たちが知らない(できない)なら、外部者が解決策を教える(実行する)ことで問題を解決することができます。一方で、その中小企業が抱える課題が、事業が行き詰まっている、社長が過去の成功から抜け出せない、社員の意識が変わらない、などの「適応課題」である場合、その組織の中の人々が自らの課題に気づき、自分たちで解決していく必要があり、外部者は解決策を与えるのではなく、その過程を伴走しながら支援する必要があります。このような、外部者が組織をどのように支援していくかについて、組織開発の分野で提唱されたのが、本書でも紹介されている、シャインの「支援の3つのモード(型)」の理論です。
本書のこちらで書かれていることと重複しますが、シャインは、支援には
①専門家型、@医師ー患者型、③プロセス・コンサルテーション型、の3つがあると指摘しました。この理論はシャインが1969年に提唱したものであり、組織開発の中では古くからあり、今でも重要だとされている理論です。
①専門家型は、解決策を提供する支援のありようなので、中小企業が抱えている課題が「技術的問題」の場合は、その解決に寄与できます。しかし、シャインが指摘していることですが、専門家型が機能するのは、クライアントが自分たちの課題が何であるかを認識していて、解決策がその課題の解決に役立つことを理解している場合です。そして、多くの場合は、組織が抱える課題をクライアントは理解していない場合が多いことをシャインは示唆しています。また、組織開発においてよく言われる言葉として、「課題設定は課題解決に先んずる」「課題設定は課題解決よりも難しい」というものがあります。課題設定、つまり、クライアントが自らの課題に気づくこと、は簡単ではありません(特に適応課題である場合はなおさらです)。
クライアントが自分たちの組織の課題を理解できる、つまり、クライアントによる課題設定が可能になるのは、②医師ー患者型と③プロセス・コンサルテーション型です。医師ー患者型による支援では、医者が患者に対して検査をして病状を診断するように、外部者がクライアント組織に対して調査を行い、その診断結果を報告し、処方箋として解決策を提案します。人が病気のときに、本当に治そうと思っているなら、診断結果を受け止めて処方された薬を飲みますよね。しかし、たとえばメタボ症状などのように、日常生活を送ることができている場合は、医者から「食事と飲酒を減らして、運動をしてください」と言われても、なかなか実行しないことも多いと思われます。
これと同じように、組織においても、この医師ー患者型の限界として、クライアントが診断結果を受け入れないこと、クライアントが与えられた解決策を実行しないこと、をシャインは指摘しています。自分たちの組織の課題について、外部者から与えられるのではなく、クライアントが自ら気づく過程が重要なのです。そしてシャインは、自ら課題に気づき、自分たちで課題を解決していく力が組織に身に付けば、その課題は再燃しないし、今後生じる課題にも持続的に対処できるようになる、と言っています。つまり、組織が課題設定と課題解決の力を身に付けることが重要であり、これが組織の自己革新力なのです。伴走支援は、中小企業の自己革新力を育む関わり方であると言えます。