■はじめに:「集中」の神話を打ち破る
難しさやストレスのない、楽しい単純作業に集中しているときに、人間は最大の幸福感を得る。
オンラインでも現実の世界でも、休憩を取りながら簡単な事をして心をさまよわせていると、希少な認知リソースが補充され、リソースが増えれば集中力も生産性も上がる
不眠不休で生産性を追求できる技術を手に入れた今、もっと効率よく時間を使うべきだという声をよく耳にする。しかし私は、自分の人生経験と研究を通じて別の結論に達した。そうではなくて、私たちはむしろ「最大の幸福を実現する方法」を考えるべきなのだ。生産性の最大化のために生活を変えるという議論を、精神のバランスがとれるように生活を変えるという方向に切り替えていかなければならない。
デバイスを使う時の目標は、精神的なリソースの貯えを維持し、最終的に今より幸福感を高める事であるべきだ。そうすれば、長期的な仕事の生産性も高まるだろう。
■第1章:限りある認知リソース
50年にわたる研究の成果として広く受け入れられた心理学の考え方がある。私たちの精神には集中や認知リソースの汎用的なたくわえがあるというものだ。
複数の異なるタスクの間で集中を切り替えていると、1つのタスクの内的表象を次のタスクの内的表象へと再設定しなければならない。心理学者スティーブン・もんセルのいう「心のギアチェンジ」だ。こうした表象は「スキーマ」と呼ばれる。簡単に言えば、ある活動の行動パターンを記した台本のようなものだ。私たちは心の中のスキーマを用いて周りの世界を解釈し、坑道を計画している。
私たちはこの動的集中をうまく使いこなせておらず、このままでは様々なストレスや疲れ、成績低下が生じ、燃え尽き症候群にもなりかねない。なぜなら、素早い集中の切り替えが認知リソースを消費し、枯渇させてしまうからだ。
■第2章:集中をめぐる争い
集中に関する神経作用(集中を管理する脳内のメカニズム)の研究で、行動を抑える認知的制御を長時間続けると、徐々に衝動的な選択をしやすくなることが分かった
どんな行動においても心の中の目標(例えば報告書を描く)に従おうとするが、ソーシャルメディアの通知などの外部からの影響や、場合によってはクロスワードパズルを完成させたいというような内なる衝動に屈してしまう。このように気が散るものに意識が向かってしまうのは、おそらく人間のシンカの結果であり、環境内に潜む危険に柔軟に対応するためなのだ。
ある行動を選ぶときに、その行動の勝ちを見誤るのが「フレーミングエラー」だ。例えば、新聞の日曜版のクロスワードパズルを解けばいい息抜きになると思ってやってみても、達成できずにストレスを感じるだけかもしれない。
「フレーミングエラー」は、ある行動にかかる時間を読み間違えた時にも生じる。ほとんどの人は時間の見積もりが苦手だ。
「週間の鎖は感じる時には弱いが、断ち切るときには途方もなく強い」
ソーシャルメディアは息抜きや他社とのつながり、仕事や私生活の目標の支援に使うのが望ましい。しかし、ここでもふれーみぐエラーが生じやすい。例えば、私たちはFacebookで親密な人間関係を築くことができると過大評価しているが、実際、Facebookはそのようには設計されていない。一方、そこに費やす時間については過小評価しているかもしれない。私たちを誘い込んでサイトにとどまらせる社会的な力を見くびっているのだ。
■第3章:集中のタイプを理解する
デバイスの使用中に認知リソースのバランスを取るにはどうすればいいだろうか。それには、生まれ持ったリズムとのつながりを活用し、認知リソースの貯えを維持すると良い。1日を通して、意識的に没入から他の集中状態に切り替えるのだ。時間管理術の「ポモドーロ・テクニック」もこの体内リズムの考え方を取り入れて、1日を25分の仕事と5分の休憩で区切っている。
私たちは生産的で創造的な没入こそ理想の集中状態と考えがちだが、慣れや退屈も私たちの集中力にとっては重要で、健康や幸福に欠かせない大切な役割を果たしているのだ。
単純で浅い集中、場合によっては上の空の状態も有意義であるという教えは、従来の考え方に反するが、たまには刺激から完全に離れてぼんやりしたり退屈したりすることも必要だ。
■第4章:マルチタスクの真実
■第5章:絶え間ない中断がもたらすもの
未完のタスクは私たちの至高の中で渦巻く。そのストレスを減らすには、未完のタスクを記憶の外に出してしまうことだ。つまり、中断したタスクに関する情報を何らかの形で心の外に記録するのだ。重要な未完のタスクについては、優先度や完成度、次の作業手順などをメモに書き残したり、ボイスメモに録音したりする。こうしたことを、中断が入った直後化、長めの休憩を取ったとき、あるいは大金前などにぜひやってみて欲しい。まずは重要なタスクで試してみても良い。何かに書き留めれば、望ましくない緊張を外部に移し替えられる。
■第6章:インターネットの普及と集中力の低下
心がさまよっている状態を示す「マインドワンダリング」は、集中が外部環境から切り離されたときに生じる。心がさまよう時、私たちは手元のタスクとは関係のないことを考える。
インターネットには自分の心のネットワークに踏み込むきっかけが無数にある。ある刺激を見たり聞いたりすることによって別の刺激に反応しやすくなることを「プライミング」と呼ぶが、認知的なプライミングでは、ある文脈や単語に触れると、記憶の中でそれと意味的なつながりがあったり、同類と考えられる概念が呼び起こされる
■第7章:AIとアルゴリズムの影響
■第8章:デジタルな交流の世界
■第9章:パーソナリティは自制にどう影響するか
何故私たちは、睡眠負債が増えるとfacebookを見たくなるのだろうか。その理由の1つは、一晩限りの睡眠負債はそれほど影響しないが、質の良い睡眠をとれない状況が長く続いて睡眠負債が蓄積すると、日々の集中リソースが失われるからだ。リソースが減ると自制能力が衰え、Facebookなどのソーシャルメディアにアクセスしたくなる衝動を抑えられなくなる。
■第10章:デバイスは幸福感を下げるのか
著作家のニコルソン。ベイカーは、彼のいう「明るい時間の仕事」をスケジュールに組み込んでいる。これはメモのタイピングやインタビューの文字お越しなど、認知的な欲求の高くない仕事の事だ。
単純な活動には緊張を解くというプラスの面もあるのだ。
■第11章:メディアによる集中の条件付け
テレビの視聴時間が長い子供ほど、青年期に注意散漫などの問題を抱えやすいことが分かった。素早い画面の切り替えにさらされると、長く集中して何かを見続けることが困難になるのだ。
■第12章:自由意志、主体性、集中
私たちは、集中に影響を与える環境や状況を認識し、自分の欲望のコントロールはできないまでも、坑道をコントロールすることはできる。
■第13章:「主体性」の力で生活リズムを整える
自分の集中力をコントロールできるようになるためには、まず、バンデューラの主体性の第一の特徴である「意図性」を学ぶことから始めよう。坑道のメタ認識の仕方を学ぶことで、集中と行動を意識のレベルに引き上げ、より糸的に選択する強力なテクニックを習得できる。
メタ認識とは、自分が経験していることをリアルタイムで知ることだ。例えば、仕事中に画面を切り替えてニューヨーク・タイムズの記事を読むという選択を意識する、というように、自分の体験をオンタイムで知る事である。逆に、TikTokを見ているうちに時間がたつのを忘れたり、インターネットから抜け出せなくなったりするのは、自分の行動をメタ認識できていない証拠だ。
メタ認識を用いると、自分の集中を受動的なものから能動的なものに切り替えることができる。
マインドフルネス。
メタ認識気を習得することは、筋肉を鍛えるようなものだ。最初は立ち止まって自問する事を忘れても、練習を重ねるほど自然にできるようになる。例えば、自分への簡単な質問を書き出して、不戦に書いて見えるところに貼っておくことから始めても良い。行動のメタ認識がうまくなれば、それだけ意識的な行動がとれるようになる。
自分の集中のピーク時間を知り、集中を必要とする仕事に、その時間を当てる。
ピーク時間にはメールを開かない事。貴重な認知リソースはもっと重要な仕事に使った方が良い。
クロノタイプ
■第14章:デジタル時代の集中力を育む
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