ソウルというブラックミュージックの1ジャンルについて、私自身はそこまで詳しくないのだが、その中で最も敬愛するアーティストの一人がカーティス・メイフィールドである。
極めてソフトなその歌声と美しいメロディー、ストリングスをふんだんに使ったアレンジなど、個人的な好みとして昔から彼の作品を愛聴している。
...続きを読む本書は彼の出身地であるシカゴで生まれたカーティスらのソウルミュージックの歴史を描いた概説書である。
シカゴ・ソウルとして本書で扱われるアーティストは本書タイトル”Move on Up”という名曲を残したカーティス・メイフィールドと彼がソロ以前に活動していたボーカルグループ、The Impressions、シル・ジョンソン、ダニー・ハサウェイなどである。
本書ではアメリカ南部から北部への黒人の大移動によって都市動態が大きく変化したシカゴという都市の政治・社会・経済などの歴史を追いつつ、丹念に各時代でどのようなアーティストが生まれたのかを追っていく。特に新設されたレコード会社・レーベル、レコーディング・スタジオや優秀なスタジオミュージシャン、ラジオ局との関わりなど、ある種のインフラとして優れた作品が生み出されていくシステムに関する記述は非常に丁寧であり、汎用性あるメカニズムとしてのシステムの様相を知ることができたのは面白かった。