『侍女の物語』と同じく、原本から入るのはむずかしそうだと思っていた作品がグラフィック版で出ていたので手に取ってみた。作家小川洋子さんがこの日記をとても高く評価?してらっしゃるのもあって読んでみた。
ナチスに苦しめられてつらい日々を送り死んでいった女の子の日記と思っていたけれど、読んでみると全く印象
...続きを読むが違う。彼女が望んでいたとおり、あの戦争を生き延びて作家になっていたらどれだけ素晴らしい作品を世に出してくれたのだろう。そう思ってしまうほど、ありのままを打ち明けるということへの貪欲さのようなものを感じた。それはきっと物書きをする上で最も重要な才能の一つだろう。成長とともに感じる当然の痛み、苦しみ、甘美さ。そしてそれを戦争によって不当に阻害されてもまっすぐ自分を通そうとする強さ。内面を見つめながら世界を見つめた14歳の少女。
この作品がただの戦争記録として以上に評価される理由がわかった気がした。
彼女の、一人の人間としての葛藤がどれだけ魅力的か。どれだけ後世の人々の希望になるか。そして改めて、こんな聡明な少女の未来が戦争で奪われたことを忘れてはいけない。
また、アンネの心の、色とりどりの機微が、たくさんの絵柄によって補助的に説明されているのはグラフィック版ならではの良さだと思う。最後に編者が述べていた通り、全てのページにアンネを宿そうという気概が感じられる。
日記が終わる最後の記録より「彼女(本当のアンネ)が主役を演じるのは、私とふたりきりのときだけです」。