皆さんはどうもマーケティングを難しく考え過ぎだと私は思っています。難しく難しく考えようとする。そうではなくて、消費者目線で見てみればいいのです。そうすれば、売れる理由も売れない理由も見えてきます。この商品は本当に消費者に欲しいと思ってもらえる物なのか?機能は優れているのか?
本当は素晴らしい商品でも、消費者の目に魅力的に映らないと、「ああ、これは私の買うものではない」ということになってしまいます。
あるいは、価格が高すぎる、配荷率が低い、置かれている場所が間違っている。これでは売れるはずがありません。そういう時は、ポジショニングを変更したり、価格を調整したり、配荷を修正したりしていけばいい。
これは、マーケティングの「3A」と呼ばれています。「Acceptability(受容性/消費者からの受け入れやすさ)」「Availability(店頭にどのように置かれているかという配荷)」
「Affordability(価格/買い物しやすさ)」の3点です。
この3点を徹底していく。とにかく徹底していくのです。これが、基本の一つです。
マーケティングの戦略は、徹底したデータをベースにして作られていきます。「ベースリサーチ」と呼ばれる調査には、かなりの予算がかけられていました。調査の通称は「Habits&Practice」。消費者の習慣と行動です。
医薬品はもちろんのこと、ランドリーなら洗濯まわり、ホームケアなら食器まわり、ヘアケアならシャンプー、またベビーケアなど、それぞれ大変な規模のリサーチを定期的に行っていくのです。それを研究開発本部や消費者のインサイト(隠れた心理)を探るチームが分析し、それぞれのブランドにとってヒントになる情報を上げてきてくれます。
この調査データを読むのを私は楽しみにしていました。前回に比べて消費者の習慣や行動はどう変化しているのか。なぜ変化したのか。ブランドの価値はどう変わったか。自社ブランドは競合に比べて、どうなったか。認知率、好意度など、さまざまなデータが出てくるのです。
どうしてそうなっているのかを分析し、どんな活動が改善のために効果をもたらすのかを考えていく。それこそメディアで広告を打ったら、マーケットシェアがどのくらい変化したか、というようなデータも出てくる。
▫️マーケティングの型「WHO」「WHAT」「HOW」
P&Gのマーケティングには、「型」があります。シンプルに言えば、「WHO」「WHAT」「HOW」です。WHOはタゲット、WHATは何を、HOWはどのように。こーの3つを、マーケティング的に突き詰めていくのです。
どのブランドであっても、まずはWHOから始まります。ターゲットには意思があり、課題があって、インサイトがある。
だから、徹底的にWHOについて考えることが必要になるのです。
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ですから、とにかくWHOを徹底分析する。さまざまなタイプを想定し、家族構成もイメージし、どんな状況にいるのか、いくつもペルソナ(仮想ユーザー像)を作る。
あるタイプの人に対しては、この商品はどうか。別のタイプの人には、ファンクションとエモーション、両面から商品はどう見えるか。WHOの理解があり、インサイトがあり、その上にイシュー=課題がある。イシューに対するテクニカルな解決策は何なのか、という「WHAT」に向かう。それをどう届けるのか、という「HOW」に向かう。
マーケティングというのは、大きな意味での定義は、「継続的にモノが売れる仕組みづくり」です。継続的に売れるということは、利益が取れるということ。かつ競合が来ても負けない差別化があること。そのためには、戦略的な強みは、戦略的な強み(これをエッジと言います)を設定しなければなりません。
マーケティングは、こうしたすべての活動のことを言うのです。ただCMを作ればいいというものではありません。
買ってもらえない理由ははっきりしていましたから、すぐに撤収しました。このときわかったのは、消費者の習慣を変えるというのは、とても難しいということです。
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消費者の習慣を変えられるくらいのエッジが立っていないと、一見、便利に見えても、そう簡単にはいかない、ということです。それを痛感することになりました。
消費者のアクションは「Stopping」「Holding」「Closing」の3ステップで進みます。まずはパッと見つける。それから手を伸ばす。そして購入する。
これがおかしな形で伝わると、「和佐は勝手なことをして、シェアが上がっていない理由 を研究開発のせいにしている」などということになりかねません。
だから、データを社内で出すときにも、一緒に何かの資料を作るときにも、研究開発のト ップに真正面から会いに行きました。そして、研究開発のトップからもチームに指摘内容を伝えてもらいました。忖度は悪であると言うのは簡単です。しかし、しがらみはある。だから、細かくケアもしないといけないのです。
リサーチで厳しい結果が出た他のチームに対しても、対応は気をつけました。彼らがダメ だ、と言いに行くようなものだったからです。社内で発表するときには、事前に知らせまし た。どういう意味なのかを私から説明しました。ものすごくデリケートに対応しました。
ブランドを考えるとき「戦略ハウス」というものがあります。ブランドビジョンが屋根と なり、土台はブランドアンビション。その中に、マーケット環境、ブランド情報、ビーブル (消費者インサイト) などが並びます。
私はまず、この「戦略ハウス」の見直しから始めました。「ジョージア」とは、そもそも 何のためにあるブランドなのか。
再定義したブランドのビジョンは「すべての努力は報われるべきだ」というものでした。 会社員も、建設作業員も、運転手も、主婦も、みんな努力している。そんな努力の最中、ち よっと疲れたときにホッとするために「ジョージア」はある。
1本の缶コーヒーが、人々をホッとさせてくれたり、元気づけてくれたりする。それが「 ジョージア」だということです。
では、これを消費者への言葉にいかに変えていくか。キャンペーンのアイデアを広告代理 店にお願いしたところ、素晴らしいキャッチコピーが上がってきました。
「世界は誰かの仕事でできている」
後に広告賞を総ナメにし、このコピーを書いた方は書籍も出されています。私たちのブリ ーフィングに対し、素晴らしいコピーを出してもらえたのでした。
4 自動化
◾️イノベーションの12の便益
1 現行問題点の解決
2 既存商品の性能の進化
3 新しい便益の提供
4 自動化
5 簡単化
6 効率化
7 より良いデザイン
8 速い
9 小さい
10 軽い
11 安全
12 ECOの便益(省エネ・ごみを出さない・リサイクル)
13 より良い五感の刺激 (視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)
14 ファンタジー
15 ラクチン
16 快適
17 保存・長持ち
18 自然に近い
19 便利
20 おトク(安い)
21 選択肢が多い
22 カスタマイズ
23 新しい体験
24 本物に近い
25 健康に良い
26 老化を防ぐ
27 美しくなれる
28 異性にもてる
29 暇つぶし
30 連帯感
31 向上心の刺激
32 競争心の茂樹
33 失敗を未然に防ぐ
34 家族的なつながり
35 やすらぎ
36 興奮・高揚
37 郷愁
38 共感・自己顕示欲
39 遊び心
40 楽しい
41 探せる
42 遠隔操作
◾️ビジネスを必ず成功に導いてくれる8つの信念
1 パッション・情熱とたゆまぬ努力
2 チームのパワーを信じる
3 基本の徹底と戦略的集中
4 誰もが考えないことを考える力
5 ノー・フォロワー、ノー・リーダー
「Envison」「Engage」「Enable」「Energize」「Excute」ビジョンを描く、巻き込む、やる気を出させる、パフォーマンスを向上させる、成果につなげる
6 真実の瞬間
7 感情的な部分を大事にする
8 誰かが成功するために光を照らす
◾️2つの考え方
「凡事徹底こそが非凡を生む」
「悲観は気分。楽観は意志」