河林満の作品一覧

「河林満」の「渇水」ほか、ユーザーレビューをお届けします!

作品一覧

  • 渇水
    3.7
    1巻748円 (税込)
    市役所の水道部に勤め、水道を止める「停水執行」を担当する岩切は、3年間支払いが滞っている小出秀作の家で、秀作の娘・恵子と久美子姉妹に出会う。小出の妻は不在、秀作も長いあいだ家に戻っていなかった。姉妹との交流を重ねていく岩切だったが、停水執行の期限は刻々と迫っていた――。芥川賞候補にもなった表題作「渇水」を含めた3編を収録。厳しい日常を懸命に生きる人々を濃密に描き出す、絶望の底に希望の光がきらめく作品集。

ユーザーレビュー

  • 渇水

    Posted by ブクログ

    映画が印象的だったので原作も読んでみた。
    原作は救いがなく、映画以上に現実的だ。主人公は職責を全うしているだけなのに、倫理的に苦しむことになる。責任を取るべき上司は倫理的な問題として主人公に精神的な負荷を押し付けているように見える。
    しんどい。
    しかし読むことで救われた気分になる自分も存在する。それは救いのない現実で、無力な自分と対峙せざるえない男がもがいている姿に、自分だけじゃないのだと思えるからだろう。
    悲惨な物語は孤独を癒す効能もあるのだ。

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    2025年09月05日
  • 渇水

    Posted by ブクログ

    芥川賞候補作「渇水」を含む3編を収録した短編集。表題作「渇水」は、読後に何とも言えない余韻が残る作品でした。主人公が勤める水道局での「給水停止」業務を通じて、現代の孤独や貧困、社会の冷たさのようなものがじわりと伝わってきます。著者の河林満さん自身が、かつて立川市の水道局で働いていたとのことで、現場の描写にリアリティがあるのも納得です。巻末の解説によると、本作はマルグリット・デュラスの『愛と死、そして生活』に収録されている「水道を止めた男」からインスピレーションを得ているそうです。私はデュラスのその作品を未読なのですが、解説を見る限り内容や構成がかなり似ているような・・・。オマージュ的な位置づけ

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    2025年07月28日
  • 渇水

    Posted by ブクログ

    『渇水』は1990年に執筆された河林満さんの小説。日照り続きで、節水制限が行われる夏に、様々な水道料金滞納者と、停水執行を行う水道局員のやり取りが描かれる。その中で育児放棄された姉妹が登場し、胸が痛む…小

    電気、ガス、水道、電話…ライフラインを担う公共料金でも一番生命に直結する水。
    これに携わる仕事は本当に想像以上に厳しいのだろう。
    原作者の河林さんは既に故人であるが、
    元々水道局にお勤めだったとのこと。今回の映画化でこの小説が再注目され、水道局員の方々の日々の苦労にもきっと理解が深まると思う。

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    2025年03月04日
  • 渇水

    Posted by ブクログ

    この著者は初めてですが、何かの書評で同書が取り上げられていて、興味を持ち、読み始めました。
    主人公は市の水道部で水道料金未納者の家の水を停水する作業を担当する職員。
    その主人公が停水した家の小さな女の子二人が自殺と見られる列車事故で下の子が即死、上の子が重体。
    主人公は「水なんかただでいい」と呟く人物。継母の環境で育ち、登校拒否の不良だった主人公が転職の末、今の職に就き、アルバイトに来ていた妻と結婚、家を持つのを厭がる主人公、ちょっと用足しにと子供を連れ、実家に行き、2週間あまり帰って来ない妻。
    物語りが淡々と描かれ、そこから醸し出される生活感や読者に想像させる登場人物の心情など個人的には上手

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    2024年04月12日
  • 渇水

    Posted by ブクログ

    滞納、貧困、ネグレクト
    少し前の時代背景なのに現代に通ずるものがある
    ひたむきにそして気丈に生きようとする少女の
    ぴんと伸ばした背筋に秘められた刹那が浮かぶ

    0
    2023年12月01日

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